患者さんへのご挨拶
石島 旨章
順天堂大学医学部順天堂医院整形外科・スポーツ診療科 科長
順天堂大学医学部整形外科学講座 担当教授(主任教授)
順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学 担当教授(主任教授)
立つ・歩く・走る・字を書く・ものを持つ。人々は皆、多様な動作を繰り返しながら生きています。こうした全ての動作は、骨や軟骨、靭帯、腱、神経などの「運動器」が、複合的に連動することで成り立っています。
しかしながら、この運動器に怪我や病気が発生すると、思いのままに身体を動かすことが困難になり、身体的にも精神的にも痛みが伴ってしまいます。順天堂医院整形外科・スポーツ診療科には、小児、青年、壮年、老年期に至るまで全ての年代における、運動器の障害や疾患に対する実績豊富な専門家が揃っています。当科の医師は、現存するいかなる治療法や検査法にも、メリット、デメリット、そして限界があることを十分に理解した上で、患者さんの声に耳を傾け、相談を重ねながら最善の選択肢を提示し治療にあたります。また大学病院の使命は、研究機関としてこうした現存の治療および検査法の限界を克服することと心得ています。患者さんにもご協力をいただきながら、おひとりおひとりへのより良い治療の実現を見据え、病態の解明に努め、症状の早期発見と早期治療、安全な治療法・予防法の開発を進めています。そして、医学の進歩のため国内外へ発信し続けています。
私たち順天堂医院整形外科・スポーツ診療科は医学・医療のさらなる発展にご協力を賜りながら、今できる最善の治療を提供するため努力を続けてまいります。日々の移動機能や生活動作に関する障害・疾患でお悩みの方は、お気軽に順天堂医院をご受診ください。皆さまの生活が痛みや不具合なく、不安のない豊かで快適なものとなるよう力を尽くして参ります。どうぞよろしくお願いいたします。
2020年10月
診療科概要
沿革
順天堂大学整形外科は戦前の順天堂医院時代に、1936(昭和11)年に鈴木諒爾が九州大学より赴任し診療が始まりました。
1943(昭和18)年に佐藤達次郎理事長が医学専門学校を興した際、整形外科学の講義は非常勤嘱託講師として警察病院より石原 佑、東京大学より後藤 威を招いて行っていました。
1950(昭和25)年9月4日、岩手医科大学整形外科教授の羽根田貞郎が初代教授として着任し、順天堂医科大学の整形外科学教室が誕生しました。
2020(令和2)年より石島旨章が7代教授に就任致しました。
整形外科の紹介
整形外科は運動器の疾患を扱う診療科です。身体の芯になる骨・関節などの骨格系とそれを取り囲む筋肉やそれらを支配する神経系からなる「運動器」の機能的改善を重視して治療する科で、背骨と骨盤というからだの土台骨と、四肢を主な治療対象にしています。背骨と脊髄を扱う「脊椎外科」、上肢を扱う「手の外科」と「肩関節外科」、下肢の「股関節外科」、「膝関節外科」と「足の外科」、スポーツによるけがや障害を扱う「スポーツ医学」、「リウマチ整形外科」、腫瘍(できもの)を扱う「骨・軟部腫瘍外科」、骨粗鬆症などを扱う「骨代謝外来」と多数の専門分野があります。
スポーツ傷害や交通外傷、労働災害などに代表される打撲、捻挫、骨折などの外傷学は勿論のこと、変形性変化を伴う加齢疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、痛風、運動器の腫瘍、運動器の先天異常など先天性疾患など、新生児時から老年まで幅広い患者層を扱います。
日本整形外科学会ホームページより抜粋
当科の特色
- あらゆる疾患に対して、まずは運動療法、薬物療法などの保存的治療の可能性を見定め、人間が本来持つ自然治癒力を高める治療法選択を図ります。
- 上記の治療法が奏功しない場合は、出来るだけ内視鏡手術や小切開で患者さんに負担の少ない最新の最小侵襲手術を目指します。
- 手術療法は、何よりも「安全」を原則としています。術前・術後のカンファレンスを毎週行い、安全な手技の確認に努めています。また医師は機会あるごとに新技術、安全技術の講習会等に参加し、技術向上に努めています。
- 手術後は、出来るだけ早期に理学療法を開始し、入院期間を最小にするように努めます。また退院後も中長期的に継続的な理学療法が必要になる場合には関連病院をはじめとした通院での理学療法が可能な病院・クリニックとの医療連係を行い、退院後も病状をフォローアップして参ります。
- 近年増加の著しい高齢者の関節・背骨の疾患に対しては、患者さんの全身状態に配慮し、保存的治療と外科的治療のバランスのとれた最適な治療の選択に努めます。
- 膝、肩、腰、足首等のスポーツのけがに対しては、スポーツ専門医が最新、最良の治療を選択し、早期のスポーツ復帰を目指します。
- 医師は、それぞれ専門分野を有し経験豊富な治療の選択に努めます。
- セカンドオピニオンを求められる方は大歓迎です。当科の方針をご説明いたします。 また、当科から他の病院にセカンドオピニオンを求められる方にはあらゆる資料をお貸しいたします。
関連病院のご紹介
当診療科の関連病院を紹介いたします。
外来診療
外来診療は、教授、准教授、講師、助教、助手等の専門医を中心に構成されています。午前中の外来は、初診および再診の患者さんを対象とする一般外来です。午後の診療は、初診患者さんを対象とする一般外来と下記の専門外来からなっています。
全ての専門外来は整形外科学会認定の専門医およびそれぞれの分野に明るいものが担当しております。専門外来は主に午後診察となっており、すべて予約制となっています(水曜午前中の骨粗鬆症外来を除く)。
かかりつけの先生よりすでに診断がついており、手術等の相談のためご紹介いただく場合には、地域医療連係室を通して直接専門外来にご案内いただくことも可能です。診察を円滑に行うためにも紹介状(診療情報提供書)をご持参いただきますようご協力をお願いいたします。詳細は、下記をご覧ください。
入院診療
入院決定の判断は、各専門診を中心にして行っており、入院後はカンファレンスにおいて教授ならびに各専門診の責任者と病棟担当医およびリハビリスタッフを交えた十分なディスカッションに基づき、診療方針を最終決定して治療にあたっております。
当科の年間入院患者数は、1000名を超えます。入院診療は、グループ体制で行っており、担当医はいずれかのグループに属しています。病棟医長のもと、グループそれぞれにグループ長、サブグループ長を配置し、担当医とともにグループでの病棟回診を必要に応じて行っております。
当科の入院対象となる患者さんは、主に手術の対象となる方々であり、安全で根拠に基づく良質かつ高度な医療を提供するよう努めております。当科の特徴として各種の変形性関節疾患や脊椎疾患で待機手術が可能な方には、外来での手術待機中に自己血貯血を積極的に行い、自分の血液で安全に手術が行えるよう配慮している点があげられます。
また、必要に応じてBiodexによる術前・術後の筋力測定を行っており、術後のリハビリに役立てています。このように術前・術後のリハビリテーションも理学療法士の指導のもとに積極的に行っており、早期退院、早期社会復帰を目標に成果をあげております。
当科病床は医療法に基づき主に急性期病床に区分されていることから、病状の安定をみても自宅退院が種々の理由により困難な場合には、当科関連病院・当院医療福祉相談室などと連携し療養生活を支援するよう配慮しております。
PRP外来を受診する患者さん
PRP外来(PRP治療、ASC治療(幹細胞治療))の予約
PRP外来の初診予約をご希望の方は、以下の連絡先までお電話いただき、PRP外来の初診予約を取りたい旨をお伝えください。
PRP外来初診予約窓口 TEL:
03-5802-1932(直通)
受付時間 9:00~12:00、13:00~16:00(平日のみ)
※お電話の際はお掛け間違えが無いようご注意ください。
※毎月1日(土日祝の場合は翌平日)に、4ヶ月先の予約枠を開放します。
例)2021年12月1日 → 2022年4月の予約枠を開放
※予約受付は定員になり次第終了します。このため電話回線が混雑し、お電話が繋がりにくい場合もございます。ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
当院で施行しておりますPRP及びASC療法は厚生労働省に第2種再生医療等治療提供計画を届出し承認されております(治療提供計画番号:PRP(PB3150023)ASC(PB3200108))。
PRPやASC療法では、ヒアルロン酸などの保険診療の注射と同様に注射部位の疼痛や感染のリスクがありますが、当院ではこれまで20,000以上のPRP関節内投与を行っておりますがまだ感染の発生はありません。また、ASC療法では皮下脂肪の採取後の皮下血腫の発生リスクがあります。
再生医療等を受けようとする場合は、医師からの十分な説明を受け、理解・納得した上で検討してください。
整形外科における再生医療とは
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はじめに(再生≠除痛?)
当院では現在、様々な運動器再生医療を行っております。ここでは、再生医療という治療の位置付けや目的、様々な治療の違いについてお知らせいたします。
再生医療(regenerative medicine)とは、その名の通り傷んでしまった組織を再生することを目的とした医療です。日本における再生医療は、皮膚科(皮膚潰瘍や美容)や歯科(口腔外科)領域から発展し、最近になって運動器(関節・骨・筋・靭帯など)領域でも盛んに使用されるようになってきました。
しかし、皆さんに誤解されがちな点が幾つかありますので以下にご説明させて頂きます。
まず、運動器領域の再生医療が他領域と大きく異なる点は、治療の対象となる疾患が「痛みを伴う疾患が多い」という点であります。特に関節疾患は痛みを主訴に病院を来院する方がほとんどです。しかし、皆さんあまりご存じない方が多いと思いますが、驚くべきことに関節軟骨は「痛みを感じない組織」なのです。言い換えれば、「関節軟骨を再生しても痛みが取れない可能性がある」ということであり、その逆もまた然りなのです(再生しなくても痛みはとれる可能性がある)。
治療の効果について
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患者さんからよく「わたしのPRP療法、効果はどうでしたか?」と聞かれることがあります。しかし、もしも担当医から「痛みは取れていませんが軟骨は増えましたので効いています」と言われたらどうでしょうか?「痛みが取れなければ効いているとは言えないだろう」とお思いになる方が多いのではないでしょうか。そのため、効果がどうだったかは患者さん自身が体感されていることが最も重要と我々は考えております。
つまり、私たちは患者さん自身が感じる痛みの軽減や機能の改善(歩行機能や日常生活動作)を治療効果の第一目標として治療しております。
| 評価内容 | 評価項目 |
第一目標 | 痛みの軽減と機能の改善 | 自己評価質問票 |
第二目標 | 組織の修復・再生・抗炎症 | 採血・レントゲン・MRIなど |
最終目標 | 健康寿命の延伸 |
関節のなかには軟骨以外にも骨(軟骨下骨)、半月板、靭帯、滑膜など様々な組織が存在します。加齢とともに進行する変形性関節症は、こうした組織が少しずつ変性していきます。
こうした組織の治療前後の変化は、MRIなどの画像診断によって評価が可能です。当院では、治療の客観的な評価として採血・レントゲン・MRIなどを行っておりますが、これらの変化は、患者さん自身の感じる評価(第一目標)の次の第二目標と考えております。この両者(第一と第二)を同時に叶えることが出来れば最高ですが、実はそのような患者さんは全体の3割程度です。しかし、治療開始から半年の時点で第一目標(痛みの緩和)を達成する方は全体の約6割程度存在します。治療前後の画像上の変化と症状の変化は必ずしも一致するとは限らず、変形性関節症の痛みの発生メカニズムの全様もまだ解明されておりません。
膝の周囲には筋肉や靭帯がありますし、関節の中にも滑膜・半月板・骨・軟骨・靭帯など様々な組織があり、関節の痛みの原因は一つではないことも多く、とても複雑です。
6割の方が効果を示し、4割の方では無効
この数字を高いと捉える方もいれば、低いと捉える方もおられます。我々は、手術以外の様々な方法(痛み止めの内服やヒアルロン酸の注射など)を行っても無効であった方の6割に効果を示せば、手術以外の治療の一つの選択肢として試してみる価値はある治療なのではないかと考えております。さらに、日本では保険診療として認められているヒアルロン酸注射と比較した研究でも、PRPや幹細胞治療は除痛効果や機能改善効果が高く、効果持続期間も長いとする論文が多く存在します。
高額な治療の方が効果的?
当院では様々な再生医療を行っております。5万円以内で施行できるPRP療法から、100万円以上の費用を要する培養幹細胞治療まで、費用には大きな開きがあります。現在のところ、これらの治療法の効果はどれも概ね「6割」の方に認められると報告されています。しかし、高額な費用の治療の方が効果もより高いかどうかは明らかにされておりません。では、なぜ費用に差があるのでしょうか?それは、治療に使用する加工物(細胞や液性成分)を精製する過程において、より高度の医療技術を必要とするものの方が必然的に費用が高くなるためであります。また、どの治療がその患者さんに最適なのかを治療前に判定できればよいのですが、残念ながらまだそれも研究段階で明らかになっておりません。当院で行っているすべての再生医療に対して効果を示す方もいれば、どれか一つにだけ効果を示す方、残念ながらどれにも効果を示さない方など、患者さんによってその効果の現れ方は様々です。血小板は多ければ多いほど効くのですか?
PRP療法を受ける患者さんに「私の血小板、ダメかしら」と言われることがあります。血小板は様々な成長因子を放出しますので、血小板が多ければ多いほど効果的なのではないかと考えられてきましたが、実はそうではないことが分かってきました。PRP中には沢山の成長因子(細胞を活性化させる)やサイトカイン(痛みや炎症を抑制する)が含まれております。
さらに、血小板とは別に、もともと血漿中に存在する沢山の蛋白や液性成分も含まれております。当院で治療した約800名の患者さんの血小板数と治療効果に関係があるか調べましたが、関係性は見出せませんでした。
そのため、血小板だけではなく様々な細胞から放出されてPRP中に存在している物質が、治療の効果に複雑に関係していると考え、現在も様々な研究を行っております。また、PRP中には血小板以外にも白血球が存在しますが、我々は白血球が少ないPRPを第一選択として使用しております。また、白血球を多く含み、白血球由来の炎症を抑える働きを持つ蛋白を高めたPRP(APS: autologous protein solution)も使用しております。
このAPS作成には特殊な機器を必要とするため、費用も高額(約30万円)ですが、第一選択のPRPが無効な方で、APSにて効果が出る方もおられます。APS治療では、従来のPRPと比べて注射後の痛みが4~5日間続く方が多くなっておりますが、これはAPS中に白血球が多く含まれるためと考えております。ご興味のある方は担当医にご相談ください。
治療の開始時期について
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患者さんにこんなことを言われます「わたし、これまでずっと我慢し続けて、こんなにひどくなっちゃったんです。もう手遅れですか?」。その問いかけは、当たっている部分もあればそうではない部分もあります。当院で治療した患者さんのデータをみると、やはり「変形が軽い方のが効果が得られやすい」のは事実です。軟骨がすり減り始めたばかりの方では、再生医療の治療効果は約7割の方に認められますが、軟骨がなくなってしまった方ではその効果は約5割に低下します。また、治療後に一時的に良くなっても、歩いて生活をしているうちに再び骨や軟骨が傷み、半年を過ぎたあたりから痛みがぶり返してくる方もおられます。
末期の変形の方でも約5割の方に効果がみられる。
これを高いととる方も低いととる方もおります。しかし、軟骨がなくなった方でも再生医療が効く方がいるのはなぜでしょうか?まだ確かな答えは出ていませんが、我々は次のように考えております。軟骨がすり減った後は骨と骨がぶつかり合い、軟骨ではなく骨がすり減る病気に代わってきています。PRPや幹細胞治療は、軟骨だけではなく骨を修復したり作ったりする効果があるため、そうした効果が痛みの軽減につながっているのではないかと考えています。先ほど軟骨には神経はないとお伝えしましたが、骨には神経が多く存在します。骨が削れている方では歩くたびに微細な骨折を起こしているような状態ですので痛みは強くなりますが、再生医療にはそうした痛みを緩和できる可能性があると考えております。また、再生医療には「組織再生」効果と「抗炎症」効果がありますが、重症の方では組織の再生は出来なくても炎症を和らげることで痛みが改善する可能性があります。
ただし、再生医療には限界もあります。自費診療のため費用負担も高いです。当院は骨切り術や人工関節置換術の手術実績も豊富ですので、再生医療を行っても効果を示さない方は、手術加療に関しても担当医にご相談ください。当院以外の病院での手術加療をご希望の方も、ご遠慮なくご相談ください。紹介状や検査した画像をご準備いたします。
幹細胞治療とPRP療法の違いについて
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当院で行っている治療には以下のものがあります
① PRP療法(白血球少ないものと多いもの)
② 非培養 脂肪由来細胞 治療
③ 培養 脂肪由来 間葉系幹細胞治療
関節軟骨を例に説明させて頂きます。関節軟骨を芝生に例えます。芝生が一部分剥げた状態を想像してください。皆さんならどうしますか?枯れないように水をあげる。栄養剤をまく。芝生の種をまく。芝生を張り替える。など様々な選択肢があると思います。①のPRP療法は、芝生に例えると水や栄養剤をまいているような治療にあたります。部分的に軟骨が剥がれてしまった部位や軟骨が薄くなった部位では、軟骨は弱ってきてはいますがまだ存在しています。そのため、PRP療法で栄養を与えてあげれば軟骨再生が期待できます。
しかし、芝生がすべて枯れてしまい砂地になってしまった場合(末期の変形)は、そこに水や栄養剤をまいても芝生はなかなか生えてきません。その場合は種を植えますよね。この種にあたるのが②、③に含まれる幹細胞です。②の非培養の脂肪由来細胞には血管周皮細胞が多く含まれますが幹細胞はそれほど多く含まれません。この血管周皮細胞は組織修復を促す効果があるとして欧米では注目されています。それに対して③の培養幹細胞治療では、幹細胞をかなり多く増やして使用します。沢山の種をまくということです。
それなら①と②や③を一緒に行った方が良いのではないかと思われる方もいるかもしれません。実はそうした治療は欧米ではすでに行われている治療なのですが、日本ではまだ一般的には行われておりません。ここで、脂肪由来細胞というものが出てきましたが、脂肪組織には軟骨になる可能性を秘めた幹細胞が多く含まれており、脂肪の採取も比較的難しくはないため、再生医療に使用する幹細胞のソースとしてよく使用されております。
このように、当院の再生医療で使用している治療法はそれぞれに特徴があります。治療費用の差は、治療に使用するPRPや幹細胞を作成するために必要となるコストの差です。治療効果は概ね6割とお伝えしましたが、それを高めるべく、PRP精製法の工夫(栄養剤の調合)、幹細胞の培養方法の改良(種の品種改良)などの研究を現在行っております。
また、芝生の張り替えに相当する治療は今のところ人工関節が主流ですが、世界では様々な技術が開発され、傷んだ軟骨の部分だけを入れ替えるような再生医療も研究されてきております。我々もそうした研究を行い、近い将来日本でも実施できるよう取り組んでいきたいと思っております。
PRP外来で行っている再生医療のまとめ
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※費用は概算であり治療の回数や片膝か両膝かで異なりますので担当医にお尋ねください。
※ここに挙げた投与回数や間隔はあくまで目安です。効果や患者さんの病態に応じて追加治療の回数や施行間隔を判断しております。
治療効果を上げるために取り組むべきことは?
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「サプリメント飲めばよいのでしょうか?」「マッサージを受けに行ってもよいですか?」これらも患者さんに聞かれることが多い質問です。そのような場合、我々はこのようにお答えしています。
「関節にかかる負担を減らす工夫をしてください。でも、行動を制限するわけではありません。」
では、どのようにして関節にかかる負担を減らすのか?膝関節を例にとってお話をすると、それは以下の3つがとても大事になってきます。
① 筋力の増強
② 動作の安定化
③ 減量(肥満気味のかた)
先にお示しした様々な再生医療を、高額な費用を支払って行ったとしても、関節が傷んでしまった原因を改善させなければ、関節は長持ちしません。年齢や性別、遺伝的な素因(病気へのかかりやすさ)は、ご自分の努力ではどうすることもできません。しかし、ここに挙げた3つのことは、改善することが不可能な要素ではありません。
長い間痛みに悩まされ続けてきたあなたの脚は、筋肉が落ち、動作も不安定になりがちです。また、痛みで歩けないことは肥満にもつながります。ストレスで過食になることもあるかもしれません。このような悪循環を断ち切るために、私たちは我々が提供できるあらゆるツールを動員して皆さんの「痛み」を少しでも緩和できるように努力します。しかし、たとえ痛みが緩和されても、脚を動かすのは患者さん自身です。筋肉をつけたり動作を安定化させてあげたりすることは、残念ながら私たちにはできません。
患者さん自身も、①~③のような努力をしていただくことにより、運動器再生医療の治療効果は相乗的に上がるといわれております。急に運動を始めると、逆に痛みが強くなってしまい運動療法をする意欲も落ちてしまいます。少しずつで構いませんので、担当医と相談しながらご自宅でできるホームエクササイズに取り組んでいってください。少しずつでも、継続することに意味があります。運動器の治療は、受け身の姿勢(お医者さんに治療してもらう)ではなく、能動的な姿勢(自分で治すんだ)という気持ちを患者さん自身が持つことも非常に大切です。
我々の行っている再生医療の最大の目標は「健康寿命の延伸」にあります。皆さまがフレイル、ロコモ、要介護などに至らず活気に満ちた生活をお過ごしになるお手伝いが出来ればと思います。皆さんの笑顔が私たちの何よりの励みです。皆さんが活気に満ちた日常生活を送ることのサポートが出来れば幸いです。
当治療に対する受診希望・ご相談は、下記までお電話ください。
PRP外来が初診の方:PRP外来初診予約窓口
TEL:
03-5802-1932
(直通)
受付時間:9:00~12:00、13:00~16:00 ※平日のみ)
PRP外来が再診の方:PRP外来
TEL:
03-3813-3111(代表)
受付時間:8:00~17:00 ※平日のみ)