消化管グループ

担当教授ご挨拶

消化管は、口から入った食べ物が便として排泄されるまでに通るすべての臓器:食道・胃・小腸・大腸を対象としています。2024年の統計では、死因の2位は大腸がん、4位は胃がんです。食道炎はわが国で一千万人以上いると推定されていますし、潰瘍性大腸炎の患者さんは年々増加し、30万人を超えました。われわれは、「今日=今」の患者さんへ、こうした疾患の正確な診断、早期発見と適切な治療を提供しています。また、順天堂の理念「不断前進」の精神で、「明日=未来」の患者さんがより良い医療を享受できるよう、先進的な研究をたゆまず行っています。
Dr永原章仁l
消化管グループ教授 
永原 章仁

一言メッセージ

患者さんへ

消化管グループは、順天堂の学是である「仁」(患者さんやご家族の思いや苦しみを理解する心・感性)をモットーに診療しています。お困りのことがあればお気軽にご相談ください。

ご紹介される先生方へ

内視鏡検査のご依頼、治療のご依頼、良性疾患・悪性疾患問わず、しっかり診断・治療を行います。ご紹介をお待ちしています。

入局を考えている熱意ある若人へ

われわれは順天堂三無主義、すなわち出身校、国籍、性別による差別なし、を実践しています。みな生き生きと診療、研究をしています。「百聞は一見にしかず」です。見学大歓迎です。

研究グループ紹介

上部消化管良性疾患グループ

当グループでは、アカラシアをはじめとする食道運動障害、逆流性食道炎などの胃食道逆流症、機能性消化管障害(機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、慢性便秘症)、ヘリコバクター・ピロリ感染症を中心に、幅広い消化管疾患の診療と研究に取り組んでいます。
食道運動障害や胃食道逆流症に対しては、36チャンネル高解像度内圧検査(ハイレゾリューションマノメトリー)や24時間多チャンネルインピーダンスpHモニタリング検査などの高度な生理機能検査を用いて病態を詳細に評価し、患者さん一人ひとりの状態に応じた適切な治療を提案しています。
また、機能性消化管障害の病態解明にも力を入れており、十二指腸における過敏性や粘膜の微細炎症の機序について、アトピー疾患研究センターと連携した基礎研究を推進しています。さらに、シネMRIを用いた腸管運動の可視化や、慢性便秘症と腹筋群との関連、口腔内環境と消化管疾患との関連に関する検討など、多角的なアプローチで研究を展開しています。
ヘリコバクター・ピロリ感染症については認定医が多数在籍しており、一次・二次除菌治療が不成功であった症例にも積極的に対応しています。
このように、診療と研究の双方から得られた知見を活かしながら、消化管疾患の理解を深めるとともに、患者さん一人ひとりの状態に応じた、寄り添う医療の提供に努めています。

小腸・炎症性腸疾患グループ

胃カメラや大腸内視鏡では到達が難しい小腸は、これまで診断・治療のいずれにおいても難易度の高い領域でした。当院では、小腸出血、小腸腫瘍、炎症性腸疾患に対して、カプセル内視鏡検査やバルーン内視鏡検査を積極的に行っております。特にカプセル内視鏡の実施件数は全国でもトップクラスを誇ります。さらに、バルーン内視鏡を用いたポリープ切除術や止血術など、診断から治療まで一貫して対応しています。
また、炎症性腸疾患診療においては、豊富な臨床経験をもとに、軽症例から難治例の潰瘍性大腸炎・クローン病まで、患者さん一人ひとりの病態に応じた集学的治療に取り組んでいます。生物学的製剤や分子標的治療薬を適切に組み合わせることで、より高い治療効果と長期予後の改善を目指しています。
研究面では、炎症性腸疾患の病態解明と新規治療法の開発を大きな柱とし、特に腸内細菌叢に着目した研究を推進しています。潰瘍性大腸炎に対する便移植療法(腸内細菌叢移植療法)の臨床研究を進め、その有効性・安全性の検証に加えて、治療前後の腸内細菌叢解析を通じて、疾患活動性や治療効果を予測する指標の確立を目指しており、個別化医療への応用を視野に入れています。これらの研究成果は国内外で高く評価されており、日常診療への還元を進めています。

上部内視鏡診断治療グループ

上部内視鏡診断治療グループ
拡大内視鏡を用いた緻密で正確な診断を基に、様々な基礎疾患のあるハイリスク症例でも安全に確実な内視鏡治療(咽頭がん、食道がん、胃がん、十二指腸腫瘍)を行っています。また、それらの技術を確実に会得できるような指導体制が整っており、拡大内視鏡診断やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を始めとした内視鏡診療のエキスパートの育成に力を入れています。特に、若手の先生への内視鏡手技トレーニングも充実しており、入局2年目よりESDなどの内視鏡治療のトレーニングを始めています。また、外科と合同で咽頭がんに対するESDや胃粘膜下腫瘍(GISTなど)・十二指腸腫瘍(GIST、NETなど)に対して腹腔鏡・内視鏡合同手術(Laparoscopic Endoscopic Cooperative Surgery, LECS)も行っています。
研究課題としては、拡大内視鏡診断、胃粘膜血流解析、ヘリコバクター・ピロリ未感染胃がんなど幅広い領域の研究を取り扱っており、国内外の学会発表を経て学術論文の報告も計画的に遂行しています。近年、ピロリ菌と関係のない胃がんの1つである胃底腺型胃癌が注目を集めています。この胃がんは2010年に当院から提唱、報告した稀な腫瘍で、2019年にはWHO分類(第5版)に初めて掲載されました。経験症例数は当院が非常に多く、この腫瘍に関する研究をリードし、世界に向けて胃底腺型胃癌の新しい情報を継続的に発信しています。また、消化器領域の様々な多施設共同研究に積極的に登録しており、消化器領域の研究の発展に寄与しています。実臨床以外の活動としては、当院の内視鏡知識・技術を学ぶために海外の様々な国から研修者、見学者が来るだけでなく、海外の医療機関や学会において講演や技術指導を行うなど、積極的に海外医療機関との国際連携を推進しています。

下部内視鏡診断治療グループ

当グループは、厚生労働省の班会議を通じて、日本における内視鏡診断および治療の発展に貢献してきました。これまで培ってきた経験と技術をもとに医療を提供しています。
大腸ポリープや大腸がんの診断においては、通常の内視鏡観察に加え、NBI(Narrow Band Imaging)、BLI(Blue Laser Imaging)、LCI(Linked Color Imaging)といった特殊な光を用いた観察を行っています。さらに、病変を詳しく拡大して観察する拡大内視鏡検査や、必要に応じて超音波内視鏡も併用し、病変の性質や深さを評価しています。これにより、良性か悪性か、どのような治療が適しているかを判断することが可能です。治療においては、病変の大きさや性質に応じて方法を選択しています。小さな病変に対しては、電気を使わず安全に切除できる低侵襲なCold Polypectomyを行っています。一方で、大きな病変に対しては、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を用いて、一括で確実に切除することが可能です。また、当グループでは、他院で切除が困難と判断された病変に対しても積極的に治療を行っています。さらに、消化管出血に対する内視鏡的止血処置や、大腸がんによる腸の狭窄に対する大腸ステント留置などにも対応しており、幅広い治療を提供しています。これらの治療実績は全国でもトップクラスであり、安全性と確実性の高い医療を実現しています。
また、研究面では、SSL(Sessile Serrated Lesion)と呼ばれる大腸鋸歯状病変に注目し、その内視鏡的特徴や遺伝子異常に関する研究を積極的に行ってきました。これまでに多くの研究成果を国内外へ発信しており、大腸がんの早期発見・予防につながる新しい知見の創出に取り組んでいます。
患者さんに安心して検査・治療を受けていただけるよう、私たちは常に新しい知見と技術を取り入れ、質の高い医療の提供に努めています。大腸に関する症状やご不安がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

化学療法グループ

主に進行がんに対する抗がん剤治療(化学療法)を行っています。近年の報道などにあるように現在のがん治療は遺伝子研究の進歩により大きく様変わりし、現在も多くの臨床試験や治験を通じて新規の治療開発が進んでいます。
そのため同じ癌の患者さんでもその性質、遺伝子の発現様式により、治療方法は様々です。当院では癌治療に関わる遺伝子検査を活用し、年齢や生活背景も考慮したうえで患者さん一人ひとりにあった治療を提供できるように心がけ治療にあたっています。
また、院内の他診療科と連携して、放射線治療、外科治療も組み合わせた治療方針の検討、遺伝子パネル検査(Guardant360 ®CDx、 FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル)などを活用した、新規治療の探索なども積極的に行っています。また、臨床試験や、治験においても、国内の他医療機関と連携し、提供できる体制を整えています。
とくに、当院の腸内細菌研究講座と国立がん研究センター中央病院で連携して行っている、「免疫チェックポイント阻害薬を導入する食道がん・胃がん患者に対する抗薬併用腸内細菌叢移植療法の安全性試験~BioRich 2試験~」はこれまでの癌に対する薬物療法に腸内細菌叢治療を組み合わせた新しい取り組みです。
これから治療をどのように進めるかお悩みの患者さんはもちろん、現在、治療中で今後の治療についてお困りであったり、悩まれている患者さんにおきましてもセカンドオピニオンなど随時受け付けておりますので相談いただければと思います。

診療実績

上部消化管・下部消化管

当科は、13名の日本消化器内視鏡学会認定指導医と、29名の同学会認定専門医が所属しており、2020年度は、上部消化管内視鏡検査の件数が7,427件、大腸内視鏡検査は4,255件と内視鏡施行件数は、毎年増加しております。
 
拡大内視鏡、特殊内視鏡(NBI)の導入により、病変の質的診断、がんの深達度診断を含めた診断正診率の著しい向上を得ることが出来、より安全確実な治療に寄与しています。
 
治療内視鏡は、上部消化管では食道、胃腫瘍の内視鏡切除件数は、切開・剥離法(ESD)という新しい内視鏡切除法を含め、2020年度は170件施行しております。また、大腸ESDは早い段階で高度先進医療を受け、2020年度は155件施行しております。
 
これまで発見しづらかった小腸病変に対し、小腸内視鏡(ダブルバルーン法)を用いたアプローチを開始しており、2020年度は73例行っております。また、便潜血反応陽性、黒色便、下血などの消化管出血のある患者さんで、従来の検査法である胃内視鏡検査や大腸内視鏡検査を行っても、出血の原因がわからない原因不明の消化管出血の場合に、小腸に出血源がないかを検査するためのカプセル内視鏡も導入し、2020年度は89例行っております。
 
消化管エックス線検査は、病変の位置や範囲の客観的描出の点で、今なお重要性を有しております。しかし、近年、内視鏡検査がスクリーニング検査としてその役割を担うようになり、消化管エックス線検査は、以前に比べ減少傾向にありますが、術前の精密検査、化学療法の効果判定、内視鏡非適応例などの診断、経過観察に重要な役割を果たしています。
主な検査・治療件数
検査・治療の種類 2024年度
 上部消化管内視鏡 9,368
 治療 261
 咽頭(ESD) 4
 食道(ESD) 74
 胃(EMR+ポリペクトミー) 18
 胃(ESD) 112
 十二指腸(EMR+ポリペクトミー) 48
 十二指腸(ESD) 5
 大腸内視 5,180
 EMR/ポリペクトミー 1,467
 ESD 270
 小腸内視鏡 189
 カプセル内視鏡 201
 パテンシーカプセル内視鏡 79
 止血術  161

臨床研究

広報