潰瘍性大腸炎に対する腸内細菌叢移植

お知らせ


2025年1月、順天堂大学大学院医学研究科腸内細菌療法リサーチセンターが発足しました。
本センターは、腸内細菌叢を標的とした新たな医療と創薬の確立を目指し、様々な研究施設や診療科と連携しながら、臨床と基礎研究を融合した先進的な研究拠点です。
Gut-Link Labホームページでは、腸内細菌叢移植療法に関する臨床研究や業績など、様々な情報を発信しております。是非ご覧ください。

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順天堂大学大学院医学研究科腸内細菌療法リサーチセンター
Innovative Microbiome Therapy Research Center (Gut-Link Lab)
消化器内科 教授 石川大 

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎は国内で最も患者数の多い指定難病で、その患者数は毎年増加傾向にあり、20万人以上と推定されています。近年では新規薬物療法の登場で治療効果は飛躍的に向上したものの、長期予後については不透明であり、また副作用についても課題となっています。また、腸内細菌叢の乱れが潰瘍性大腸炎の発症や増悪の要因の一つであることが明らかになってきています。

新しい「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」の提唱    

私たちはより効果的な腸内細菌叢の再構築と腸内細菌叢移植の効果増強を狙い、腸内細菌叢移植の前処置として3種類の抗菌薬を投与する「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」 (図1)を提唱し、2014年6月から臨床研究を開始しました。

抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法
図1:抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法の概念図

20歳以上の活動性のある潰瘍性大腸炎の患者さんを対象に行った本研究により、

①潰瘍性大腸炎に対する抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法の短期、長期間有効性。
②腸内細菌のバクテロイデスが治療効果と潰瘍性大腸炎の病勢に関連すること。
③患者と便ドナーの関係が1.兄弟姉妹であること、2.年齢差が10歳以内(同世代)であることが腸内細菌叢移植の長期治療効果を高めること。
④抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法による効果的な腸内細菌叢の再構築が、潰瘍性大腸炎の新たな治療法の確立につながる可能性。

が明らかになってきました。

本研究結果は、2016年11月に米国の学会誌「Inflammatory Bowel Disease」に掲載され(プレスリリース)、2020年5月に国際医学誌「Journal of Clinical Medicine」電子版で発表されました。(プレスリリース)

治療を希望される患者さんへ

2026年9月より、新規の腸内細菌叢移植臨床研究(活動期潰瘍性大腸炎患者を対象とした抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法(A-FMT療法)の多施設共同ランダム化比較試験)に参加する患者さんの募集を行っております。詳しくは外来を受診して頂き、お話しさせていただきます。

対象者

16歳以上の中等症の左側大腸炎型・全大腸炎型の潰瘍性大腸炎の方

主治医が「活動性あり」と認めた方で、下記条件①~③を全て満たしている方が対象となります。なお、今まで潰瘍性大腸炎に対する治療を行ったことがない方、病状が現在落ち着いている方、重症の方は本臨床研究にはご参加いただけません。

①主治医に当院での臨床研究参加の意思を伝えた上で、「診療情報提供書」の持参が可能である方
本臨床研究への参加中も基本的には主治医のもとで治療を継続していただき、主治医と当院とで連絡を取り合い、連携して進めていきます。

②定期的に受診が可能な方
初診、治療前検査(内視鏡検査あり)、腸内細菌叢移植3回(内視鏡下での投与1回、注腸での投与2回)、治療後検査(内視鏡検査あり)の5~6回受診していただくほか、適宜、便の提出をお願いしています。そのため外来受診が難しい方は、ご参加頂くことができません。なお、診察・治療等はすべて日帰りとなり、入院は必要ありません。

③抗菌薬を3ヶ月間服用していない方
腸内細菌叢移植の前処置として3種類の抗菌薬を内服するため、過去3ヶ月間抗菌薬を服用していない方を対象としています。

費用

本臨床研究のための薬剤や検査の費用は、順天堂大学の研究費負担となります。ただし、それ以外で使用する薬の費用や検査の費用は、通常の診療を受ける場合と同じように、健康保険を用いて自己負担分をお支払い頂くことになります。

交通費や遠方よりお越しで宿泊を要した場合の費用は自己負担となりますので、予めご了承ください。

実施医療機関

本臨床研究は、順天堂大学医学部附属順天堂医院のほか、以下の医療機関でも実施しております。
  • 北海道大学病院
  • 自治医科大学附属病院
  • 順天堂大学医学部附属練馬病院
  • 金沢大学附属病院
  • 滋賀医科大学医学部附属病院
  • 京都府立医科大学附属病院
  • 大阪大学医学部附属病院
  • 川崎医科大学附属病院
  • 九州大学病院

受診方法

受診時には「診療情報提供書」が必要となりますので、まずは主治医の先生とよくご相談ください。主治医の先生より参加の同意を得られましたら、以下Googleフォームにてお問い合わせください。受診の手順や診察可能な日程などを調整致します。
当院以外の医療機関で受診をご希望の場合は、医療機関をお知らせください。(ご希望の医療機関からご連絡するように調整いたします)
なお、患者さんからのお問い合わせはフォームでの対応となりますので、緊急の場合を除いて、お電話でのご連絡はご遠慮ください。

臨床研究お問合せフォーム

ご紹介いただく主治医の皆様へ

当科での腸内細菌叢移植の臨床研究が開始され約10年以上が経過し、症例数も増えてまいりました。現在までに得た治療効果や、腸内細菌叢と治療効果の関連などの知見については、国内外の学会、医学雑誌、論文にてご報告させていただいております。また、海外からの報告(Samuel. P et al.JAMA 2019) でも、潰瘍性大腸炎に対する腸内細菌叢移植のランダム化比較試験でFMTの治療効果が明らかになったことが報告され、更に注目が集まっています。未だ解明できていない領域の治療とは思いますが、腸内細菌叢移植については大きな可能性があるものと思っております。我々はステロイドやバイオ製剤の導入前の症例で治療効果が出ることを報告(2022年04月日本消化器病学会、2022年12月アメリカ炎症性腸疾患学会)しておりますので、薬剤治療に抵抗感がある、または薬剤アレルギーなどで薬物療法が使用しづらいIBD患者さんにはよい適応と思います。潰瘍性大腸炎に対する腸内細菌叢移植について、「キッセイ診療サポート:潰瘍性大腸炎に対する便移植の現状と展開」で動画がご覧になれます。
今回の臨床研究では以下の参加基準を設けておりますので、先生のご判断のもとに、診療情報提供書持参でご紹介頂ければ幸いです。外来日程については患者さんご自身からフォームに連絡して決めて頂ければと存じます。不明な点がございましたら、ご遠慮なくご連絡ください。

臨床研究お問合せフォーム

<患者さん参加基準>

中等症の左側・全大腸炎型の潰瘍性大腸炎患者のうち、
下記の選択基準を全て満たし、かつ除外基準のいずれにも該当しない方

【選択基準】
1)活動期の左側・全大腸炎型の潰瘍性大腸炎患者
2)5-ASA 製剤が効果不十分または不耐
3)適格性判断日前直近 3 日間における MMDAI 血便スコアの平均が 1~2 点かつすべての日において 1 点以上の患者
4)適格性判断日の 2 週間前から適格性判断日までの間に実施した大腸内視鏡検査での MMDAI 粘膜所見スコアが 2 点と研究責任(分担)医師が判断した患者
5)適格性判断日時点の MMDAI 総合スコア(排便回数、血便、粘膜所見および医師による全般評価 4 項目合計)が 5~9 点の患者
6)適格性判断日において、潰瘍性大腸炎の診断から 12 週以上経過している患者
7)同意取得時の年齢が 16 歳以上
8)外来・入院:外来通院中の患者のみ
9)同意能力を有しており、本人の自由意思により文書同意の取得が可能な患者。なお、患者の同意取得年齢が 18 歳未満の場合、代諾者からの同意も文書で得られる患者

【除外基準】
1)本研究で使用する薬剤に対して重篤なアレルギーを有する患者
2)下記の薬物療法又は処置を、下記に示す期間内に実施した患者
  • 規定量を超える 5-ASA 製剤:適格性判断日前 4 週間
  • ステロイド製剤(経口剤、注腸剤、坐剤、痔疾患治療剤、吸入剤、注射剤):適格性判断日前 4週間
  • 血球成分除去療法:適格性判断日前 4 週間
  • 免疫調節剤(シクロスポリン、タクロリムス、メトトレキサート、アザチオプリン、6-メルカプトプリン):適格性判断日前 4 週間
  • 生物学的製剤:適格性判断日前 12 週間
  • JAK 阻害剤(トファシチニブ等):適格性判断日前 2 週間
  • S1P 受容体調節薬(オザニモド等):適格性判断日前 4 週間
  • α4 インテグリン阻害作用を有する潰瘍性大腸炎治療薬(カロテグラストメチル等):適格性判断日前 4 週間
  • 潰瘍性大腸炎治療目的の抗生物質、抗菌薬:適格性判断日前 3 カ月間
  • 止瀉剤:適格性判断日前 2 週間
  • 下痢型過敏性腸症候群治療剤:適格性判断日前 2 週間
  • 腸管洗浄剤(本研究のための大腸内視鏡検査の前処置での使用を除く):適格性判断日前 2 週間
  • 下剤(本研究のための大腸内視鏡検査の前処置での使用を除く):適格性判断日前 2 週間
  • 浣腸(本研究のための大腸内視鏡検査の前処置での使用を除く):適格性判断日前 2 週間
  • 生ワクチン:適格性判断日前 4 週間
  • 整腸剤:適格性判断日前 1 週間
3)下記の薬物療法について、下記に示す期間内に用法・用量を変更した患者(投与経路が同じであれば、剤型のみの変更は不問とする)
  • 5-ASA 製剤(経口剤):適格性判断日前 4 週間
4)大腸切除歴を有する患者又は研究期間中に消化管に対する外科的治療が予定されている患者
5)臨床的に感染性腸炎の合併が疑われる患者
6)結核性疾患の患者
7)門脈圧亢進症の兆候を有する肝硬変(末期の原発性胆汁性肝硬変など)の患者
8)有効な抗菌薬の存在しない感染症、深在性真菌症の患者
9)重篤な心疾患を有する患者
10)腎障害(血清クレアチニンが 2.0mg/dL 以上、あるいは BUN が 25mg/dL 以上を示す)を有する患者
11)肝障害(総ビリルビンが 3.0mg/dL 以上又は AST(GOT)もしくは ALT(GPT)が 100IU/L 以上を示す)を有する患者
12)本研究の同意取得日時点で悪性腫瘍を有する、又は悪性腫瘍の治療終了後 5 年を経過していない患者。ただし、根治切除後で再発リスクが極めて低いと研究責任(分担)医師が判断した悪性腫瘍(上皮内癌(CIS)、内視鏡的切除後の早期癌、完全切除済みの極早期病変等)については、この限りではない。
13)明らかな精神症状を有する患者(治療の有無にかかわらず「医薬品の副作用の重篤度分類基準について」(平成 4 年 6 月 29 日、薬案第 80 号)グレード 2 以上に相当する状態)
14)薬物依存、アルコール依存の既往又は合併症を有する患者
15)妊婦、授乳婦、妊娠している可能性のある女性、同意取得時から治療期間中に妊娠を希望する女性及び適切な方法での避妊(子宮内避妊用具、ペッサリー又はパートナーのコンドーム使用遵守:ただし、経口避妊薬は使用禁止)に合意できない女性
16)同意取得時に追跡調査を含む他の臨床研究や治験に参加している患者
17)本研究実施計画書に定められた検査・観察等の実施前 12 週間以内に他の治験薬を投与していた患者
18)その他、研究責任(分担)医師が研究対象者として不適当と判断した患者本研究で使用する薬剤に対して重篤なアレルギーを有する患者

便提供者(ドナー)について

対象となる便提供者(ドナー)の方

18歳以上の健康な方
健康状態や既往歴、生活歴、抗菌薬の内服歴を問診させていただきます。提出していただいたドナー便は冷凍保存され、患者さんに投与されます。

医師が健康状態に問題がないと判断したドナー候補の方についてはさらに以下の検査を行います。
①採血検査:種々の感染症のチェックを検査いたします。
②便検査:便中にいるウイルスや感染症を引き起こすような細菌、寄生虫のチェックをいたします。
③唾液検査:新型コロナウイルスのチェックをいたします。
これら検査で異常を認めない場合、便を提供していただきます。

ドナー希望の方はこちらのWEBアンケートにご回答ください。内容確認の上、こちらからお返事いたします。

腸内細菌療法の研究について

今まで約290名の潰瘍性大腸炎の患者さん、約260名のドナーの皆さまにご参加いただきました。多くの方々のご協力を得るなかで、実際に患者さんの症状が改善していることを実感しており、先進医療B「活動期潰瘍性大腸炎患者を対象とする抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」など、これまで数多くの臨床研究を実施してまいりました。そして近い将来、通常治療としてより多くの患者さんに提供できることを目指して、今後も真摯に臨床研究を進めてまいります。その先には多くのクローン病や潰瘍性大腸炎の患者さんのより明るい人生に寄与できればと思っております。

順天堂大学腸内細菌療法リサーチセンター
順天堂消化器内科 石川大

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