専門外来

当科で担当している診療疾患は転移や再発を起こしたため薬物療法が主体となる悪性腫瘍(固形がん)であり、がん薬物療法専門医資格を有する医師が主体となって外来診療を行っております。また悪性腫瘍は集学的な治療が必要なため、必要に応じて他診療科と一緒に連携しながら診療させていただいております。
受診に際してのお願い
受診にあたっては、紹介状(診療情報提供書)が必要です。
(前回の受診日から6ヶ月以上経過した方を含む)
紹介医療機関から、地域医療連携室に直接ご連絡ください。
腫瘍内科

がん遺伝子パネル検査のご案内
~患者さん個々にあった薬物療法のために~

がんは遺伝子の異常によって生じます

がんは、私たちの体を作るために必要な設計図である「遺伝子」に生じた「異常」(遺伝子の配列が変化したり、数の変化が見られたりします)が原因で発生します。「遺伝子」に生じた「異常」を変異と呼び、変異が起こった遺伝子の情報をもとにして、異常な働きをするタンパク質が作られます。
近年、この異常なタンパク質(分子)を標的とした薬剤「分子標的薬剤」が次々と開発されてがんの治療のため使用されています。分子標的薬が標的とする異常なタンパク質は、遺伝子変異によって作られるため、がん細胞の中に対応する遺伝子変異があるかどうかを調べることが重要です。
しかし、がんの発生に関わる遺伝子の変異は個々の患者さんにより異なっており、それぞれの患者さんにあった薬剤を選択するためには、それぞれの患者さんのがんで発生した遺伝子の変異の箇所を知ることが重要です。

がん遺伝子パネル検査とは

がん遺伝子パネル検査とは、患者さんのがん組織や血液からがんの発症に関連する遺伝子「がん関連遺伝子」を抽出して、どの遺伝子にどのような変異があるかどうかを解析します。
「がん遺伝子パネル検査」は、複数のがん関連遺伝子の変異を一度に解析できるため、患者さんそれぞれのがんの特徴を詳しく知ることができ、患者さん一人ひとりにあった治療につながることが期待されています。
この検査を受けることで、下記に挙げたような治療法が見つかることがあります。

  • 国内であなたの病気に対して承認されている薬剤
  • 国内で他の病気に対して承認されているものの、あなたの病気については適応外の薬剤
  • 国内で承認されていない薬剤
  • 国内でも海外でも承認されておらず、現在開発中の薬剤

など。

がん遺伝子パネル検査の限界

このように期待されているがん遺伝子パネル検査ですが、検体の保管状態や解析に用いることができる腫瘍細胞の量、血液で行う検査の場合では腫瘍の大きさや増殖スピードの関係で遺伝子変異が検出できないときもあります。また、遺伝子変異が見つかっても、効果が期待できる薬剤がない場合もあります。さらに、国内では承認されていないなどの理由により、実際に治療を受けることが難しい場合もあります。

がん遺伝子パネル検査により明らかにされた遺伝子変異に基づき、何かしらの治療が行われた患者さんは全体のおよそ10%程度であったという報告もあります。
また、遺伝子パネル検査の結果から有効な治療法の可能性があることが判明しても、そのときの患者さんの体調から治療ができないこともありますので、検査を受けることを考える場合は、早い段階から主治医とも相談しておくことをお勧めします。

遺伝的にがんになりやすい体質(遺伝性腫瘍)が判明する可能性

がんの多くはタバコなどの外的要因によって遺伝子の変異が生じて発症しますが、発症のしやすさに遺伝的な体質が関係している場合があります。遺伝性腫瘍の患者さんは全がん患者さんの5-10%を占めるとされています(遺伝性腫瘍)。

がん遺伝子パネル検査で明らかになる遺伝子の変異のほとんどはがん細胞にだけしか見られない変異です。ところが見つかった遺伝子変異の中には両親のどちらかから受け継いだものも含まれていることがあり、その中には遺伝性腫瘍に関わる遺伝子の変異も含まれていることがあります。

がんにかかりやすい遺伝的な体質が判明することで治療の選択肢が増える場合もある一方で、遺伝的な体質があるということはその患者さんの家族にもその体質が引き継がれている可能性が出てきます。がんになりやすい遺伝的な体質であった場合、そのことが精神的な負担になることもあるかもしれませんが、その情報を自分やご家族の健康のためにも役立てることもできます。

遺伝的な体質のことを深く理解していただけるように、当院では臨床遺伝外来で遺伝カウンセリングを受けることができます(別途費用がかかります)。
 

当院で行っているがん遺伝子パネル検査について

OncoGuideTMNCCオンコパネルシステム
対象は標準的治療が終了した、あるいは終了することが見込まれる患者さんになります。この検査を受けるためには、手術などにより採取された腫瘍検体と、正常検体を得るために採血検査が必要です。腫瘍検体と正常検体の遺伝子の配列を同時に比較することで、腫瘍細胞で起きた異常のみを検出することができます。解析対象の遺伝子数は124 遺伝子です。
GenMineTOPがんゲノムプロファイルシステム
対象は標準的治療が終了した、あるいは終了することが見込まれる患者さんになります。この検査を受けるためには、手術などにより採取された腫瘍検体と、正常検体を得るために採血検査が必要です。腫瘍検体と正常検体の遺伝子の配列を同時に比較することで、腫瘍細胞で起きた異常のみを検出することができます。解析対象の遺伝子数は737 遺伝子で、その他にRNAを用いた融合遺伝子の解析も行います。
FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル検査
対象は標準的治療が終了した、あるいは終了することが見込まれる患者さんになります。この検査を受けるためには、手術などで採取された腫瘍検体だけで検査が行われます。腫瘍検体のみを調べるため、腫瘍細胞の遺伝子の配列情報と正常細胞の遺伝子の配列情報が混在しています。解析対象の遺伝子数は324遺伝子です。
FoundationOne Liquid CDxがんゲノムプロファイル検査
対象は標準的治療が終了した、あるいは終了することが見込まれる患者さんになります。この検査は血中に流出してくる腫瘍由来の遺伝子を解析するので、手術検体などの採取は必要ありません。過去の腫瘍検体を用いる場合と比べて、現在の腫瘍の遺伝子変異の状態を反映した結果が得られる可能性がある一方で、腫瘍検体よりも変異の検出感度が劣る欠点があります。遺伝子の変異には腫瘍細胞と正常細胞の情報が混在しています。解析対象の遺伝子数は324遺伝子です。
ガーダント360検査
対象は標準的治療が終了した、あるいは終了することが見込まれる患者さんになります。この検査は血中に流出してくる腫瘍由来の遺伝子を解析するので、手術検体などの採取は必要ありません。過去の腫瘍検体を用いる場合と比べて、現在の腫瘍の遺伝子変異の状態を反映した結果が得られる可能性がある一方で、腫瘍検体よりも変異の検出感度が劣る欠点があります。遺伝子の変異には腫瘍細胞と正常細胞の情報が混在しています。遺伝子の変異には腫瘍細胞と正常細胞の情報が混在しています。解析対象の遺伝子数は74遺伝子です。
 

5つの検査ともに保険診療で行うことが可能で、3割負担の患者さんでは総額で16万8千円です。現在通院中の患者さんで検査をご希望される場合、現在の主治医の先生を介して腫瘍内科までお問い合わせください。
 
当院以外の医療機関に通院されている患者さんで検査をご希望される場合、現在の主治医の先生ともご相談の上、下記までお問い合わせください。
順天堂医院 03-3813-3111(大代表)から、腫瘍内科の外来まで、御連絡ください。
5つのがん遺伝子パネル検査の特徴
  腫瘍検体 採血検査 解析対象
遺伝子数
結果返却
までの日数
金額
(保険診療パネルは3割負担の場合)
OncoGuide NCC
オンコパネル
システム
必要 必要 124 3~5週間
132,000円(検査オーダー時)
36,000円(結果説明時)
GenMineTOP
必要
必要
737
FoundationOne
CDx
必要 不要 324
FoundationOne
Liquid CDx
不要 必要 324
ガーダント360 不要 必要 74

よくあるご質問

全て開く
腫瘍検体がない(手術をしていない、生検をしていない)のですが、検査は受けられますか?
腫瘍検体がないあるいは腫瘍検体量が検査の基準より少ない、検査基準を満たさない場合は、OncoGuide NCCオンコパネルシステム、Foundation one CDxがんゲノムプロファイリング、MSK-IMPACT検査は受けることができません。
遺伝的な体質を調べる目的でこの検査を受けることはできますか?
がんになりやすい体質であることが偶発的にわかることもありますが、遺伝的な体質を調べることを本来の目的とした検査ではありませんので、得られた結果は不十分であり、追加の検査が必要となります。
体質を調べることを目的として「がん遺伝子パネル検査」を受けることはできません。
この検査を受けると、治療も必ず受けられるのでしょうか?
これはあくまでも検査であり、実際の治療ではありません。
また、検査結果によっては、治験や患者申出療養制度を利用した治療法の選択肢が判明することもありますが、適した治療法が見つからないケースも多くあります。実際にこれまでの研究結果から、がん遺伝子パネル検査により遺伝子変異に基づいた治療につながる割合は、本邦では、およそ5~10%と報告されております。
治験とは何ですか?
まだ国で認可されていない「薬の候補」を患者さんに投与して、その効果や安全性などを確認する目的で行われる「臨床試験」のことを「治験」といいます。製薬会社は「治験」の結果をもって厚生労働省に申請し、薬として承認されてはじめて、多くの患者に安心して使われるようになります。