睡眠時無呼吸症候群の概要
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、いびき症状を伴い、眠っている間に無呼吸(呼吸が止まる状態)や低呼吸(通常の呼吸の50%以下の換気状態)となってしまう病気です。成人の2~7%、小児の1~6%にみられますが、実際に診断をうけて治療されているのはその1〜2割程度の人しかいないとされます。
SASは後述する
いびき・日中の眠気などを引き起こすだけではなく、将来的に
数々の生活習慣病を合併し、
死亡率の増加を引き起こします。早期に発見し、適切な治療を受けることが重要とされています。
睡眠時無呼吸症候群の症状
いびき・起床時の頭痛・日中の眠気・夜間の頻尿・慢性的な倦怠感(だるさ)などを引き起こします。また、睡眠中に血中酸素濃度の低下をもたらすことで心臓へと負荷がかかり、高血圧を高率に合併します。また血管系にもストレスがかかるため
不整脈・心筋梗塞・脳卒中などを起こしやすくなります。近年では
糖尿病やメタボリックシンドローム、
認知症との関連も報告されています。
また、
子供のSASは心身発育に様々な影響を与えます。「寝る子は育つ」と言われますが、睡眠中に大きないびきや息が止まりそうな場合は注意が必要です。小児のいびきや無呼吸は、正常な睡眠や成長に悪影響を及ぼすことがあります。いびきや睡眠中の無呼吸の他にも、
夜尿(おねしょ)・寝相の悪さ・陥没呼吸(胸が異常に凹む)、
"落ち着きがない・イライラしている・集中力がない・いつも眠そう"などの症状がみられたらSASを疑う必要があります。子供は症状を訴えにくいため、大人がこれらの症状に気づいてあげることが重要です。原因は肥大した口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)や
アデノイドにより発症することが殆どで、高度肥満や小さな顎も原因となることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の検査
SASの検査方法には以下の2つがあります。
① 睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)
一泊二日の入院で行う検査で、睡眠時無呼吸症候群の標準的検査です。
体に色々なセンサーを取り付けて、呼吸状態と睡眠の質を評価します。
小児の場合は「小児科・小児外科・周産期母子メディカルセンター」で行います。
② 簡易ポリグラフ検査
検査機器をレンタルして、自宅で行う簡易検査です。
機器によって測定項目は異なりますが、結果次第ではPSGによる精密検査が必要となります。
そのほかにも、上気道(鼻やのどの通り道)が原因となりSASを引き起こすことがあります。ファイバースコープ(外来で行える内視鏡検査)、レントゲン、CT、鼻腔通気度検査(鼻通りの検査)などを追加して、専門的な治療適応を検討します。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の中でも耳鼻咽喉・頭頸科が専門分野とするのは上気道の閉塞が原因となる
閉塞性睡眠時無呼吸(以下、OSA)です。睡眠中に舌根(舌の付け根)が気道を閉塞させて無呼吸を引き起こし、肥満の方や解剖学的に首が短い方や下顎が小さい方、扁桃が大きい方(主に小児)に多くみられます。
① CPAP療法
鼻にマスクをつけることで持続的に空気を送り込み、舌根の喉への落ち込みを回避することで気道の閉塞を改善させる治療です。安全性と有効性が確認されており、現在
世界的に第一選択とされているOSAの治療法です。
② 口腔内装置(マウスピース)
睡眠中の下顎の位置をやや前方に移動した状態で保持することで咽頭のスペースを確保します。主に軽症の方が対象です。
③ 外科的治療
特に小児においては口蓋扁桃やアデノイドが生理的に大きいため、上気道の閉塞をきたしやすいです。その場合は口蓋扁桃摘出術や
アデノイド切除術が有効となります。また、鼻閉(鼻詰まり)がひどい場合は睡眠中に口呼吸が主体となってしまい、結果的に舌根が喉に落ち込んでいびき症状を引き起こします。鼻の疾患がある場合はOSAを引き起こしやすいだけではなく、CPAPやマウスピースの効果を十分に得られないことがあるため、鼻中隔矯正術や粘膜下下鼻甲介骨切除術などといった鼻の手術を勧めさせていただくこともあります。
さいごに
当院ではいびき・睡眠時無呼吸症候群を中心とした睡眠呼吸障害に関する専門施設として睡眠・呼吸障害センターが同施設内にあります。
耳鼻咽喉・頭頸科の他、循環器内科・呼吸器内科などの様々な診療科に加え、歯科医師・臨床検査技師・臨床工学士などと密に連携をとって、より専門的な診療を行い、患者様のニーズに応えられるように精進しております。