舌下神経電気刺激療法とは
「舌下神経電気刺激療法」とは、"閉塞性睡眠時無呼吸"に対する新しい治療法で、2021年6月に保険適用が認められました。手術で鎖骨下に埋め込んだパルスジェネレータが、睡眠中の呼吸に同期して微弱な電気の刺激で顎下にある舌下神経を刺激することで、効果が発揮されます。舌下神経は舌を動かす神経で、舌を収縮させて前に出すことでのどが広がり、通りがよくなります。就寝前に外部コントローラーを操作して、スイッチをオンにすると装置が作動します。本治療により、睡眠中のいびきや無呼吸の軽減、主観的な眠気の改善が報告されています。
前胸部のジェネレータが無呼吸を感知
電気刺激がセンサーリードを通して舌下神経を刺激
舌が前へ出てのどが広がり呼吸が再開
「睡眠時無呼吸」について
一般的に広く認められる睡眠時無呼吸は、閉塞性睡眠時無呼吸で、肥満や首が短い、下顎が小さい、舌や扁桃が大きい、などが原因でのどが狭くなるために、無呼吸を起こしやすくなります。日中の眠気や集中力の低下、交通事故の原因となるだけでなく、高血圧、冠動脈疾患、不整脈、心不全などの循環器疾患の原因となり、生命予後にも影響することが知られています。中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸への標準的な治療は持続陽圧呼吸(CPAP)療法で、上述の症状や合併症へも効果的です。しかし、CPAP療法に耐えられず、治療を脱落してしまうこともあり、継続率は50%とする報告もあります。
本治療は、CPAP療法の継続使用困難な方の新たな選択肢のひとつとして、適応基準を満たす方々が対象になります。
舌下神経電気刺激療法の実施概要
本治療の適応と判断されたら、まずは、全身麻酔による手術「舌下神経刺激装置植込み術」を受けていただきます。 本治療は、手術を行うための頭頸部の専門的な外科的手技や、研修の修了 が必要です。さらに、術後の管理体制が整った認定施設でのみ受けることができます。当院はこれらの基準を満たしている、東京都内では唯一の施設です。
CPAP療法が使えず、お困りの方の大きな福音となることを願い、当院では体制を整えております。本治療をご希望の方は、可能な限り、睡眠時無呼吸でかかりつけの医療機関からの紹介状をご用意ください。 受診相談は、順天堂院睡眠・呼吸障害センターへお問い合わせください。
舌下神経電気刺激療法の適応
- 中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸の方(無呼吸低呼吸指数が20回/時以上)
- CPAP療法を試行錯誤しても継続できなくてお困りの方
- 18歳以上の方
- 肥満指数(BMI)が30kg/m²未満の方
- 扁桃肥大などの重度の解剖学的異常がない方
- 薬物睡眠下内視鏡検査で軟口蓋が全周性に虚脱しない方(当院で検査を行います)
※上記の条件に該当しても、別の理由により適応外となる場合もあります