はじめに

この度、男性妊活に特化した外来診療の準備が整ったため、男性妊活外来を開設するに至りました。世界保健機関の報告では不妊症に悩む夫婦の約半数は男性側の原因が存在することが報告されております。精子のコンディション(濃度、運動率、質など)を高めることにより、不妊症治療の成功率が上昇することが知られており近年その重要性が再認識されております。自分達は不妊症かもしれないと感じた時から、大きな不安を抱えていることと思います。特に男性不妊症に幅広く対応した施設は少なく、病院選びに苦労したとのご意見をよく伺います。スタッフ一同、常に最新のエビデンスに基づいた治療を実践し、皆様に最良の医療を提供していきたいと思います。

診療日

2024年4月~
  • 第3土曜日 午前
  • 第2、第4、第5 火曜日 午後(現在、手術を第1、第3火曜日に実施しているため、その日は外来が休診となります。手術がない場合は、第1、第3火曜日も外来診療を行っております。受診前に事前にお問い合わせ頂けますと幸いです。)
  •  毎週金曜日 午後も診察可能です。ただし、一般泌尿器科外来も併診となるため、診察までお時間を要する場合がございます。

順天堂大学医学部附属順天堂医院・男性妊活外来の特徴

〇経験豊富なスタッフが実際の診療を担当します。

男性不妊症の治療には、高い診療水準、正確な手術技術が要求されます。担当スタッフの平松は、日本生殖医学会が定める認定研修施設の一つである獨協医科大学埼玉医療センター・国際リプロダクションセンターで2年間の研修を積んでおります。外来診療のみならず、顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術、顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE)においては数百名の男性患者さんを担当させて頂き手術においても豊富な経験を有しています。

平松一平 資格
生殖医療専門医
泌尿器科専門医
日本性機能学会専門医
内分泌代謝科(泌尿器科)専門医
日本排尿機能学会専門医
テストステロン治療認定医
難病指定医

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〇大学病院内で男性、女性の治療が可能である。

順天堂医院には、生殖補助医療(ART)などの不妊治療や腹腔鏡手術などの低侵襲外科治療が可能な国内初の女性総合診療センター`女性低侵襲外科・リプロダクションセンター’が2017年より開設されており、豊富な診療実績を有しております。このように順天堂医院ではカップルでお越し頂き、女性・男性ともに診察可能な体制が整えられております。

〇保険診療に対応しています。

男性不妊症に対する原因検索目的で施行する血液検査や超音波検査など基本的な項目は、可能な範囲で保険診療を行います。ただし、精子DFI検査など保険診療に含まれていない検査は自費となります。手術加療である顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術は保険適用となります。また、顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE)も2022年4月より保険適用となりました。
 

〇当院における手術の特徴

高度な技術が要求される手術においては、手術用顕微鏡システムORBEYEを用いて行います。4K3Dイメージング技術を用いてマイクロサージャリーの質を高めます。

〇クロミフェンを用いた治療

内分泌的加療であるクロミフェンを用いた治療を採用しております。テストステロン値が低く、ゴナドトロピンが高値でない乏精子症の状態において精子濃度や運動率が改善することが知られております。男性不妊症診療ガイドラインにおいて紹介されており、重篤な副作用は極めて少ないと報告されております。

対象となる男性

  • 不妊症に悩むカップル(妊娠を希望し、1年以上避妊せず性交を行っているにもかかわらず妊娠の成立を見ない方)。
  • 妊活を開始し1年未満の場合でも、不安を感じ詳しい検査を希望する方。
  • これから妊活を開始するカップル(ブライダルチェック)。事前にご自身の精子や性ホルモンの状態を確認することができます。妊活の計画に役に立つ可能性があります。ブライダルチェックの場合は、検査費用が自費となります。
  • 婦人科系のクリニックで「精子が少ない」「運動率が低い」「無精子症」かもしれないと言われた方。
  • スマホアプリ等で精子のセルフチェックを行ったが、不安がある方。
  • 精索静脈瘤の手術を希望される方。
  • 精巣精子採取術(TESE)を希望される方。※現在準備中・近日中に開始可能見込みです。
  • 妊活においてご自身の性機能に不安がある方。勃起不全(ED)や射精障害も含みます。
  • 上記やその他、男性不妊症に関して診察希望がある方。

当院で可能な検査

〇一般精液検査

液量、精子濃度、精子運動率、正常形態率を確認できます。  
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〇精子DNA断片化指数検査(DFI検査)

精子の質を計測する検査として近年重要視されています。損傷したDNAを有する精子の割合を測定することが可能であり、DFIが高い場合(精子の質が低下している状態)には受精率や妊娠率が低くなる可能性や流産率が高くなる可能性が示唆されております。また国内の調査においてDFI高値の場合、タイミング法や人工授精では妊娠に至らないケースが多いことも報告されており、その場合は体外受精等にステップアップする必要があると考えられます。加えて、一般精液検査では全てのパラメータで基準値以上の場合も、DFIのみ高値を示す男性も少なからずおり存在しております。このように、DFI検査は治療方針を決めるうえでも有用な検査であり、最新のWHOマニュアルでも「Extended examination」として記載されております。
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〇染色体検査

男性不妊症、特に高度乏精子症や無精子症の原因には一定数の割合で常染色体異常や性染色体異常が関与しております。当院では染色体検査(Gバンド法)、Y染色体微小欠失(AZF)検査が可能となっております。遺伝学的検査結果は不妊症治療の方針決定に加えて、自身の健康管理に関与する遺伝性疾患が指摘される場合や、次世代に影響する遺伝性疾患も存在しています。当院には遺伝性疾患に関する専門チーム(臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラー)が在籍しており、臨床遺伝外来を開設しております。遺伝性疾患を指摘された場合は、臨床遺伝外来をご紹介し、当科と連携し総合的にサポートさせて頂きます。

〇その他検査

触診:泌尿生殖器の状態を評価します。
陰嚢超音波検査:精巣内、精巣上体の評価が可能です。精索静脈瘤の診断にも用います。
血液検査:通常の血液検査に加えて、男性ホルモンや生殖関連のホルモン検査が可能です。

備考

当院では対応していない治療が必要になった場合は、紹介状を作成し適宜治療可能な施設を紹介させて頂きます。