診療科概要
順天堂医院眼科の歴史
順天堂の前身は、始祖の佐藤泰然(1804~1872)が天保9年(1838)に両国橋の薬研堀に開いた蘭学塾にさかのぼります。その後、新たに佐倉の地に塾を開いて順天堂と号したのが天保14年(1843)のことであり、170年以上の歴史があります。
昭和18年に佐藤勉が初代眼科教授に就任し、近視眼や乱視眼に対して角膜前後面切開を行ったこの研究は今日の屈折矯正手術に大きな影響を与えました。昭和27年にはアメリカで開発されたコンタクトレンズをわが国で最初に導入しています。
昭和35年に教授に就任した中島章は、眼球銀行協会の設立にも努力し、昭和38年わが国で最初に順天堂アイバンクが許可され角膜移植手術は多くの症例を手がけています。
平成元年に金井 淳が教授に就任し、研究テーマは角膜や網膜疾患の分子遺伝学的研究、免疫抑制剤の点眼への応用とアレルギー疾患への研究、エキシマレーザーによる屈折矯正手術、コンタクトレンズ、スポーツ眼科など多岐に亘るようになりました。
平成15年1月より教授に就任した村上 晶は、今までの数多くの研究テーマを継承および発展しながら日々新しいことに目を向け、臨床についても附属病院、関連病院と連携をとり、患者さんへ専門性の高い診療を行いながらさらに若手医師の指導に力を入れています。
そして、令和4年12月より中尾新太郎が教授に就任し、多様化したライフスタイルの中で、それぞれの患者さんに応じた見え方、治療方針を提案することを心がけ、引き続き新しい医療を取り入れるよう目指しています。
また、昭和55年から平成28年まで眼科学教室内にWHO指定西太平洋地区失明予防協力センターが設置されグローバルな失明予防活動・研究を行ってきました。現在もその伝統を受け継ぎ国内外において視覚障害に関連する公衆衛生活動・研究を幅広く行っています。
関連病院について
関連する附属病院としては、御茶ノ水の順天堂医院の他に順天堂大学浦安病院【千葉県浦安市:海老原伸行教授】、順天堂大学静岡病院【静岡県伊豆の国市長岡:太田俊彦特任教授】、順天堂東京江東高齢者医療センター【東京都江東区:小野浩一先任准教授】、平成17年7月東京都練馬区に開院致しました順天堂大学練馬病院【東京都練馬区:横山利幸特任教授・武居敦英准教授】があります。附属病院全体で年間約6,000件以上の手術を行っています。
外来診療
眼科の専門外来は以下よりご覧いただけます。
当院は「特定機能病院」として厚生労働省から承認された病院ですので、原則として他の医療機関からの紹介状(診療情報提供書)が必要となります。
初めて当科外来を受診する場合、診察を円滑に行うためにも紹介状をご持参いただきますようご協力をお願いいたします。
なお、
紹介状をお持ちでない場合でも、受診していただくことは可能ですが、
初診時選定療養費として別途自費にて11,000円(税込)を申し受けます。
入院診療
入院が必要と判断される患者さんは、入院の上、診察・治療を行います。
眼科は46床(個室18床 多数室28床)を主に眼科専門病棟に抱え、担当医・研修医が病棟医長とともに診療に当たります。
主な手術の入院期間
手術の種類 |
入院期間 |
白内障片眼 |
2泊3日~ |
緑内障 |
1週間~ |
角膜移植 |
1週間~ |
入院に関しましてご不明な点がございましたら、外来までお気軽にご相談ください。
プレミアムレンズを用いた白内障手術
~多焦点眼内レンズ&トーリック眼内レンズ~
眼科領域で最も多く行われる手術である白内障手術は全国で年間約80万眼行われています。超音波乳化吸引術の進歩により完成の域に入ったかと思われたこの手術も、近年は新しい眼内レンズの開発に伴い、更なる進化をとげ続けています。
従来の白内障手術の術後の目標は、〝眼鏡を掛ければ見える〟ことでしたが、最近は〝眼鏡を掛けなくても見える〟ことを求められる機会が多くなっています。
従来使用してきた眼内レンズは
単焦点レンズと呼ばれ、遠くにピントを合わせた場合、近くの文字は老眼鏡を掛けないとはっきりと見えません。また、乱視の治療もできないため、角膜乱視の方には乱視用の眼鏡を掛けてピントを合わせました。
近年、
プレミアムレンズと呼ばれる
老眼や乱視も治療できる特殊な眼内レンズが開発され、徐々に使用されるようになってきています。
本日ご紹介する
多焦点眼内レンズは遠近両用眼内レンズのことであり、
老眼の治療に用いられます。
トーリック眼内レンズは乱視矯正用眼内レンズであり、
角膜乱視の治療に用いられます。これらの
プレミアムレンズは、老眼鏡や乱視用の眼鏡を使用する機会を減らし、QOLを向上させることが期待されています。
多焦点眼内レンズは今の所、健康保険の適応が認められていませんので、手術と関連する治療を自費診療で行うことになります。順天堂医院では平成23年4月より高度先進医療として手術を行っており、健康保険負担分以外に片眼約40万円の自費負担が必要となります。手術結果はそれぞれの眼の条件(瞳孔の直径や乱視など)によって異なり、一部の方では夜間に車のヘッドライトや街灯などがにじんで見づらくなったりする(グレア、ハローと呼ばれる現象)こともあります。また職業ドライバーの方などは手術をより慎重に進める必要があります。
ト―リック眼内レンズは既に健康保険が適応されており、通常の白内障手術と同様の費用で行えます。しかし、全ての乱視を治療できるわけではなく、術前の適応検査が重要になります。また、同時に老眼の治療はできず、両方を治療できる
多焦点トーリック眼内レンズを用いた手術の本邦での普及が待たれています。
当院でも、これらの眼内レンズを使用する手術を開始しています。興味のある方は、ご紹介下さるお近くの眼科の先生や当院外来担当医にご相談ください。
(文責:中谷 智)