患者さんへのご挨拶

Dr田村直人s膠原病内科 教授 田村直人
膠原病は、自己免疫の異常による慢性の炎症がみられる原因不明の全身性の疾患で、関節リウマチをはじめとする様々な病気が含まれます。
当院の膠原病内科は、1969年に塩川優一先生が主宰された国内で初めての膠原病専門の診療科であり、現在も多数の患者さんが通院されています。また、当科では診療に加えて、膠原病の病因や病態の解明と今後の治療法開発を目指して、臨床的および基礎的な研究を行っております。

関節リウマチは、近年、治療法が大きく進歩しました。当科では関節超音波検査などを用いて関節リウマチの診断をなるべく早期に行い、メトトレキサートをはじめとする経口のリウマチ治療薬のほか、生物学的製剤や経口キナーゼ阻害薬といった新規治療薬を積極的に用いて、リウマチの寛解(症状がほとんどない状態)とその維持を目標とした治療を行っています。また、治療抵抗例や副作用で薬剤が使いにくい場合には白血球除去療法という治療も取り入れています。

また、関節リウマチ以外の膠原病、すなわち全身性エリテマトーデス、強皮症、筋炎、全身性血管炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、リウマチ性多発筋痛症、など様々な疾患の症例数も非常に多く、豊富な診療経験を有しております。私たちはこれらの疾患に伴う難治性の病態に対しても、最新の知見に基づいた適切な外来および入院診療を行っております。
さらに、強直性脊椎炎をはじめとする脊椎関節炎といわれる疾患群の専門外来を行っている国内で数少ない施設であるのも当科の特徴のひとつです。強直性脊椎炎は、若年者で慢性、再発性の腰背部の痛みがみられ、安静で痛みが強くなり動かすとよくなるのが特徴です。

関節リウマチをはじめ、上記のいくつかの疾患においては新規薬剤の臨床研究(治験)を行っておりますので詳しくは外来でお尋ねください。
膠原病では、持続する関節痛、寒いと指先が真っ白になるレイノー現象、眼や口腔の乾燥感など、多彩な症状がみられます。これらの症状に加えて、血液検査では抗核抗体やリウマトイド因子などの自己抗体が陽性となり、診断のきっかけとなることがあります。
関節痛などがあり、関節リウマチやそのほかの膠原病について専門医の診察を希望される場合には、外来でご相談ください。

診療科概要

当科は、昭和44年に我が国で初めて設立された「膠原病内科」です。平成15年4月に診療科名を「膠原病・リウマチ内科」に変更し、膠原病やリウマチ性疾患を専門的な立場から診療しており、約30名の日本リウマチ学会専門医や日本リウマチ財団登録医をはじめとした約55名の医局員が、外来・病棟での診療および研究に従事しております。更に、国内・外、臨床・研究を問わず留学生の受け入れも積極的に行っております。

膠原病とは

膠原病とは、免疫力・抵抗力に異常をきたし全身のあらゆる臓器に慢性的な炎症を引き起こす疾患群の総称です。自分自身の臓器を構成する細胞・蛋白質に異常な免疫反応が起こることから、「自己免疫疾患」とも呼ばれます。

免疫力・抵抗力は、健康な状態であれば外部からの病原菌や異常な細胞に対してのみ働きますが、なんらかの原因でこのシステムに異常を起こし、自身を構成する細胞と外部から侵入した病原菌の識別が不可能となり、病原菌が存在しないにもかかわらず自身の組織を病原菌であると認識してしまいます。その結果、本来は病原菌にのみ反応するリンパ球や抗体が自身の細胞に対して産生され、体のあらゆるところに炎症を引き起こしてしまいます。その代表的な疾患が関節リウマチです。

自身の蛋白質に対して産生された抗体を自己抗体と呼び、全てではありませんが血液検査で測定することが可能となっています。しかし自己抗体もその種類によっては病的な抗体ではない場合もありますので注意が必要です。
 
膠原病は1942年アメリカの病理学者であるポール・クレンペラー(Klemperer Paul. 1887-1964)によって初めて命名された疾患群で、英語ではcollagen diseaseと呼ばれています。当初、原因不明であったこの病気を病的な免疫反応が起こる部位・臨床症状から
 
  1. 関節リウマチ
  2. 全身性エリテマトーデス
  3. 強皮症
  4. 皮膚筋炎、多発性筋炎
  5. 結節性動脈周囲炎
  6. リウマチ熱

の6疾患に分類しました。
全ての疾患において人の細胞を結合している膠原線維がフィブリノイド変性を起こしていることを見いだし「膠原病」と名づけられました。しかしこの膠原線維のフィブリノイド変性は他の病気でも呈していることが分かり「びまん性結合組織病」と変更されましたが、歴史的な背景から本国では、いまだ膠原病という名称が一般的に使用されています。
これらの6疾患は古典的膠原病とよばれ現在では、その臨床症状や経過、病理的特長、異常免疫の機序、検査所見などからさらに細分化されており、当科では主に以下の疾患の診療を行っております。
 
  • 関節リウマチ
  • 悪性関節リウマチ
  • フェルティ症候群
  • 成人スティル病
  • 若年性関節リウマチ(若年性特発性関節炎)
  • 血清反応陰性関節炎(HLA-B27関連関節炎:強直性脊椎炎、Reiter症候群、乾癬性関節炎など)
  • 全身性エリテマトーデス
  • 抗リン脂質抗体症候群
  • 強皮症(全身性硬化症)
  • 皮膚筋炎・多発性筋炎
  • シェーグレン症候群
  • 混合性結合組織病
  • 結節性多発動脈炎
  • 顕微鏡的多発血管炎
  • 多発血管炎性肉芽腫症(旧称:ウェゲナー肉芽腫症)
  • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧称:アレルギー性肉芽腫性血管炎)
  • 高安動脈炎(大動脈炎症候群)
  • 巨細胞性動脈炎(旧称:側頭動脈炎)
  • ベーチェット病
  • リウマチ性多発筋痛症
  • リウマチ熱

外来受診

初診の患者さんは紹介状(医療機関からの診療情報提供書)を必ずお持ちください。
 
当院は「特定機能病院」として厚生労働省から承認された病院ですので、原則として他の医療機関からの紹介状(診療情報提供書)が必要となります。
初めて当科外来を受診する場合、診察を円滑に行うためにも紹介状をご持参いただきますようご協力をお願いいたします。
患者さんご自身でご予約いただく場合
先生方にご予約いただく場合

入院診療

病棟の診療体制について

膠原病・リウマチ内科の病床として、約60~70名の方がご入院されています。膠原病は、全身にさまざまな症状が出現することが多く、より専門的な治療が必要とされることもあります。そのため、当院では内科全般、整形外科・スポーツ診療科、皮膚科、産科・婦人科、小児科・思春期科、メンタルクリニック、耳鼻咽喉・頭頸科、眼科など他科との連携も行っております。更に、膠原病合併妊娠は、産科・婦人科、小児科・思春期科と、膠原病の呼吸器疾患は、呼吸器内科と協力した診療を入院、外来を問わず行っております。
病棟の診療体制について

グループ制

当科の年間入院患者数は、750名を超えます。入院診療は、グループ体制で行っており、担当医はいずれかのグループに属しています。膠原病の病変は、全身にわたることが多く、疾患に特徴的な症状が出現しないことも見受けられます。特に、発症早期の方は診断の確定や治療方針を決めるため、数多くの専門的な検査を受けていただくことが必要となります。このため、患者さんの検査結果、治療はグループ内での検討、更には教授回診や症例検討会で綿密に話し合います。
更に必要であれば、関連する診療科を受診していただき、膠原病以外の専門分野の意見も積極的に取り入れて治療方針を決定しております。

現在は、2グループに分かれており、それぞれにグループ長、サブグループ長を配置し、担当医とともにグループでの病棟回診を必要に応じて行っております。

総回診

毎週水曜日には、教授回診が行われます。患者さんの症状や診察所見、検査結果を教授とともに検討します。その後、病棟の回診を教授、グループ長、各担当医とともに行います。

カンファレンス

週に1回、新入院の症例を対象に症例検討・カンファレンスを行っております。その週に入院となった患者さんについて協議を行い、確定診断、検査指針や治療方針をさまざまな医師の意見を取り入れ検討しております。
カンファレンス

膠原病短期入院のご案内

膠原病・リウマチ内科では、膠原病患者さんを対象に1週間または2週間の検査・評価入院を行っております。
この入院では、外来診療では不可能な検査や、早期の予約が比較的困難である超音波(エコー)、CT(断層X線撮影)、シンチグラム(炎症病巣の検索)、MRI(磁気断層撮影)、胃カメラなどを集中的に短期間で受けていただくことが出来、迅速かつ詳細な病状の把握が可能です。更には、関連のある他の専門科目の受診や疾患に関する説明も行っております。

※現時点では、女性の患者さんのみを対象とさせていただいております。
※入院病床は4人室となります。検査内容は患者さんの病状により異なります。
※詳細は、担当医にお尋ねください。
膠原病短期入院のご案内

紹介ビデオ

音声付ビデオです。
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