国際活動


当科は順天堂大学の三無主義「性別・学閥・国籍を問わず」実践しています。医局員の半数は女性であり結婚出産後も大活躍しています。出身大学で分け隔てしない順天堂はとても働きやすく、当科科長も他大学出身で18年順天堂に勤務しています。さらに当科では国際活動に力を入れています。外国籍の医局員、 海外留学への道(2023年臨床留学オーストラリア・カナダ計3人 基礎留学アメリカ1人)や海外留学生受け入れ(医学生、レジデント、 大学院生、 研究生)を積極的に行っています。
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順天堂国際交流センターのObservational Programのホストとして、 医学生やレジデントを2-12週間単位で受け入れています。それゆえ医局には常に外国人留学生がいます。時期によっては一緒に学会にも行ったりもしています。(写真)最近では留学生同士の口コミから「順天堂麻酔科」の人気が高まり応募者多数になっているのでイギリス、 アメリカ、 オーストラリアなど母国語が英語の生徒が多くなっています。UKのBristolやManchester、 ドイツのHeidelberg、 Chariteからは5-6年生の優秀な留学生が毎年1-2名ずつ訪れていますObservational Programはコロナ禍で中断していましたが2022年6月から現在までに19人受け入れており、 2024年3月までさらに4人受け入れる予定です。2022年夏にはウクライナ支援として麻酔科専攻医受け入れ(2人×3か月)ていました。
img_chest_06Brigham and Women's HospitalからのResident (Christoph)と
Heidelberg UniversityからのStudent (Helen)
また、 昨年から米国の最高峰麻酔科研修病院であるBrigham and Women’s Hospitalから麻酔科志望のレジデントを1か月間受け入れています。本国での研修単位とみなされることが認証され今後も継続していく予定です。(写真)。留学に行かなくても医学を通した国際感覚に慣れ親しむことができます。科長の専門は胸部麻酔であり、ヨーロッパ心臓胸部麻酔学会(EACTAIC)の委員を務めています。欧米の潮流を医局にいち早く取り入れることはもちろん、 自身がヨーロッパで行っている講演やワークショップと同じ教育を医局で行っています。(写真)ヨーロッパの施設と国際共同研究も行っています。
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もちろん,医局員の国際学会の発表や英文国際雑誌への投稿も全力でお手伝いしています
国際活動などに興味がある先生は是非見学やご連絡をお待ちしています。


報告

河邉 千佳 カンボジア・プノンペン Sunrise Japan Hospital 麻酔出張報告 2024/7/7-15
202477日から15日の1週間、カンボジアの首都プノンペンにあるSunrise Japan HospitalSJH)に麻酔出張に行って参りました。きっかけは、3月に大学の小児外科の送別会に参加した際に、 SJHの院長・岡和田学先生(元・当院小児外科医)に再会し、病院の様子を伺って興味を持ったことでした。ちょうどSJHが順天堂医院と提携をする話が持ち上がっていた時期で、当科の川越教授にも話したところ、「ぜひ行って、様子を見てみてください」と快諾をいただきました。大学の研修医の先生たちもSJH研修のトライアルで2週間滞在する予定で、私も同時期に行くことになりました。家族も帯同する方も多いようで、私も子供と実母を連れての旅になりました。

入国までの手続きは、病院の日本事業部の方がとても親切に手厚くサポートしてくださったので、全く不安なく出発当日を迎えることができました。私たちはベトナム経由でプノンペンに入り、ここまではスムーズでしたが、入国時のビザ申請所と入国審査は非常に混雑しており、長い時間を要したために疲弊しました。しかし、空港を出るとすぐに病院からのお迎えがあり、案内されたサービスアパートメントも広く清潔で、全員がほっとしました。

SJHは朝7時半から、医師全員による勉強会とER症例提示のカンファレンスがあり日本人医師とカンボジア人医師と英語で活発に議論が行われておりました。同じ時期にS J Hと日本内視鏡外科学会が共同で行っているSurge Bridgeプロジェクトより内視鏡外科の先生が 2名いらしていて、日本のロボット手術の紹介をしておりました。手術は9時半入室で、子供から大人まで幅広く行われており、月曜から木曜の間で8件の麻酔(うち1件は脊椎麻酔、1件は静脈麻酔)を担当しました。SJHの麻酔科には普段3人の麻酔科医が所属しておりますが、1人は日本で研修中のため、残りの2名(マカラ先生、ビドゥ先生)と麻酔看護師 1名(セタさん)で麻酔していました。私は麻酔と彼らの教育に携わる形で参加しました。日本で採用されている薬剤とは異なり、特にレミフェンタニルがなかったため、硬膜外麻酔や神経ブロック、セボフルランに頼る麻酔になり、どの麻酔方法が適しているかと頭をフル回転で取り組みました。ブリディオンは日本から輸入がされていますが、高価なためあまり使用されておらず、久々にアトワゴリバースをしました。また、小児の仙骨硬膜外麻酔や腹部神経ブロック、声門上器具については、あまり馴染みがないようで、エコー下の仙骨硬膜外麻酔と神経ブロックを一緒に動画を見ながら教えました。後日、マカラ先生から「仙骨硬膜外麻酔や声門上器具がうまくできた」と報告をいただき、非常に嬉しかったです。

カンボジアでは、ポルポト時代の影響で教育を十分に受ける機会を長く失われていたこともあり、医学部に進むためには多くの学生が海外に行くようです。国内での麻酔教育はあまり充実しておらず、数少ない教育施設で働くことは非常に競争率が高いようです。日本の麻酔科医が当然のように受けている教育が、カンボジアでは当たり前でないことに衝撃を受け、改めて自分が恵まれた環境にいることを知りました。ただ医師たちは英語が堪能なので、ネットやメディアなどを使用すれば一定の教育が可能だと思う一方で、やはり実際に一緒に麻酔を行うことで最も教育効果があるとも感じました。

病院以外の時間は、日本人とカンボジア人の先生方、研修医の先生、SJH事務所の日本人スタッフの方々と、カンボジア料理やフランス料理などディナーを楽しみました。アパートメントでは毎朝、選んだ朝食をスタッフの方が運んでくださるのでとても快適でした。また、アプリによるタクシー配車や食事のデリバリーも充実しており、日本のイオンモールがプノンペンに3店舗もあるため、日本食にも困ることがありませんでした。子供も現地のサマースクールに参加し楽しんだようです。このように、スタッフの方が手厚く生活をサポートしてくださったおかげで、カンボジアの急成長とトゥクトゥクで感じるアジアの熱気の中で、やりがいのある仕事をさせて頂けるという贅沢な機会となりました。当科から定期的にスタッフを派遣するなどして、若い先生方にも視野を広げてもらえると嬉しいですし、カンボジア人の先生たちも刺激ある時間を過ごせるとお互いに良い経験になると思いました。素晴らしい機会をいただき、 SJHの岡和田先生はじめ、SJHの先生方やスタッフの皆様、当科の教授、麻酔科スタッフの皆様に誠に感謝申し上げます。
240707_01Sunrise Japan Hospital正面玄関
240707_02手術室でセタさん(左)と
マカラ先生(右)
240707_03ヴィドゥ先生(左)と
マカラ先生(真中)と
240707_04現地スタッフと岡和田先生、
訪問医師でディナー