受診に際してのお願い
専門外来につきましては、完全予約制となっております。
受診にあたっては、
紹介状(診療情報提供書)が必要です。
(前回の受診日から6ヶ月以上経過した方を含む)
紹介医療機関から、地域医療連携室に直接ご連絡ください。
大動脈ステントグラフト・左心耳治療 専門外来
当外来はどなたでもご受診いただけます
大動脈瘤
写真1
御高齢であることや治療や手術を行うことが困難であると言われた大動脈瘤の方、心臓以外にも疾患があって手術のリスクが高いと言われた方は様々な診療科が高い水準で揃っている当大学病院での治療をご検討ください。
大動脈ステントグラフトとは通常の心臓手術とは異なり、胸やお腹を開けるといった大がかりな手術操作を必要とせず、足の付け根の動脈からカテーテルを用いて人工血管を大動脈内に留置して大動脈瘤の破裂を予防する方法です。 一般的に腹部ステントグラフト手術では、両側の足の付け根からステントグラフト自体を挿入しますが、患者さんの状態によっては切らずに実施することも可能です。(写真1)
創が小さくて済むことからご高齢の方や体力が低下している患者さんに対して体への負担がとても少なくて済む治療法です。
当院では大動脈瘤の適切な治療が行えるよう大動脈ステントグラフト専門外来を設置し、診断と治療に取り組んでいます。胸部、あるいは腹部に大動脈瘤があると言われた方、ご家族に大動脈瘤疾患がありご心配な方は是非ご相談ください。
左心耳治療
過去に脳梗塞を発症し再発の可能性を言われている患者さん、心臓疾患をお持ちで脳梗塞の可能性を言われている患者さんには重大な脳梗塞に至らないような治療法を見つけていきます。
心房細動を指摘されていらっしゃる患者さんは心房細動がない方に比べて、5倍脳卒中を発症しやすいといわれております。さらに、心房細動を発症した患者さんの約3分の1は将来的に脳卒中を発症することが分かっています。心房細動を原因とする脳卒中は、死亡に至ったり、重篤な麻痺などの機能障害を引き起こす可能性が高いことが報告されています。
そのため、脳梗塞を予防するために長期間にわたり抗凝固療薬(ワーファリン、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナ)を内服し、血栓が形成されることを予防する必要があります。
一方で抗凝固薬の服用は出血性合併症の危険因子となり、重大な出血は致命的となる可能性があります。出血性合併症の危険因子の大きさは個々で異なりますが、大出血の既往(消化管出血、喀血、膀胱出血、不正性器出血など)、脳卒中の既往、高齢、高血圧、腎機能障害、肝機能障害、抗血小板剤(バイアスピリン、バファリン、プラビックス、エフィエントなど)の併用、アルコールの常飲、繰り返す転倒などは出血リスクを高める要因です。これまでは、これら出血性合併症のリスクが高い心房細動を発症されている患者さんにおいても、①出血リスクは高いが通常通りに抗凝固薬を継続服用する、②出血リスクを減らすために脳卒中予防としては推奨されていない少量で抗凝固薬を継続服用する、③抗凝固薬を服用しない、のいずれかを選択せざるを得ず、患者様には何らかの不安、リスクを強いなくてはなりませんでした。
心臓が原因で発症する脳卒中では、血栓の90%以上が左心耳から発生することが明らかとなっています。左心耳切除術は、この左心耳を切除することで心房内血栓の形成を防ぎ、脳卒中を予防する治療です。また本治療を行うことで、抗凝固療法を中止することができるため、出血リスクを大幅に軽減することが可能です。
大動脈瘤破裂の死亡率、心臓源性脳梗塞の予後
大動脈瘤破裂の死亡率
真性大動脈瘤の多くは破裂しない限り症状がないことが特徴です。しかし、瘤のサイズが大きくなるにつれ周囲の組織を圧迫し、胸部大動脈瘤の場合ですと、咳、血痰、嗄声(声が嗄れること)、胸痛、背中の痛みの症状が現われます。腹部大動脈瘤の場合は、腰痛や腹痛などの症状がみられるようになります。
すでに上述した症状がでている段階では破裂する危険性が高まっている状態で、このまま大動脈瘤が大きくなり破裂すると、その死亡率は80〜90%にも上るといわれています。仮に手術室までたどり着けたとしても手術中の死亡率は60〜70%と言われており、命を落とす可能性が高くなってしまいます。
そのため、大動脈瘤は破裂する前に治療するのが原則です。通常、予定されているステントグラフト内挿術での手術を行った場合の死亡率は0.6%と報告されており、動脈瘤をそのまま放置している方が危険だと考えられます。
心臓源性脳梗塞の予後
心房細動はよく耳にする不整脈ですが、その最大の問題は脳梗塞などの致死的血栓塞栓症が何の前触れもなく突然起こることです。これは、左心房内の血流が淀むことから、左心房内に血栓が作られ脳などの重要臓器に流れてしまうことが主原因であると考えられています。左心房内の血栓の90%は、左心房から突出した"左心耳"にできることがわかっています。
心房細動が原因の脳梗塞は脳梗塞全体の約20%を占め、他の原因の脳梗塞に比べ死亡率が高く重い障害が残り予後が悪いという特色を備えています。重度の後遺症を抱えての長期の入院、リハビリ、高いレベルの介護が必要となり、ご家族への負担、またなによりもご自身が一番辛い思いをして残りの人生を過ごされることになります。どのようにして脳梗塞を予防していくか
私たちと一緒に考えませんか?
これまでの治療実績
当院でのステントグラフト内挿術の治療開始は2009年から行っており、現在までに多くの患者さんが治療を受けられています。胸部ステントグラフト内挿術においては、現在日本で使用することができる機種全てにおいて指導医がおり、その患者さんに合った適切な治療を考察し対応させていただきます。
術前にしっかり精査を行った上で適応を判断しますが、ステントグラフト内挿術が不適格と判断された場合でも、質の高い開胸手術や開腹手術とのハイブリット手術を行う体制も整っておりますので、患者さん一人一人にあった治療を選択できることが可能です。
左心耳切除術や閉鎖術について、当科では一般的な心臓手術を行う際に連続した3000例以上に同時手術を行なって社会復帰後の脳梗塞予防効果の実績をあげています。また、他の心臓・大血管手術と同時に行う以外にも、単独での内視鏡を用いた左心耳閉鎖術を行っております。
今まで培ってきた診療・手術経験から患者さん1人1人に合った治療方針をご提案いたします。当外来は完全予約制のためお待ちいただく時間も少なく、些細なお身体の心配なことからご相談に乗らせていただきます。大動脈瘤、脳梗塞について気になることがある方は、お気軽にご予約下さい。また、メール相談も行なっております。下記ご参照ください。
順天堂大学心臓血管外科 大動脈ステントグラフト・左心耳治療専門外来
横山泰孝