循環器内科では、狭心症、心筋梗塞、先天性心疾患や弁膜症、心筋症、不整脈などの心臓の病気、大動脈や下肢動脈、肺動脈などの血管の病気、さらには高血圧や脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群など生活習慣に関わる疾病の診療など広い範囲の疾患を取り扱っています。また、24時間常に緊急疾患に対応できる体制と地域医療連携・支援により、適切で最良な医療を提供し、いかなる患者さんにもご満足を頂けるよう努力しております。
一方では大学病院として研究面でも研鑽を重ね、臨床への応用・還元に努めています。多くの附属病院・関連病院と連携して、豊富な臨床データを収集・共有することで、国内はもちろん国際学会において貴重な研究成果を報告し続けています。また、積極的に国内外の学術交流を行いつつ、大学院生を中心として基礎研究にも力を注いでおり、素晴らしい研究成果を発表しています。
教授ご挨拶
はじめに
順天堂大学大学院医学研究科
循環器内科教授
南野 徹
この度、順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学教室を主宰することになりました南野 徹と申します。本講座は、昭和43年、内科の専門別化編成に伴い北村和夫教授の主宰でスタートし、その後、冠動脈造影法の草分けである山口洋教授のもと、虚血性心疾患の診断・治療の拠点として発展し、さらに代田浩之教授のもと、幅広い分野の先進的な循環器診療を行う診療科として発展してきました。今後もその伝統を継承しつつ、新しい風を取り入れながら、教室を発展させていきたいと考えています。
実は、私が医学を志した幼少の頃の夢は、家庭医となって地域住民の医療を支えることでした。しかし、大学病院や関連病院での研修・診療、国内外での医学研究、大学における医学部学生や研修医、大学院生に対する教育など様々な経験を経て、より多くの患者さんへの幅広い医療の実践や、新しい診断・治療法の開発に貢献したいと考えるようになりました。その夢を実現させるために、医学部の学生の能力を最大限に伸ばすことによって多くの優秀な人材を育成し、大学病院を中核とした医療を充実させ、革新的な医学研究を行うことによって、日本そして世界の医療に貢献するとともに、新たな医学の知見を世界に発信したいと考えております。
教育について
医学部・大学病院では,高いレベルの一般医療を行うことは勿論ですが、高度な先端医療の開発・実践とその基盤研究が必要となります。そのためには、優秀な循環器専門医の育成は勿論のこと、現在我々が行っている医療の未解決点を解く研究をデザインし、かつ新たな医療の発展に貢献できる「Physician Scientist」「Academic Physician」の育成も必要と考えます。しかしながら現在の研修医は、医療技術の習得のみを目標として、研修をとらえる傾向があります。
私自身は医学部卒業後、大学での内科研修と関連病院で循環器研修・診療を行うことによって、幅広い分野の循環器内科学の医療技術を習得することができました。その過程において、臨床の現場からの問題提起型の医学研究を経験させていただく機会にも恵まれました。以上のような自分自身の経験から、医学部・大学病院と関連病院が一体となり、優秀な循環器内科専門医・「Physician Scientist」「Academic Physician」の育成を行っていくべきであると考えております。
医療において「教科書を読み、ガイドラインをただ記憶し、学んだ医療技術を実践する」ことのみが重要なのではなく、医学部・大学病院で行われているような「教科書やガイドライン作成の根拠となる研究」や「次世代の医療開発」が、いかに社会的に重要であり、やりがいのあることであるかを理解できるような教育を行っていきたいと考えております。
診療について
臨床の高いActivityを維持するためには、やはり「豊富な症例数」と「高度な医療の実践」が重要です。今後、循環器内科では、積極的に救急症例を受け入れ、効率的な検査・治療計画によって短期間の入院で最大限の治療効果を得ることを目指します。一方、緊密な病診・病病連携を構築することで、増悪期の症例を大学病院が受け持ち、慢性期の安定した症例は地域の診療所・病院にお願いするといった、急性から慢性期へシームレスな医療形態の確立を目指します。
循環器内科の領域では、これまで様々なデバイスを用いた先進的な診断・治療法が開発されています。例えば当院でも、虚血性心疾患・不整脈疾患・心不全に対しては、それぞれ、血管形成術・ステント治療、アブレーション治療や植え込み型のデバイスを用いた治療、バルーン肺動脈形成術や経皮的中隔心筋焼灼術、弁膜症に対するカテーテル治療、再生・遺伝子治療や心臓再同期療法、補助人工心臓などが行われますが、最近それぞれの適応症例が増加していることから、大学病院が率先してこれらの治療・診断を実践し、適切な適応判断のもと、その普及に努めていく必要があると考えております。
また、大学病院では、先進の画像診断機器が導入されておりますので、それらを用いた非侵襲的な循環器疾患の診断が可能となっております。今後はこれらの診断方法を大学病院の外来・入院診療だけでなく、広く一般病院の医療の場でも活用していただけるよう、普及に努めたいと考えております。
当院では、心臓血管外科チームとの連携を大切にしており、定期的な内科外科合同カンファレンスの開催はもちろんですが、緊急を要する症例についても密接な連携をとることで速やかな治療を行える体制を確立しています。また、重症心不全に対する治療も積極的に行う方針とし、多職種を巻き込んだハートチームを確立することで、患者教育を含めた心臓リハビリテーションプログラム、デバイスを用いた先進心不全治療や心臓移植、緩和ケアプログラムなどを推進することで、治療レベルの向上や入院期間の短縮をはかってきました。
今後、患者層の超高齢化も予想されることから、これまで以上にハートチームの重要性が増してくることが予想されますので、低侵襲高度医療から緩和ケアに至るまで、キメの細かい医療の提供を行うことで、患者さんに優しい医療を目指して参りたいと考えております。また大学病院の使命として、一般病院では行うことができないような診断・治療法を開発・実践していくことも重要です。このような観点から、心血管系に対する再生治療の実践や次世代の循環器疾患治療としての「抗老化治療」の臨床応用も行なって参りたいと思います。
おわりに
循環器内科の領域では、疾患別に様々なデバイスを用いた特殊な診断・治療が発達してきました。そのため、多くの大学病院の循環器内科では、冠動脈疾患治療を中心としたグループや不整脈治療を中心としたグループ、心不全や画像診断を専門とするグループ、さらには特殊な先進医療を行うグループなどに分かれて診療・研究にあたっていることが少なくありません。このようにグループ別に診療を行うことは、ある分野のエキスパートを育成するためには有効ですが、全人的な医療や患者さんの立場に立った診療を実践するためには、障壁となりかねません。
また研究面においても、それぞれのグループが別々に活動しているようでは、世界に発信できるような新たな知見の発見は困難であろうと考えます。そこで、それぞれのグループが診療・研究に対して「一流を目指す情熱」を持つこと、グループ間の交流を図るようなカンファレンスの機会を多く与えることによって、それぞれのグループの診療・研究をポジティブに評価し合い、互いに協力し合えるようにすること、さらにそのような「協力体制」を、医学部生やコメディカルを巻き込んだ大きなうねりとすることによって、「診療・研究に対する情熱」が教室全体に広がっていくような教室を目指していきたいと思います。
また、活気のある教室を築き運営していくためには、私自身の「医療に対する信念や情熱」を教室員に伝えていくこと、それぞれの教室員の長所を見いだし、彼ら自身が情熱と誇りを持って仕事ができるような環境を整えることが重要であると考えます。さらに、すべての教室員が互いの能力を認め合い、私自身も教室員から多くのことを学んでいけるような循環器内科教室を創っていきたいと思います。
私は、「心血管系の老化と再生」の研究を留学中に開始しましたが、全く評価されることなく帰国したため、医学研究や医療に対する情熱を一時失いかけたことがありました。しかし、地域の関連病院の臨床の現場に戻って、当時「ステント治療が冠動脈疾患の予後を改善しない」などの現実を実感することによって、根本的な循環器疾患治療の開発に向けた情熱を取り戻すことができました。現在、日本の医療の現場では、経済的・社会的背景とも相まって、人間関係が希薄で医学研究や医療に対する情熱を失いかけている医師が増加しているように感じます。そこで、包括的な教育や先進的な医療、革新的な研究を行っていくことによって、多くの学生や研修医、シニア医師が有機的に集う魅力的な循環器内科教室を確立し、地域医療や先進医療、基礎研究などを含めて、自分で進むべき道をしっかり見極め、熱い志を持って邁進できる医師を育成していきたいと考えております。
順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科
南野 徹
患者さんへのご挨拶
循環器内科では心臓や血管の病気以外にも、病気の発症予防を目的とした高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドロームや睡眠時無呼吸症候群など生活習慣や動脈硬化性疾患に関わる疾病の診療をおこなっています。入院施設としては一般病棟のほか9床のCCU(冠動脈疾患集中治療室)を擁し、急性心筋梗塞や心不全、急性大動脈解離などの急性疾患への対応も万全です。患者さん一人ひとりに安全で良質かつ高度な医療を提供できるよう、また、患者さんと患者さんのご家族が安心して快適な療養生活ができる環境、満足していただけるサービスを提供いたします。
外来診療
良質で安全な医療が平等に受けられる権利を尊重し、心のかよった医療が提供できるように心がけています。紹介状がなくても受診可能ですが、資料をお持ちの方は持参してください。また、地域との連携を密にして、医療活動を推進しています。
紹介状を持参して受診される場合には、お掛かりの医療機関より、事前に地域医療連携室にご連絡していただけると、当日の受診がスムーズとなります。
はじめて外来を受診される方へ
当院は「特定機能病院」として厚生労働省から承認された病院のため、原則として他の医療機関からの紹介状(診療情報提供書)または健康診断の結果が必要となります。
初めて当科外来を受診する場合、診察を円滑に行うためにも紹介状をご持参いただきますようご協力をお願いいたします。
詳細につきましては下記リンクをご覧下さい。
セカンドオピニオンを希望されて来院される方へ
セカンドオピニオンとは、患者さんが納得して検査や治療を受けられるように、現在の担当医(主治医)以外の専門医に「意見」または「意見を求める行為」です。受診の際には、担当医(主治医)に診療情報提供書を作成していただいて下さい。資料を参考に、時間をかけて患者さんのお話を伺い、これまでの治療経過や病状の推移を十分に把握した上で、納得いく適切な助言をさせていただきます。
セカンドオピニオンは「診療」ではなく「相談」となり、セカンドオピニオン外来は健康保険給付対象外となります(自費診療)。通常の外来では時間の都合上、このような「相談」の対応は難しいため、ご理解とご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
セカンドオピニオンを希望する患者さんは下記ページをご参照ください。
受付時間
|
午前 |
午後 |
初診 |
8:00 ~ 11:00 |
11:30 ~ 15:00
(土曜日 11:30~14:30) |
再診 |
7:00 ~ 11:00 |
7:00 ~ 15:00
(土曜日 7:00~14:30) |
再診予約の日程変更
ご都合で再診予約日をキャンセル、または日程変更が必要な患者さんは、循環器内科外来にご連絡下さい(電話でのご連絡もお受け致しますが、検査予約の日程変更はお受けできません)。
外来休診日(救急外来を除く)
日曜日、祝・祭日、毎月の第2土曜日、大学創立記念日(5月15日)、年末年始(12月29日~1月3日)
診察時間
※担当医師により異なりますのでご確認ください。
入院診療
当院は高度先端医療に対応できる病院として、厚生労働大臣により特定機能病院として承認されており、"包括医療"という、病名や重症度により最大支払額が決められた医療費の定額払い制度が試行されています。
診療体制
1号館7階に位置する、9床の冠動脈疾患集中治療室(CCU)があるB棟6階と一般床のB棟10階で構成されるハートセンター病棟を中心に入院患者さんの診療を行っています。より多くの入院患者さんに対応するため、7階以外の1号館やB棟の病棟にも入院していただくことがありますが、クリニカルパスを利用して、いずれの病棟でも良質で安全な入院診療が提供できる医療および看護体制が整っています。
当院では、主治医制を実施しております。具体的には、循環器専門医の上級医師が主治医となり、循環器内科担当医とグループ医療体制で診療を行っています。週2回のグループ回診と週1回実施される循環器内科教授回診によって、患者さんの診断や治療方針を確認しています。また、当科の特徴として、CCU入院の急性期治療から一般床での回復期治療そして退院まで、同じ主治医と担当医が一貫して診療にあたります。
主な診療内容
虚血性心疾患の診断と治療
狭心症と心筋梗塞は"虚血性心疾患"と呼ばれ、代表的な循環器疾患であり、当科では年間約1,800人の患者さんの診断と治療にあたっています。最終的な診断は、心臓カテーテル検査で行いますが、運動負荷心電図検査、心臓超音波検査、心臓CT検査や心臓MRI検査、心筋シンチグラムなどを病態に応じて実施し、正確な診断と適切な治療を行います。
治療は、心臓カテーテル治療(経皮的冠動脈治療)や冠動脈バイパス術のほか、薬物療法、食事療法や運動療法など積極的な生活指導による包括的治療が行われます。
心臓カテーテル検査および治療(経皮的冠動脈治療)
狭心症が積極的に疑われる場合には、入院で心臓カテーテル検査を施行し、的確な診断と治療を行います。腎臓病や高齢の患者さんに対しては、できる限り負担が少なるよう工夫しています。
冠動脈バイパス術の適応がある場合には、当院の心臓血管外科外来に紹介いたします。ハートセンターのチーム医療として、緊密に連携して迅速な対応を取っています。
虚血性心疾患に対する心臓カテーテル検査以外にも、原因不明の心筋障害を認める患者さんに対する心筋生検や、肺高血圧症の患者さんに対する右心カテーテル検査なども実施しています。
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)
近年、喫煙習慣や生活習慣の欧米化に伴い"末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)" が、日本においても増加していますが、当科では積極的にカテーテル治療を実施しています。カテーテル治療により、長時間歩けない、安静でも痺れ・痛みがある、などの自覚症状がある患者さんの生活の質が改善します。薬物療法や運動療法なども組み合わせて実施することで、より治療効果があがります。"末梢動脈疾患"は
心臓リハビリテーションによる運動療法の保険適応疾患です。
ペースメーカー治療
目眩や失神などをおこす徐脈性不整脈(脈拍が異常に遅くなる)に対しては、ペースメーカー植え込み手術を行っております。
カテーテルアブレーション治療
動悸や失神などをおこす頻脈性不整脈(脈拍が異常に速くなる)に対する根本治療として、カテーテルアブレーション治療を積極的に行っています。不整脈の原因部位(発生源)を突き止め、カテーテル先端から高周波電流を流して焼灼することで、不整脈の発生源を根絶治療します。
除細動器植え込み治療・心臓再同期療法[CRT](両室ペーシング治療)
突然死の原因となる致死性の不整脈(心室粗動、心室細動)に対して植え込み型徐細動器(ICD)の植え込み手術を行います。また、難治性の慢性心不全に対して適応を十分考慮した上で、心臓再同期療法[CRT](両室ペーシング治療)を行います。
心臓リハビリテーション療法
狭心症、心筋梗塞、慢性心不全、大血管術後や開心術後、末梢動脈疾患と診断された患者さんを対象として、専門スタッフのもとで心臓リハビリテーションを行い、患者さんのQOL向上を図ります。
慢性心不全
難治性の慢性心不全には、β遮断薬療法、心臓再同期療法[CRT](両室ペーシング治療)、外科的治療など多角的に改善策を検討します。また、温熱療法などの心臓リハビリテーションも積極的に行っています。
睡眠時無呼吸症候群
眠っている間に繰り返し息が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群は、日中傾眠を起こすだけでなく、高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞や糖尿病などさまざまな合併症を引き起こす危険な病気であることが分かってきており、早期発見、治療が大切です。終夜睡眠ポリグラフィーなどを行い、生活習慣の改善の必要性や経鼻的持続陽圧呼吸法(CPAP)の適応を検討します。
ご不明な点は・・・
何かご不明な点やご相談等がございましたら、主治医または担当医、病棟医長が相談を受付けております。ご遠慮なくお申し出ください。