凍結治療とは
日本では2011年7月より小径腎細胞がんに対する凍結療法が保険収載となり、全国的に凍結療法を行う施設が増えてきており、当科でも泌尿器科と協力して2017年より凍結療法を行っています。
腎細胞がんは腎臓に発生する悪性腫瘍です。この腫瘍に対して体の表面からニードル(針)を刺し、直接的に腫瘍を凍結させ、死滅させる方法が凍結療法になります。
一般的にはおよそ4㎝以下の腎細胞がんが適応となります。
治療法の選択
凍結療法を行うにあたり治療の適応があるかを判断する必要があります。
- 腎細胞がんが多発する疾患(von Hipple Lindau病)
- 既に片側の腎臓を何らかの理由で摘出している方
- 腎機能が低下しており、なるべく腎機能を温存したい方
- 合併疾患や全身状態により全身麻酔に耐えられない方
などがよい適応となります。
また腫瘍の場所も各々の治療において大事な判断材料となり、術前のMRIやCT検査が重要となってきます。
このほかにもリンパ節や肺・肝臓などに遠隔転移を生じている場合などにも治療方法は変わってきます。詳細については外来担当医にお尋ねください。
当院ではMRIガイド下に治療を行っていきます。MRI検査自体を行えない場合には当院での治療は行えません。ただし、MRIではなく、CTガイド下に凍結治療を行っている施設もありますのでかかりつけの病院でお尋ねください。
治療方法、手順
当院では超音波およびMRIを使用し凍結療法を行っています。
手術と違い、全身麻酔は行わず、局所麻酔下に治療します(実際には少し気分を落ち着かせたり、眠くなるような鎮静薬を使用しますが、声をかけると返事ができる程度の鎮静下に行っていきます)。
まず、手術室でうつぶせまたは横向きで超音波を行い腫瘍がどのような性質なのか、本当に悪性病変なのかを判断するために、針を用いて組織を一部採取します。
これに引き続き凍結療法の針を刺します。この針の内部にアルゴンガスやヘリウムガスを流すことで針を凍結させたり解凍したりすることができます。
使用する針は病変のサイズや位置によって異なりますが1~3本程度、採血に使用する針よりは太いですが局所麻酔を充分に行いますので一般的に痛みは軽度です。
治療効果と有用性
凍結療法と比較されるものに手術とラジオ波による焼灼術が挙げられます。
施設や対象となる患者・病変の適応・選択などにより成績は異なってきますが、手術との比較では局所再発率はやや高い傾向があります。入院期間が凍結療法の方が短いことや体への侵襲が少なく済むなどの点から、どちらの選択がより個々の患者さんに適しているかが治療法選択のポイントになってきます。
ラジオ波による焼灼治療も有効な治療法ですが、凍結療法の方がより即効性があり、治療効果が持続するといわれています。ただし、再発率に関しては凍結療法が劣るというデータがあります。
病変が残存した場合や再発した場合、ラジオ波や凍結療法は再度治療することも可能です。
以上から、可能な限り腎臓を温存する場合に、再発リスクを考えたうえでこれらの治療を選択します。
副反応、合併症
- 穿刺の際の疼痛や軽度の発熱(比較的多くみられます。)
- 腎周囲血腫
- 感染、膿瘍形成
- 徐脈、迷走神経反射
- 呼吸困難感
- イレウス、腸管穿孔
- 尿瘤、血尿、尿管損傷
- 病変の再発や残存
- 血管損傷
- 皮膚や皮下の凍結、凍傷
- その他
副反応が生じた場合は、その都度対応致します。
治療後
治療が終わって、病室に戻った後、2~4時間程度は穿刺部を圧迫しながらベッド上で安静にしていただきます。この後は病棟内を歩いたりトイレに行くことは可能となります。
翌朝に造影剤を使用しない単純CT検査を施行し、治療部位に大きな血腫がないか、他の合併症が生じていないか確認します。
問題なければ治療から2~3日程度で退院となります。
退院後のfollowは造影CTまたは造影MRIを行うことが多く、再発や転移が出現していないかチェックします。
凍結療法の今後
現在、保険適応となっているのは小径腎細胞がんに限定されていますが、治療法自体は様々な部位や種々の腫瘍にも行われています。具体的には肺や乳腺病変、骨軟部病変、肝病変などにも行っている施設があります。また、子宮筋腫や異所性内膜症のような良性疾患にも適応となる場合があります。ただし、これらは現時点では自費診療となり、治験などにより適応の拡大が望まれています。
当科受診をご希望の患者さんは、
毎週月曜日午後(13時~)放射線科 桑鶴良平の外来に電話予約後、
紹介状を持参の上、ご来院ください。。本治療の詳細について具体的にご説明いたします。