relapsing polychondritis, RP
疾患概念・病態
再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis, 以下RP)は耳介、鼻梁、咽頭、気管、気管支などの軟骨に反復する炎症を起こし、進行性の破壊を来す難治性疾患である。Ⅱ型コラーゲンなど細胞外マトリクスに対する自己免疫反応性が見られ、発症への関与が示唆される。
疫学
40代、50代に多く性差はないとの報告が多い。
RPは1/3に全身性血管炎やほかの自己免疫性疾患、骨髄異形成症候群など血液疾患、悪性腫瘍などを合併する。
診断・鑑別診断
耳介の反復炎症があり、関節・気道・眼症状があればRPを疑う。通常は症状より診断が可能である(
表1)。[1]
治療方針決定のため、呼吸機能や心臓超音波検査な気道の閉塞性病変や弁膜症の有無を検索する。
臨床症状
耳介軟骨炎は最も高頻度である。急性・亜急性で多くは両側性であり、1週間程度で軽快するが反復し、次第に外耳軟骨は軟化・下垂する。難聴やめまいを伴うことがある。鼻軟骨炎の反復により鞍鼻を来す。
気道の軟骨炎により嗄声、咳嗽、喘鳴が見られ、甲状軟骨の圧痛、乾性ラ音が見られる。気管・気管支が虚脱により気道閉塞を来すと、生命・機能的予後は不良となる。
多関節炎は耳介病変に次いで多く、移動性、非対称性で骨破壊は認めない。
強膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎などの眼病変がしばしば見られる。
口腔内アフタ、結節性紅斑、皮膚血管炎、脂肪織炎などの皮膚粘膜症状、大動脈炎、大動脈弁閉鎖不全、心外膜炎などの心血管病変、まれに糸球体腎炎や中枢神経症状がみられることがある。
検査所見
非特異的炎症所見のみで、特異的な検査所見はない。抗核抗体はしばしば陽性で、リウマトイド因子も陽性のことがある。
抗Ⅱ型コラーゲン抗体の陽性率は20~50%であるが特異性は低く、一般には測定されていない。
疾患活動性の評価のため、RPDAI (The Relapsing Polychondritis Disease Activity Index)が用いられる。 [2]
治療
希少疾患であり、エビデンスがある治療法はない。局所の炎症、疼痛には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いる。副腎皮質ステロイドが症状に応じて様々な用量で用いられる(
表2)。
特に臓器病変を有する場合に、免疫抑制薬(シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリンなど)の併用投与がおこなわれる。関節症状にはメトトレキサートが選択される。TNF阻害薬の効果が報告されている。気管の虚脱を認める場合、ステント留置が必要になることがある。
2016年、Mathianらの研究グループがRPの治療を新たに提唱した。これにおいても、副腎皮質ステロイドが第一選択である[3]。副腎皮質ステロイド抵抗性を示した場合、鼻、眼、もしくは気管病変が主体であればメトトレキサートが選択される。メトトレキサートにも抵抗性を示した場合、アザチオプリンもしくはミコフェノール酸モフェチルを選択する。シクロスポリンはほかの免疫抑制薬が無効な場合、腎障害に留意した上で使用するとされる。壊死性強膜炎、重度の喉頭気管病変、大動脈病変などを合併する場合はシクロホスファミドを選択する。
予後
予後は重症度により異なる。
1986年の112例の報告では、診断からの平均生存期間は11年であり、5年、10年生存率はそれぞれ74%、55%であった。[4]1998年には、合併症管理技術の向上により8年生存率が94%まで上昇したと報告されている。[5]
表1
- 両側性の耳介軟骨炎
- 非びらん性多発関節炎
- 鼻軟骨炎
- 芽の炎症性病変; 結膜炎、角膜炎、(上)強膜炎、ブドウ膜炎
- 気管軟骨炎(気管、咽頭軟骨炎)
- 蝸牛、前庭機能障害(感音性難聴、耳鳴・眩暈)
上記3項目以上満たせばRPと診断する。
他の自己免疫性疾患、血液疾患をしばしば合併。 [1]
表2
耳介軟骨炎
鼻軟骨炎
関節炎 | NSAIDs
Prednisolone(PSL) 0.5mg/kg/日以下
難治性関節炎: methotrexate(MTX) |
眼病変 | 軽症: ステロイド点眼
重症: ステロイド中~大量(PSL 0.5~1/0mg/kg/日)+免疫抑制薬 |
下気道病変
心血管病変
腎炎 | ステロイド大量(PSL1.0~1.5mg/kg/日, パルス療法)
+cyclophosphamide or azathioprine or cyclosporine
+ 生物学的製剤(TNF阻害薬など) |
Reference
- McAdam, L.P., et al., Relapsing polychondritis: prospective study of 23 patients and a review of the literature. Medicine (Baltimore), 1976. 55(3): p. 193-215.
- Arnaud, L., et al., The Relapsing Polychondritis Disease Activity Index: development of a disease activity score for relapsing polychon+dritis. Autoimmun Rev, 2012. 12(2): p. 204-9.
- Mathian, A., et al., Relapsing polychondritis: A 2016 update on clinical features, diagnostic tools, treatment and biological drug use. Best Pract Res Clin Rheumatol, 2016.30(2): p. 316-333.
- Michet, C.J., Jr., et al., Relapsing polychondritis. Survival and predictive role of early disease manifestations. Ann Intern Med, 1986. 104(1): p. 74-8.
- Trentham, D.E. and C.H. Le, Relapsing polychondritis. Ann Intern Med, 1998. 129(2): p. 114-22.
参考文献
『リウマチ・膠原病内科診療マニュアル』(2013)髙崎芳成、安倍千之、田村直人編
更新日:2020年9月5日