患者さんへご挨拶
順天堂医院てんかんセンターは、2013年、新井一(現順天堂大学学長、脳神経外科前主任教授)をセンター長として、脳神経外科、脳神経内科、小児科、メンタルクリニック科、放射線科から構成される組織として発足しました。2018年からは菅野秀宣(脳神経外科前先任准教授)、2023年からは近藤聡英(脳神経外科教授)がセンター長として継続、活動をしております。当てんかんセンターの活動の中心は、てんかんを持つ人への包括的治療と社会生活の支援および研究活動です。てんかん診療に最も重要になるのは適切な診断です。てんかんは発作を繰り返す病気ですが、診察室で発作をみる事は非常に稀であり、患者さんおよび患者さんご家族より丁寧な問診が必要になります。種々の検査手法が新しくなっても、最も重要なことは患者さんのお話を聞く事だと考えております。
非常に残念な事ですが、てんかんを持つ人は学生生活や社会生活で様々な偏見を持たれたり、差別を受けてしまったりすることもあるでしょう。ご本人やご家族だけでなく、学校の先生や会社の方などへ、てんかんという病気の理解と症状への配慮に対してご説明することも我々の使命です。適切な治療により、多くのてんかん発作は抑制させる事が可能になってきています。患者さん個々に対して、最良の治療で効果をだしたいと思っています。自動車運転の問題、てんかんを持つ女性の妊娠の問題、就労の問題、知的または精神症状に対しての問題など、解決すべき問題点は沢山あります。患者さんそれぞれの心配事を相談していただければ、センター員で協力し解決方法をみつけていきます。
我々、てんかんセンターに求められるもののもう一つは研究活動だと考えています。基礎研究や臨床研究を行う事で、近い将来、患者さんへフィードバックがなされるものと信じています。有効な検査方法の開発、副作用や合併症のない治療法の探求、脳機能を解明し改善させる方法など、我々が行わなくてはならない研究が多々あります。若く優秀な医師や医療従事者を教育することも我々の責務です。
東京都心に位置するてんかんセンターはどうあるべきかを常に考え、てんかんへの包括的なケアを心掛けます。分からないことがあれば、躊躇することなく、スタッフにお聞きになってください。
順天堂医院てんかんセンター(順天堂てんかんセンター)
センター長 近藤 聡英
センター概要
てんかんにまつわる種々の社会問題が昨今取り沙汰されており、適切なてんかん治療に対する社会的需要が高まっております。てんかんを有し、治療が必要な患者数は人口の0.5から1% にあたるとされます。また、てんかんは小児から高齢者に至る広い年齢層に分布することや、付随する神経症状のために単一診療科での診療が困難であると言われています。近年、てんかん診療の合理的有効化のため診療科連携および病診連携の必要性が唱えられております。
そこで、順天堂大学では、2013年6月より、脳神経外科、脳神経内科、小児科、メンタルクリニック科、放射線科より成る、"てんかんセンター"を設立し、単科では治療が困難であった例に対し、より緻密な治療を行える体制をつくりました。また、順天堂大学医学部付属順天堂医院(本院)だけでなく、順天堂静岡病院、順天堂越谷病院、順天堂浦安病院、順天堂練馬病院、順天堂東京江東高齢者医療センターを二次施設として連携を取り合い、正確で現実的な診療を目指します。
現在、順天堂大学脳神経外科および小児科は、日本てんかん学会の定める"てんかん教育施設"に認定されており、てんかん診療のみならず、若手医師の教育にも力を入れ、より多くの専門医の育成を目指しております。
診療の目標
発作の抑制、社会生活への適応、発達の促進
てんかん治療というと、発作を止めることに集中しがちです。発作消失率は、患者さんのみでなく、医療者側でも注目する項目です。
しかしながら、私たちは発作を止めるだけではなく、いかに社会に適応していくかに注目すべきだと考えます。
すなわち、成人では就労や出産を可能にしていくこと、小児では精神運動発達を促すことを目指しております。
福祉
多くの場合、てんかん治療は長期に及びます。そのため、医療費補助、支援団体(患者会、就労のための会など)の活動が必要です。福祉の情報についても医療側より紹介する必要があると考えております。