講演:「がん骨転移の診療」

質疑応答

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Q1 発症原因と認められる遺伝子は特定されていますか。また、治療方法はありますか。
骨転移の発症原因とされている遺伝子などは、現時点ではないと思います。乳がんなど一部のがんで、骨転移が比較的多いタイプなどはありますが、遺伝子特性などは認めていません。なので、遺伝子治療もありません。。
Q2 骨転移の自覚症状はあるのでしょうか。
画像のみで見つかって、まだ症状をきたしていない骨転移も、かなり多く認めます。自覚症状が出てきたときは、それなりに骨折や麻痺がある程度迫ってきていると考えた方がいいでしょう。骨転移をきたしやすいのが脊椎や骨盤、四肢の近位なので、項部痛、肩痛、上肢の痛みや、肩こりに近い症状、背部痛、側胸部痛(肋間神経痛のような症状)、側腹部痛、胸部や腹部に帯状の痛みやしびれ、締め付けられるような感じ、鼠径部から大腿の痛みやしびれ、臀部から坐骨神経痛のような下肢の背側から外側に至る痛みやしびれ、などです。これらは講演でも述べましたが、通常の脊椎の変性に伴う痛みに類似します。頑固な痛みしびれには注意が必要ですし、とくにがんの既往がある方、治療中の方は骨転移を疑って、早めの受診をお勧めします。
Q3 現在、癌の治療は終わっており、もし骨転移があった場合、どのようにして発見できるのでしょうか。
Q2のような自覚症状には、もちろん注意が必要です。定期的に画像検査をしていれば、それで見つかるときもありますが、画像で見えにくい場合もあります。定期的な血液検査で腫瘍マーカーが上昇して見つかる場合もあります。いずれにしても症状が強い場合には、強く疑って、精査をしっかりしていただくことが重要です。自分の身を守るのは自分のつもりで、医療者にもよくご相談ください。
Q4 骨転移の前兆は、どういう風に表れますか?
Q2と3もご参照ください。ただ、何となく違和感程度から、比較的急速に痛みやしびれが強くなってきた場合は、とくに注意です。少しずつ頑固な症状が出ることもあります。検査で腫瘍マーカー上昇、画像検査での異常など、様々です。
Q5 原因、治療法は?
直接骨転移がなぜ起きるか、原因は不明です。いわゆる血行性の転移の一つとして、肺転移や肝転移と同様に起きるとされています。治療法は講演でも述べましたが、通常の全身に対する抗がん剤から、骨修飾薬投与、疼痛には麻薬を含む鎮痛剤、局所的な治療として放射線治療、外科的治療(手術)、画像下治療(Interventional Radiology,以下IVR)などがあり、装具療法や環境整備を含んだリハビリテーション治療も重要です。
Q6 骨転移が起きやすい部位はどこですか? 
好発部位は脊椎、骨盤、四肢骨の近位です。
Q7 がん骨転移の予防、早期発見への工夫や対応はありますか?毎回全てを検査することも難しいと思うので。
残念ながら、骨転移に特化した予防法がありません。早期発見は、画像の異常指摘や腫瘍マーカー上昇ですが、とくに肺がん、乳がん、前立腺がんの方は骨転移が多いので、注意が必要です。レントゲンやCTで分からない骨転移もあります。疑わしい部位のMRIやPET-CTなども検討してもらうといいかもしれません。
Q8 強い腰痛などで骨転移が先に見つかった時、原発がんを探す最初の方法は?
どのような契機で見つかったかにもよりますが、各種腫瘍マーカーと腎機能が悪くなければ首から骨盤まで含む造影CT、明らかに骨破壊がある場合などは、がんと診断名を付けてPET-CTも原発検索に有効と思われます。また、1か所のみの病変の場合や、原発が画像で不明瞭な場合などは、骨から組織を取る検査も必要になることがあります。
Q9 抗がん剤治療により骨転移が消失することは可能ですか。
一部の分子標的薬や、ホルモン治療、免疫チェックポイント阻害剤が長期にわたって著効している場合、画像上骨転移が正常になったように見えることはあります。また、骨転移の治療をして10年以上経過しても、まったくがんが活動していないように見える患者さんもいます。ただ、一般的には非常にまれで、それを期待されることは厳しいかと思います。
Q10 がん骨転移のメカニズム、転移の抑制等についても解説いただければと考えています。
詳しいメカニズムについては、ここでの解説は困難ですが、がん細胞が破骨細胞という骨を壊す細胞に命令して骨を少しずつ恐し、そこにがん細胞がついて骨転移が進行する、という感じです。なので、骨修飾薬投与が骨転移の進行抑制の補助になりますが、骨転移の抑制という意味が、予防ということであれば難しいです。骨転移の進行の抑制は治療と一緒なので、Q5をご参照ください。
Q11 症状にもよることは理解しつつも、宣告受けた際、生存率はどれくらいと受け止めておけばよいか、頭に入れておきたく、教えてください。
がんの種類によっても全く異なるし、骨転移が出てくる時期も、最初から骨転移で発見される方もいれば、終末期近くに骨転移が出てくる方もいます。なので、骨転移が発症してから何年というのは、個人個人には全く当てはまらないとお考え下さい。講演で述べたのは、乳がんや前立腺がんでは、骨転移発症後の5年生存率が50%程度。ただ、これも骨転移発症の時期によって異なるので、あくまで全体としてのイメージです。個人個人の骨転移発症後の予後については、その時の状況によってかなり異なります。
Q12 どういうときゾメドロン酸を使うのでしょうか? すべての骨転移でしょうか?
骨転移が発症したら、歯科の問題ないこと、血清カルシウムが低くないことなどを確認してから、ゾレドロン酸やデノスマブなどの骨修飾薬投与を検討します。病的骨折や脊髄損傷、放射線治療や手術などのイベント(骨関連事象、といいます)を減らすことにつながります。ただ、骨転移が2-3か所小さいもののみで、あまり変化が無かったり、乳がんや前立腺がんで全身治療が非常に奏効していたり、歯の問題がひどい、血清カルシウムがかなり低いなど、様々な状況で投与されないこともあり得ます。
Q13 痛みの対応について
痛み止めは、一般的なアセトアミノフェン、ロキソニンやセレコックスなどの解熱消炎鎮痛剤から麻薬まで、さまざまなものを経口投与します。場合によっては点滴や貼付剤、皮下注射なども使用します。骨転移の痛みは、動作時に強くなるので、強い動作時の痛みには、薬剤だけでは厳しいこともあります。放射線治療が最も骨転移の疼痛に対しての局所治療では行われますが、IVRや外科的治療(手術)も骨転移の具合によって検討されます。また、装具を含んだリハビリテーション治療では、どのように動いたらリスクが減るか、疼痛が減るかを考えつつ動作を検討します。
Q14 骨に転移すると、痛みは強くなるのですか? 自宅療養しながら痛み止めでうまく調整できますか
痛みの対処についてはQ13をご参照ください。骨転移による骨破壊が進んだ場合や、神経の圧迫が強くなると、耐え難い痛みが出てくることがあります。病的骨折や脊椎転移による椎体破壊や脊髄・神経根の圧迫などでも大変強い痛みが起こりえます。
自宅療養しながら、鎮痛剤投与や動作の工夫、環境整備などである程度は対処できますが、講演でも述べましたが、骨折や麻痺がおこりそうな痛みの場合、まだ動けるのであれば、自宅療養でも放射線治療や外科的治療(手術)について検討されてもいいかと思います。もちろんその時様々な状況に寄るかと思いますので、個々についてはご相談になると思います。
Q15 痛みのコントロールについての最新治療がありましたら、教えていただきたい
骨転移の治療、痛みについては、いままでのQでの回答をご参照ください。比較的新しい疼痛コントロールとして、IVRによる塞栓術や、ラジオ波焼灼、骨セメント充填など、骨転移の場所や具合によっては検討される治療法がありますが、その施設で行われているかどうかも含めて、難しい場合もあります。
Q16 緑茶や豆科の植物、リコピンは効果がありますか?
骨転移に奏効するという明確な証拠は、見つかっていません。
Q17 骨を硬くする方法はないのか?
骨転移による骨破壊の抑制は、全身治療が奏効した場合や、骨修飾薬投与でサポートが可能です。また、放射線治療が奏効した場合も、かなり骨がしっかりとしてくる場合があります。ただ、もともとの骨強度に戻すことは困難なので、骨折しそうな場合など緊急に補強するためには、外科的治療(手術)が必要なこともあります。
Q18 骨転移に対するラジオ波焼灼療法の有効性
骨転移に対するIVRは、塞栓術やラジオ波焼灼、最近では凍結療法などもあります。ラジオ波焼灼は肝細胞癌で主に行われていますが、骨転移に対しても保険診療で可能です。
骨盤や肋骨、場合よっては腰椎などでもとくに骨破壊が強い場合、骨の外に腫瘤を形成している場合など、ラジオ波焼灼が鎮痛に有効なことがあります。ただ、骨転移に対するラジオ波焼灼は、可能な施設がまだ限られており、どこでもできる治療ではありません。
Q19 重粒子線治療は効きますでしょうか?
もともとの骨原発性腫瘍を重粒子線で治療している場合などは、その原発腫瘍からの骨転移を重粒子線で治療することはあります。ただ、一般的には重粒子線は通常の骨転移にはエネルギーが強すぎて、いい治療とは言えません。通常のX線の外照射が圧倒的に多いですが、SBRTと言って脊髄をよけて脊椎の骨転移病巣のみを照射する技術があり、保険診療で可能です。ただし、どのような骨転移に適応か、お勧めとなるのかなどは、かなり専門的になるので、医療者とよくご相談ください。
Q20 骨転移の際のコンクリート?等の骨の固定化?の対応について
骨セメント充填のことかと思います。脊椎転移の椎体圧潰や、一部の骨盤転移などにIVRの技術で骨セメントを充填すると、疼痛が劇的にとれることがあります。ただ、どのような骨転移にこの手技を行うかについては、まだ議論があり、適応については不明瞭な部分が残っています。