講演:「乳がん治療最前線」

今回の市民公開講座の動画ですが、演者の先生と相談し、著作権等の観点から公開を見合わすことといたしました。
ご了承いただけますようお願い申し上げます。

質疑応答

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乳がんの再発について教えてほしい。
がんは発生したら、その場で大きくなるとともに転移を起こして広がっていきます。がんが局所で留まっている場合は、局所治療(手術や放射線など)で対処できますが、目に見えないぐらい小さな病変がすでに広がっていると、そこから時間をかけて増大し、後年画像で分かるようになった時点で再発をしたとわかるようになります。
手術をした時点では、目に見えないぐらいに小さいため、腫瘍が残存しているか否かわかりません。乳がんにおいて、手術前や手術後に抗がん剤などの全身治療を行うのは、このような再発リスクを少しでも下げるために行われています。
詳細については、患者さん向け乳癌診療ガイドラインもご参照ください。
乳がんは骨転移しやすいと思うが腫瘍マーカーでは判断が難しいため、骨シンチ以外で気づく方法があるのか教えてほしい。
また、治験や保険外適用、研究段階でも構わないので、骨転移した場合の最新治療法があれば教えてほしい。
早期発見についてですが、基本的には症状が出てから検査が一般的です。原発巣の乳がんが持っている遺伝子変異を血液中で検出するリキッドバイオプシーと呼ばれる技術も開発中ではありますが、これはあくまでも現時点においては研究段階の技術です。
骨転移の治療は通常の他の場所への転移と同様に、一般的には薬物療法が行われます。他の臓器への転移と比べたときの骨転移特有の問題点としては、転移した部位の痛みや転移した場所の骨折(病的骨折)が挙げられ、痛みを緩和するために放射線療法や、骨を強くするための骨修飾薬という薬剤の投与も行われます。
運動が必要と聞きますが、どの程度の負荷が必要なのか教えてほしい。
体に負担のない程度に、術後であれば水泳とかは関節可動域を維持するためによいかもしれません。
ホルモン療法の内服期間について、5年以上の内服継続を勧めたい患者の場合の特徴があれば教えてほしい。
乳がんでの特殊型の場合には、治療はどのように考慮しているのか、特殊型であることを念頭に置いての治療選択になるのか教えてほしい。
再発リスクが高いと判断された症例(例えばリンパ節転移が多かったとか、核異型度など)では考慮されます。また近年このような症例では、ホルモン療法に加えて、経口の抗がん剤や分子標的薬剤を併用することもあります。
乳がんの治療中や治療後に更年期症状が強い場合、サプリメントのエクエルは摂取しても大丈夫か教えてほしい。
やめた方がいいという先生、摂取量を守っていれば大丈夫という先生どちらもいらっしゃいます。
どちらかというと積極的には勧めません。乳がん患者さんを対象としてエクエルを摂取した場合と、摂取しなかった場合に無作為に分けて、どのような結果になったのかを比較検討した研究は行われていないためです。また、食品由来だからと言っても特定成分の過剰摂取が薬剤の代謝排泄に影響を与えることが知られているものもありますので、治療中の薬剤の効果を打ち消したり、思わぬ副作用が出たりする可能性もあり得ます。
乳がんと診断されたが、これから日常生活を送る上で(例えば、食事や運動、温泉や旅行などに関して)気をつけるべきことがあれば教えてほしい。
個々の患者さんの病気の進行度や、行う、または行われている、またはすでに行った治療の違いもあり、一概には言えませんので、是非患者さん向けのガイドラインもご参照ください。
乳がん手術後の症状と治療方法を教えてほしい。
上記と同じで、個々の患者さんの病気の進行度や、行う、または行われている、またはすでに行った治療の違いもあり、一概には言えませんので、是非患者さん向けのガイドラインもご参照ください。
ジーラスタボディポットやフェスゴの皮下注には、どのような副作用があるのか教えてほしい。
ジーラスタボディポットはジーラスタと成分が同一ですので同じ副作用はあります。またボディーポットは機械の不具合が出る可能性があります。フェスゴに関してはパージェタおよびハーセプチンの静注製剤との比較試験が行われていますが、下痢などの副作用はほぼ同等ですが、投与方法の特徴上、注射部位の硬結等があると思います。
ラジオ波焼灼術は同乳房再発時(初回治療で部分切除+放射線済)に適応するのか教えてほしい。適応されないケースがあれば教えほしい。
原発性乳癌で1.5cm以下、浸潤性乳管癌という診断、単発、照射必須、3か月後の生検も必須です。
ラジオ波焼灼術は入院が必要でなのか、治療日数と費用を教えてほしい。
部分切除と同じぐらいの入院は必要、治療は1回のみ、費用は部分切除よりは安いです。
ラジオ波焼灼術はメスで行う手術とは違い直接がんが見えないと思うのですが、取り残しはないのかデメリットがあれば教えてほしい。
取り残しの可能性はありますので、3か月後に生検することが必須となっています。また熱傷の後遺症の可能性もあります。
1番伝えたいスライド1枚の答えを教えてほしい。
患者さん向け乳癌診療ガイドラインを紹介した1枚です。乳がんはいろいろなタイプがあり、治療法も患者さんによって変わってきます。今回は一般的なお話をさせていただきましたが、主治医の先生の進める検査・治療について、是非患者さん向け乳癌診療ガイドラインもご一読いただき、納得のいく診療を受けていただければと思います。