講演:「免疫チェックポイント阻害剤を用いた肺がんの治療について」

質疑応答

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がんを増殖させないために日常から気を付けると良いことを教えてほしい。
禁煙: 喫煙はがんの主要な原因であり、喫煙により治療経過が悪化することが知られています。
健康的な食生活: 新鮮でバランスの取れた食事が重要です。野菜、果物、穀物、健康的な脂肪を摂取し、加工食品や過剰な赤肉の摂取を控えましょう。
適度な運動: 定期的な運動はがんによる体力低下を予防する可能性があります。適度な有酸素運動や筋力維持を目指しましょう。
ストレス管理: 長期間にわたるストレスは免疫機能を低下させ、がん細胞を増加させる可能性があります。リラックス技術や趣味を取り入れてストレスを軽減しましょう。
投与開始後、副作用が出始める時期と、投与後いつまで副作用の心配があるのか教えてほしい。
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こちらにお示ししますように、免疫関連の有害事象は数日という早期に出現する場合もあれば2年以上経過してから出現する場合もあります。投与終了後も1年間くらいは、免疫療法関連の副作用に注意が必要と言われています。
免疫チェックポイント阻害剤は肺がん患者全員に使用出来るのか教えてほしい。
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こちらは日本肺癌学会の診療ガイドラインからの引用ですが、進行期の非小細胞肺がんには、全身状態や年齢、合併症などをふまえた上で使用が考慮されるものと思います。しかしながら、EGFRやALKといったドライバー遺伝子変異がある場合は、免疫チェックポイント阻害薬の効果が比較的乏しく、PD-L1の染色性=TPS (tumor proportion score)の数値により、免疫チェックポイント阻害薬の効果が異なりますので、主治医の先生と適応をご相談下さい。
また、化学放射線療法後、手術の前後、進展型の小細胞肺がんにも使用されるようになってきていますので、使用に関しては、やはり、主治医の先生とご相談下さい。
何年効くかは個人によると認識していますが、それを左右する環境因子はあるのか教えてほしい。また、なぜ減量は出来ても増量することは出来ないのか教えてほしい。
免疫療法に関して、治療効果を明らかに延長させるような環境因子は今のところ知られていません。
がんに対する薬剤を開発する臨床試験・治験では、一度減量をした場合、再増量が許容されないことが多いです。そのため、原則として、がんに対する薬剤の減量後、再増量は行わないことが多いです。
免疫チェックポイント阻害剤の効果の有効期間はどのくらいか教えてほしい。。
これまでの臨床試験の結果をふまえますと、効果の持続時間は1年程度とされていますが、個々の患者さんによって、異なる点もありますので、主治医の先生とご相談下さい。
免疫チェックポイント阻害剤のみで、肺がんが完治した症例はあるのか教えてほしい。
診断時進行期の非小細胞肺がんと診断された患者さんでも、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受け、5年以上病気が進行せず落ち着いている患者さんが一定数います。ただし、このような状態の方が完治したと言えるのかは、もう少し長い期間様子を見ていかなければならないと思います。
オプジーボとヤーボイとの併用効果と副作用について教えてほしい。
オプジーボとヤーボイの併用療法は、EGFRやALKなどのドライバー遺伝子変異が陰性の進行非小細胞肺がんに対する治療の選択肢の一つとなっています。どの患者さんにとって有効で安全と考えられるかは個々の患者さんの背景により異なりますので、主治医の先生とご相談ください。
腫瘍マーカーの信頼度について教えてほしい。
腫瘍マーカーは、偽陰性や偽陽性となることが知られています。そのため、肺がんのスクリーニング、健診目的での使用は推奨されていません。
一方で、CYFRA、CEA、SLX、SCC、ProGRP、NSEなどの腫瘍マーカーは、肺がんの患者さんで上昇することがあります。薬物療法の治療効果判定に補助的に用いられることがありますが、薬物療法の治療効果判定の指標はCTやMRIなどの画像評価とされています。
患者さんの状況により、腫瘍マーカーの使われ方、信頼度は異なりますので、やはり主治医の先生とご相談ください。
肺は2つあると思いますが、がんが出来た肺を手術で取れば治療は終わったという事になるのか、がんは治ったことになるのか教えてほしい。
肺がんを手術で取り切った場合でも、CTやMRIなどの画像や目に見えないレベルで、すでにがん細胞が肺以外の臓器に転移していることがあります。そのため、経過観察中に再発してしまうことがあります。これに対して、再発予防のために、病気の種類や進行度(病期)に応じ、手術後に薬物療法が勧めれることがあります。
一生涯のうち繰り返し治療はできるのか、再発した場合でも再度免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療ができるのか教えてほしい(もし保険診療上の制限があったとしてもそれは考慮しない)。
詳細な状況がわかりませんので、明確なお答えはできませんが、再発した場合でも、免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療を行うことは考慮されえます。個々の状況によって、その適応は異なりますので、主治医の先生と相談の上、治療を決めていくことになると思います。
免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療と放射線治療、仮に両方受けるとしたらどちらを先にするのが望ましいか教えてほしい。
病気の種類や進行度に応じて、どちらを先にするべきかは異なります。必ずしもどちらかを先にした方が良いとは言えませんので、個々の患者さんの状況に応じて、判断されると思います。