講演:「胃がん ~見つけるために行うこと、見つかってから行うこと~」

質疑応答

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80才女性2年前より食事が詰まります。逆流性裂孔ヘルニア治療薬服用、詰まった時は、胃腸の痛みと胸痛が酷く動けません。対処方法はありますか。
内視鏡検査はすでに行われたと思いますが、ヘルニア以外で問題はありませんでしたでしょうか。症状については器質的な問題(ヘルニア等)と機能的な問題に大別されます。器質的な問題は内視鏡検査や造影検査で多くは診断ができますが、機能的な問題は診断法がほとんどありません。機能的な問題についてですが、年齢とともに蠕動運動(食道や胃などの消化管の動き)は残念ながら低下します。またヘルニアによる胃酸逆流は食道炎を慢性的に惹起しますので、慢性的な粘膜障害も原因の一つかもしれません。対処法に関しては機能改善薬などもありますが、生活習慣の見直しも必要です。食事の形態はどのようにされていますでしょうか。現在の処方内容や食事内容、時間、量なども含め一度見直して専門医にご相談ください。
乳がん(原発)でHER2が陽性になった場合、胃がん(原発)でもHER2は陽性になるのでしょうか。
HER2遺伝子はがん遺伝子であるため、それぞれのがんで遺伝子変異(陽性か陰性か)は検体を用いて調べる必要があります。そのため、片方のがん種(例えば乳がん)で陽性であったからといってもう片方(この場合は胃がん)が陽性になるわけではありません。それぞれのがんでしっかり遺伝子変異を調べていただいたほうがよいでしょう。
胃がん検査と腫瘍マーカーについて教えてほしい。
進行胃がんで主に用いられる腫瘍マーカーとしてCEA、CA19-9、CA125、(CA72-4)などがあります。これらは診断時に陽性や高値であった際、その後の手術や化学療法の効果の指標として用います。最近の検診オプションやドックで、腫瘍マーカーが調べられることがありますががんの早期発見や診断に結び付くわけではありません。やはり重要なのは内視鏡や超音波などの画像検査です。特にCEAは喫煙で上昇してしまうため注意が必要です。
ピロリ菌を除菌した場合、胃の検査はバリウムでなく胃カメラのほうが良いのでしょうか。職場の消化器健診では毎年バリウム検査をし、萎縮性胃炎の結果が続いています。
ピロリ菌除菌により、萎縮性胃炎がすぐに改善するわけではなく、もとの正常の粘膜に近い状態に戻るためにはかなりの時間を要します。そのため、バリウムによる造影検査では要経過観察、場合によっては要精査の判定になることもあります。そのため、一度萎縮性胃炎を指摘された方は可能であれば内視鏡検査による経過観察をお勧めします。まずはご自身の検診内容で内視鏡検査が選択可能かオプションになるのかなどの内容をご確認ください。講演でもお話ししたように除菌後の早期病変などの検出にも非常に有用です。是非ご検討ください。
ピロリ菌除去1度失敗しています。何か良い方法はありますか。
講演でもお話ししましたが、二次除菌までは保険診療で行うことができます。仮に除菌判定まで至らなくてもピロリ菌の検査を行った際に数値の改善は認められることがほとんどであり、慢性炎症の程度を下げることは可能です。ご検討いただけますと幸いです。もちろん3次治療も行えますが、こちらは自費診療となりますので専門医とご相談ください。
今年の10月に上部消化管内視鏡検査を受け、11月8日に胃腺腫(原発性)と告げられました。そして、6か月後に来院するよう指示があり、予約を取りました。年齢67歳のため、すぐにでも治療を開始してほしいと思っている場合は、他の病院でセカンドオピニオンを受けたほうが良いのでしょうか。
組織学的検査で胃腺腫と診断されているのであれば、指示通り6カ月以降で問題ありません。現在のガイドラインでは、胃腺腫は治療適応とは記されていないからです。経過観察の後、増大傾向や形態変化がありましたら、その時点で改めて治療についてご相談いただいてはいかがでしょうか。
抗がん剤治療時の副作用がどの程度なのか詳しく教えてほしい。
現在の化学療法で使用する抗がん剤は殺細胞系薬剤、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬です。それぞれに薬剤が複数存在し、それらを組み合わせて使用するため有害事象も様々です。実際に化学療法を受ける際、専門医が対処すると思いますので、その際に個別の薬剤についてしっかりと確認いただくことをおすすめします。