開会挨拶

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講演1:がんって何?

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質疑応答

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がん細胞が何故発生するのかを教えて下さい(例えば食物によって等)。
がん細胞は遺伝子異常(突然変異)により発生します。その遺伝子異常の原因は完全には解っていませんが、胃ではピロリ菌感染による炎症や肺ではタバコによる刺激が、発がんに作用(突然変異を誘発)していると考えられています。
大腸がんの時の初期の自覚症状を教えて下さい。
初期のがんや前がん病変では軽度の出血を伴うことはしばしばありますので、その場合は便の潜血検査で陽性となることはありますが、通常は初期には自覚症状はありません。
子宮がん、乳がんの手術後に上肢・下肢が腫れるのは何故ですか。
がんがリンパ管や血管を侵してそれらを閉塞させるため、リンパ液や血液の流れが妨げられると、周囲組織に液体成分がしみ出ることが腫れの原因です。
若い人には「がん」が少なく、高齢者に発生頻度が増えるのは何故ですか。
遺伝子異常(突然変異)ががんの発生原因ですが、その遺伝子異常は高齢者でなくとも多少は起こっています。しかし、一個のがん細胞が発生しても目に見えるようながんに成長する前に、自身の免疫力や修復機構によりがん細胞は排除されています。高齢者になるとがん細胞が発生する頻度も高くなりますが、それを排除する力も弱くなるため、目に見えるがんへと成長しやすいと考えられます。
全ての「がん」が遺伝子の突然変異で発生するという事は、防ぎ様がないという事でしょうか。あれば、予防方法や日常生活での注意点などを教えて下さい。
完全に防ぐことは難しいと思われますが、突然変異を引き起こす原因を取り除くことで、がん発生の危険率を下げることは可能です。たとえば、胃ではピロリ菌を除菌するとか、肺ではタバコをすわないということです。
大腸にできたポリープが癌化する可能性と対策について教えて下さい。
ポリープには腫瘍性と非腫瘍性のものがありますが、腫瘍性(腺腫)は大きいほどがん化する確率が高く、1cm以上のものでは10%以上はがんを含んでいます。非腫瘍性のものはあまりがんにはなりませんが、大きなものや数十個も多発するものは注意が必要です。がん化を防ぐことはできませんが、ポリープがんでは小さいうちは早期がんであることが多いので、早期のうちに治療すれば完治できる可能性が高いです。
「がん」の進行は、年齢によって差があるのですか。若い人の方が進行が早いと言われているのは、本当ですか。
たとえば胃がんでは30歳以下場合発生頻度は少ないですがで、がん細胞がばらばらのもの(低分化腺がん)がほとんどでありこれらは進行が早く、80歳以上の高齢者の場合では腺管の形をとるもの(高分化腺がん)が多くこれらは進行が比較的遅いので、まとめてみるとそのような傾向があるように見えますが、がんの進行速度はどのような組織であるかが重要です。
がん細胞が目に見える状態になるまでと腫瘍が1㎝・2㎝になるには、どれ位の年数がかかるのでしょうか。
一個のがん細胞がいつ発生したかがわからないということと、がん細胞も細胞の種類で増殖速度が違いますので、正確には解りません。答えになるかどうかわかりませんが、大腸癌ではポリープがんでは1cm~2cmでは早期がんであることが多く、粘膜内に止まったがんであれば5年くらいの間は早期がんのままであると推測されていますが、早期がんでも粘膜より深く浸潤した後は進行癌になるのは早く1~2年くらいと推測されています。
結合組織とは、具体的にどのようなものでしょうか。また、「がん」ができないのは何故でしょうか。(結合織にがんが出来ないわけではないという事から説明して下さい)
皮膚などの上皮細胞と筋肉などの非上皮細胞の間をとりもつ組織で、それらの維持と機能を果たすために必要な血管やリンパ管や支えとなる線維組織などから構成されます。これらの結合組織の構成成分からも血管肉腫や線維肉腫などがんも発生しますが、その頻度は胃がんや肺がんなどに比べるとかなり低いです。
脈管浸潤とリンパ管浸潤とあったが、どちらの方が予後が悪いのか。その理由も含めて知りたいです。また、もし「がん」のtypeで異なるなら代表的なものだけで良いので詳しく教えて下さい。
脈管浸潤(静脈浸潤のことでしょうか?)とリンパ管浸潤ともにこれらのみでは予後に影響しませんが、静脈浸潤があると肝臓転移の危険性が高くなり肝臓に転移すると予後が悪く、リンパ管浸潤があるとリンパ節に転移する危険性が高くなりリンパ節に転移すると予後が悪くなります。そして、最終的な予後は、総合的な進行度を示す病気分類により判定します。
なお、胃がんでは腺管構造を有するもの(分化型腺がん)が静脈に浸潤する頻度が高く、腺管を作らずばらばらになりやすいもの(低分化型腺がん)はリンパ管に浸潤する頻度が高い傾向があります。
「がん」の病因には、遺伝因子と環境因子があると思いますが、具体的に環境因子がどのように遺伝子の突然変異を引き起こすのでしょうか。
たとえば胃がんではピロリ菌、肝臓がんでは肝炎ウイルス、子宮がんではパピローマウイルス、肺がんではタバコなどの環境因子は発癌に関連することが解っていますが、それらによる炎症や化学物質の作用により遺伝子が傷つけられることで遺伝子異常が起こりやすくなると考えられていますが、その詳細は不明な部分も多いです。
遺伝子検査によって「がん」になる人、そうでない人がわかると以前テレビで見ました。家族にがんを患った人がいなければあまり心配する必要はないのでしょうか。
家族性大腸腺腫症などいくつかの遺伝性疾患では高頻度でがんが発生することが解っています。また、家族や親戚にがんを患った人が多い場合はがんの発生する危険が高いことは知られていますが、家族にがんを患った人がいなくてもがんは発生しないとは限りません。
大腸がんの発生から発育進展と遺伝子変化に書かれているAPC、K-ras、p53、DCCについて詳しく教えて下さい。
APCは大腸の良性腫瘍である腺腫の発生、K-rasは腺腫の進行(増大やがん化)に作用する遺伝子です。p53はもともと正常ではがん抑制遺伝子ですが、これの変異により正常の働きが失われるとがん化に作用します。DCCというがん抑制遺伝子の変異によりさらに進行していくとされています。ただし、これらはこれまでに解ってきたがん化におけるとくに重要な遺伝子でありますが、がんの発生から進行までに作用する遺伝子異常はこれらがすべてではありません。

講演2:長く生きたい、良く生きたい

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質疑応答1

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講演3:肺がんの診断と内科的治療の最前線-順天堂の取り組み-
講演4:肺がん外科治療の現状と将来

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質疑応答

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肺がんが初期で見つかったのに亡くなった人がいる。とてもショックです。初期の肺がんの死亡率はどこで決まるのでしょうか?
早期と初期は異なります。早期がんは治療を行えば殆ど治るがんといえますが、初期のがんは再発することがあります。肺がんの初期とは通常IまたはII期相当ですが、20%程度の再発率があります。
どうして肺がんが増えているのですか?
肺がんが増えている原因は喫煙の影響といえます。通常禁煙がひろまるとその約30年後に肺がんが減ってくるといわれています。つまりもう少しで減ってくるのではないでしょうか。現にアメリカやイギリスでは減少しています。一方で心配なのは喫煙に関係しない肺がんが増えていることです。腺がんというタイプの肺がんは喫煙と関係が薄いのですが、増えています。その原因は不明です。
どうして高齢者に増えているのですか?
がんが発生するためには、多段階発がんというメカニズムが必要です。これは遺伝子の一つ一つに傷がついていくことでがんが発生するというものです。ご高齢の方は遺伝子に傷がつく機会が多くなるといえるのでがんが多いのです。
人間ドックで肺がんの検索を行う場合、どんな検査がBestでしょうか?
肺がんの検診は胸部CTがベストです。そのほかに喀痰細胞診、胸部単純写真などがありますが、CTが一番です。PETの検診における役割はまだ一定の見解がありません。
大気汚染は、喘息の悪化要因のようです。肺がんの原因にもなるでしょうか。北海道、長野県、沖縄等空気のきれいな所では、発生頻度が少ないのでしょうか?
大気汚染は肺がんの原因になります。しかしたばこの影響がより強いのが現状です。ちなみに沖縄県はたばこと関係の深い扁平上皮がんが腺がんよりも多い日本でも珍しい県です。
大腸がんはアスピリンで予防できるようですが、肺がんもアスピリンで予防できますか?
肺がんでは予防に関する研究でうまくいった報告はないようです。今後の研究を期待したいところです。
肺がんが骨・頭・肝・副腎に転移が多いのは何故でしょうか?
肺がんは神経に転移するのを好みます。脳は神経ですし、副腎も実は神経です。骨や肝臓にも転移します。
肺がんと食事との関係をご説明いただけますか?
肺がんと食事との関係はあまり強くありません。胃がんや食道がんなどの消化管のがんに比べてその影響は少ないのです。
肺がんも含め、がんを早期に発見するためにはどんな方法が良いでしょうか?
検診を行うことが重要です。肺がんであれば胸部CT、大腸がんは便潜血、大腸内視鏡、胃がんは胃内視鏡、前立腺がんはPSA測定、乳がんはマンモグラフィーなどが良いと思います。
「肺がんの治療方針」のフローは大きな発見、意見と思う。この見解を学会等で発表する予定はあるのでしょうか?
あります。しかし、科学的な論証を重ねて慎重に行うことが重要と考えています。なぜならば現時点で15%程度しか治らない肺がんを不適切な治療を行うことで、治る方に不十分な治療を適応することはさけなければならないからです。
副煙による「がん」になりやすさがあるのでしょうか?
喫煙に対する生体反応は個人差があります。研究レベルでは、タバコに含まれる有毒な物質を発がん性のあるより毒性の強い物質に変換する酵素、あるいは解毒する酵素の量が個人によって異なることが示され、それが喫煙による発がんに大きく影響を与えるとの報告もあります。ただし科学的に検証するのは困難です。
肺がんの転移予防として、頭部に放射線をかけるという文献を見たことがありますが、そのような治療予防はあるのでしょうか?
小細胞肺がんの場合胸部の治療がうまくいった場合にそのような治療方針をとります。
国をあげて肺がんを減らすための方法は、市民講座、先生方、口コミ、インターネット、患者、国家、TV、CMなどがありますが、他にどんな方法があるでしょうか?
最近ではインターネットがよいのではないでしょうか。また、最近では学会活動の一環として積極的に市民講座を通じて禁煙のキャンペーンを行なっております。さらに学校において、喫煙による健康被害について早い段階から教育を繰り返しすることが大切だと思います。
EGFRに選択的ならば副作用は出ないように思えるのですが、イレッサと肺障害の因果関係は、はっきりしているのでしょうか?
動物実験やヒトでの臨床研究からイレッサと肺障害の因果関係ははっきりとしているといえます。また、様々な臨床研究から、喫煙者、もともと肺線維症のある方、全身状態がよろしくない方は肺障害がおき易いことがわかっています。
小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺小細胞肺がんについて詳しく教えて下さい。
小細胞肺がんは肺がんの20%を占めます。化学療法と放射線治療に反応しやすく、滅多に手術は適応されません。非小細胞肺がんは肺がんの80%ですが、逆に手術でとれる場合には積極的に手術を行います。
病期について詳しく教えて下さい。
病期はIからIV期に分かれます。腫瘍の因子Tとリンパ節の因子N、そして転移の因子Mで決めます。MがあるとM1と表現してIV期という意味になります。IからIII期は以下のTとNの組み合わせとなります。
 
表1 病期

N0 N1 N2 N3
T1 IA IIA IIIA IIIB
T2 IB IIB IIIA IIIB
T3 IIB IIIA IIIA IIIB
T4 IIIB IIIB IIIB IIIB
それぞれの治る確立は以下の通りです。
表2 非小細胞肺癌切除6,644例の
臨床病期及び病理病期別5年生存割合7

臨床病期 病理病期
IA 72.00% 79.50%
IB 49.90% 60.10%
IIA 48.70% 59.90%
IIB 40.60% 42.20%
IIIA 35.90% 29.80%
IIIB 28.00% 19.30%
IV 20.80% 20.00%
インフォームド・コンセントについて、担当医師へ過去手術の成功率を聞く事はできますか?
もちろんできます。
分子標的治療薬による増殖作用のブロックがあるとの事ですが、この種の薬(がん細胞の細胞膜に作用するもの)でがん細胞を壊す(殺す)ものはすでに改発されているのでしょうか?
日本において肺がんで使用可能な分子標的治療薬はイレッサとタルセバの2種類です。いずれも細胞増殖を抑えますが、腫瘍も縮小するので、がん細胞も壊す効果もあると考えられています。
子供にも肺がんはあるのですか?
子供の肺がんはとても少ないです。20歳代になると特殊な肺がんが発生することがあります。

質疑応答2

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閉会挨拶

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その他

質疑応答

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抄録ではなく、講演内容をホームページ等で見ることができますか?
第2回市民公開講座より、講演内容は収録しホームページでご覧いただけるよう整備しております。第1回目の講演内容は収録しておりませんので、あしからずご了承ください。
順天堂医院がん治療センター
緩和ケア病棟がありますか?または、それに従事しているスタッフはいますか?
順天堂医院には、緩和ケア病棟はございませんが、緩和ケアチームが担当させていただくことが可能です。緩和ケアチームには、麻酔ペインクリニック医師、メンタルクリニック医師、緩和ケア認定看護師、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカー等、専門職員が所属しています。詳しくは、緩和ケアのページをご参照ください。
化学療法はし尽くしたと言われ、先月から自宅療養しています。今後の生活が不安です。どうすればいいでしょうか?
訪問診療や訪問看護を利用し、自宅での療養生活の支援や相談を受けることが可能です。がん治療センターでは、訪問診療や訪問看護を受けながら、ご自宅で安心して過ごせるような体制づくりのお手伝いをしております。お気軽にお問い合わせください。
電話 03-5802-8196(直通)
医療に知識のない患者が、どうやって正しい情報を集めたらよいのかアドバイスしてください。
最近は、医療情報もインターネットで見ることができ、疾患に関する情報や医療施設、専門医についての情報は、まずインターネットで十分と思います。医療施設ではホームページを開設しているところが多いので、そこにアクセスして診療情報を調べます。その疾患の症例数と治療成績で判断します。症例数多いに越したことはありませんが、治療成績については患者さん自体が病院間で異なりますので、成績が悪いからその施設の医療レベルが低いと一概には言い切れません。すなわち重症の患者さんを多く診ている施設と軽症の患者さんだけしか見ていない施設を比較しても正しい比較にはならないからです。重症の患者さんを多く見ている施設の治療成績はどうしても悪くなりがちです。どのようにすれば公平な比較ができるかは統計学の面から,いろいろと研究中です。
また、がん治療センターでは、患者さんやご家族の情報収集をお手伝いしております。相談窓口がありますので、お気軽にお問い合わせください。
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