背景
パーキンソン病は、加齢や環境要因、遺伝的背景などいくつかの原因が重なることにより発症すると考えられ、超高齢化社会を迎えている日本では、罹患する人数は今後さらに増えることが見込まれています。症状は「動作がゆっくりになる(寡動)」や「身体がかたくなる(筋強剛)」、「ふるえる(振戦)」といった運動症状の他、物忘れや睡眠障害、自律神経機能障害など非運動症状といった多彩な症状が出現し、患者さんの生活の質を著しく低下させます。治療は、不足するドパミンの補充としてLドパ治療が一般的ですが、あくまで対症療法であり現在まで根治療法は未開発のままです。症状が進行すると、薬の効く時間が短くなる「ウェアリングオフ*1」や、身体が勝手に動いてしまう「ジスキネジア*2」といった運動合併症が出現し、薬物治療のみならず脳深部刺激療法や、Lドパ持続投与療法などデバイス療法*3も選択されます。
これら複合的な課題を有するパーキンソン病患者さんに対して、脳神経内科専門医による診療のみならず、脳神経外科やリハビリテーション科、精神科による専門診療、看護師や薬剤師、ソーシャルワーカーなどと連携した、在宅医療や社会資源の調整、介護者への教育・心理サポートなど包括的な「ケア」が重要であることは言うまでもありません。