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順天堂医院

順天堂医院で実施する特定臨床研究で発生した重大な不適合の報告

順天堂大学医学部附属順天堂医院(以下「当院」という。)で実施している臨床研究において、重大な不適合事案が発生いたしました。本臨床研究は臨床研究法に基づき実施する特定臨床研究であり、経緯と再発防止策等についてご報告申し上げます。


研究名称


急性冠症候群(ACS)患者におけるポリマーフリーDES および第2世代DESの治癒過程を評価する探索的無作為化前向き比較試験(臨床研究実施計画番号:jRCTs032210464)

本臨床研究の概要

本臨床研究は、閉塞あるいは閉塞しかかった冠動脈に2種類のステント(いずれもカテーテル治療で日常臨床に用いられているXIENCEステント及びISAR NEOステント)で治療を行った際に、急性期の画像診断と慢性期の画像診断で両者を比較して、その両者の治癒過程に違いがあるのかを評価する目的で2021年12月より開始された。

重大な不適合の概要

2022年1月から2024年1月の間に行われた73名に対する同意取得において、以下の重大な不適合がモニタリング調査で確認された。
  • 説明同意文書の版管理の不備
  • 研究責任医師/研究分担医師以外による同意取得
  • 同意文書記載事項の不備
  • 順天堂大学臨床研究審査委員会(以下「CRB」という。)承認前の説明同意文書での同意取得
  • 研究実施計画書に規定されていない口頭同意のみに基づく試験治療の開始
  • 臨床研究参加の適格性に合致しなかった候補者から取得した同意書の破棄
  • 緊急状況下での同意取得に関する研究責任医師の認識不足

発生の経緯

2024年2月27日
 本臨床研究の研究責任医師は、本臨床研究のモニタリングにより不適合の指摘を受け、CRBに不適合報告書を提出した。

2024年3月5日
 CRBが開催され、研究責任医師に対するヒアリングの結果、重大な不適合の可能性があると判断し、直ちに本臨床研究の新規同意取得及び被験者の組入れの中止、重大な不適合報告書の提出及び監査の実施について意見した。

2024年4月2日
 研究責任医師よりCRBへ詳細が記載された、重大な不適合報告書が提出された。

2024年5月7日
 CRBへ本臨床研究に係る監査結果が報告された。
 監査の結果、これまでに同意取得した全例(73例)において、同意取得の不備があったことが確認された。同意取得全例に対し、研究実施計画書に定められた方法を遵守した説明同意取得が実施されていないことは極めて重大な不適合であり、研究責任医師に対して研究中止を通知した。
 なお、本臨床研究に係る研究対象者に重篤な疾病等は発生していないことを確認した。

2024年6月3日
 CRB委員長から関東信越厚生局に本件について報告した。

患者さんへの影響

これまでのところ、不適合に起因する有害事象は生じていない。

再発防止策

研究者に臨床研究法、研究倫理(適正な同意取得)に対する理解が不十分であることが原因の一つと考えられるため、e-learningなどを活用し、研究責任医師及び研究分担医師に対する再教育の徹底を図るとともに、組織としての研究管理体制を見直し、モニタリングの実施時期や実施体制について必要な助言を提供できるよう、研究者等への支援体制の強化を行う。

本臨床研究へご参加いただいた患者さん及び関係者の皆様に深くお詫び申し上げるとともに、今後は適切に臨床研究が遂行されるよう細心の注意を払い、当院の研究体制に対する信頼回復に努めてまいります。
なお、ご参加いただいた患者さんには個別に書面を郵送しお知らせとお詫びをしております。

2024年6月7日
順天堂医院
院長 桑鶴 良平
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