医局員から医学生・研修医へのメッセージ

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平成24年入局 小杉康夫 「当院での研修、放射線治療医の実際」
私は現在、放射線治療専門医として日々診療にあたっています。
入局後、初めの3年間は順天堂医院や各関連病院で、放射線診断・血管内治療(IVR)・放射線治療の研修を積みます。
『放射線治療って何をする所か具体的には分かりません』とか、『血管内治療(IVR)の先生ですよね?』という声を医学部の学生さんのみならず、研修医の先生からも聞くことがあります。
  
私の日常の仕事は主にがん患者さんに対する放射線治療の準備(治療計画)と治療、そして日々の診察になります。ですので、1日のうちの仕事のほとんどが外来診察と治療計画装置による、放射線治療計画の作成になります。また、朝や夕方に治療方針決定の為に、毎週多くの診療科とのカンファレンスに参加しています。
放射線治療科には頭の先から足の先まで、全身の悪性疾患(から一部良性疾患)の患者さんがいらっしゃいます。当院は大学病院であることもあって、乳がんや前立腺がんなど放射線治療ではcommonな疾患から、稀な脳腫瘍・小児腫瘍など非常に多くの疾患を経験することができます。また、当院の特徴として、臓器別の担当医制を設けているところがあります。広く一般的な治療を行える事はもちろん、依頼いただく各診療科の先生方と治療に関してより専門的な議論が行えるように自分のspecialityを深めていくことができます。
  
ちなみに私は、脳と頭頸部(喉頭、咽頭がん)を担当しておりますが、この分野では高精度放射線治療を積極的に行っており、私もこの治療法を学ぶ為勉強会に行ったり、他院に見学に出張させて貰ったりと勉強させていただいております。
放射線治療はもちろん医師だけで出来るものだけではなく、看護師や診療放射線技師、医学物理士や医療事務の方々などチームで診療にあたっています。現場経験ではまだまだな私ですが、責任ある仕事を任せていただいているので多くの方々に助けていただきながら診療にあたっています。
  
放射線治療はがん治療における外科治療・薬物療法に並ぶ治療法の1つです。
高齢化社会において、その他の治療法が選択できない患者さんが増えたり、機能を温存する治療の重要性が高まる中、放射線治療のニーズは益々増えています。
しかし、自分が研修医の時そうであったように、放射線治療があることを知っていても、実際どのようなことをしているのか知っている先生はまだまだ少ないと思います。
がん治療に興味のある先生、一度見学にいらしてください。一緒に診療に当たれる日を楽しみにしています。
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平成29年入局 池之内穣 「画像コンサルタントへの道のり」
医学生の折、画像診断の奥深さを教えてくださった先輩の姿に強く心を打たれ、放射線科医を志してから、気づけば医師になって11年目となりました。解剖学や病理・病態学、生理学といった基礎医学を背景に、画像から疾患の本質を読み解いていくという診療スタイルは、今も私にとって新鮮であり、日々の業務の中で多くの学びと発見を得られることに大きなやりがいを感じています。
とはいえ、当初から明確なビジョンを持っていたわけではありません。“Doctor’s doctor”という言葉に惹かれて放射線科に入局したものの、入局後の2〜3年は右も左も分からず、日々の業務に追われながら手探りで過ごしていた時期もありました。当時は働き方改革も進んでおらず、画像検査件数が年々増加していたこともあって、学習の時間を確保するのが難しい状況でした。さらに、ちょうど第3次AIブームの始まりとも重なり、「このままAIに代替されてしまうのではないか」という不安が芽生え、放射線科医という選択が本当に正しかったのか、自問する時期でもありました。
しかし、放射線科専門医、そして放射線診断専門医の資格取得に向けて研鑽を積むなかで、学会や勉強会を通じて多くの尊敬する先生方や、志の高い若手医師たちと出会い、大きな刺激を受けました。知識と経験を少しずつ積み重ねることで診断に対する自信も育ち、診断専門医取得後には神経疾患専門の医療機関に出向する機会をいただき、全国の大学から集まった先生方とともに働く中で、多様な視点や新たな考え方に触れる貴重な経験を重ねることができました。それまで断片的だった知識が、まるでパズルのピースが一気にはまるようにつながり、これまで理解しきれなかった病態が次々と見えてくる感覚を得たことを、今でも昨日のことのように鮮明に覚えています。このような機会を与えてくださった順天堂大学および関係諸先生方には、心より感謝申し上げます。
近年では、AI技術の進展により、「画像診断医は将来不要になるのではないか」といった声が聞かれることもあります。しかし私は、むしろAI時代だからこそ、その最先端を行く放射線診断医の専門性がより重要になると感じています。画像診断を通して得られる幅広く体系的な知識は、他科では得難い疾患理解につながり、カンファレンスや日常診療においても、単なる読影にとどまらず、“臨床コンサルタント”としての役割を果たす礎となります。
また、AIを積極的に活用することで、報告書の質や精度が向上するだけでなく、若手医師の教育にも非常に大きな可能性を感じています。従来であれば習得に数年を要した知識や診断プロセスを、AIの支援によって短期間で体系的に理解し、実践できる環境が整いつつあります。私自身、日々の読影業務において後輩への指導にも積極的にAIを取り入れ、若手医師が知識をアップデートし、診断の根拠をきちんと述べ、その診断を自ら検証・確認できるような体制づくりを意識しています。そうした中で、彼らが目に見えて診断力を高めていく姿に触れるたび、若手放射線科医の成長の可能性に大きな手応えを感じています。
私は今後、こうした知識と経験をさらに深め、将来的には診療科を超えて信頼される「一流の臨床コンサルタント」として活躍できるようになりたいと考えています。画像所見を正確に捉えるだけでなく、その背後にある病態や経過、治療方針までを見据えて診療に関与できる放射線科医こそが、これからの時代に求められる姿であると信じています。その理想に近づけるよう、今後も臨床・教育・研究の三本柱を意識しながら、進化する医療のなかで確かな役割を果たせるよう、日々研鑽を重ねてまいります。
 

平成31年入局 村本耀一 「がん治療の最前線で患者さんを治し・支え・未来を創る」
放射線治療科から医学生・研修医のみなさんへ
 
はじめまして。順天堂大学 放射線治療学講座 村本耀一です。平成31年に放射線科に入局して現在、放射線治療専門医として働いています。
 
私自身は筑波大学出身で、学生実習中に放射線治療という診療科に初めて触れました。
そのときに感じたのは、「がんを治療する手段の一つとして、放射線治療という選択肢がこれほどまでに戦略的で奥深いのか」という驚きでした。
初期研修ではあえて放射線治療がない市中病院に進みましたが、がんの手術・化学療法・緩和などを拝見し、改めて放射線治療がまだまだ今後発展する可能性がたくさんあることを感じ、放射線治療の道に進む決意をし、順天堂に入局しました。
 
現在、放射線腫瘍学会(JASTRO)主催の医学生・研修医のためのセミナーの東京会場の実行責任者を務めております。
毎年、全国から多様な学生・研修医が参加し、現役の放射線治療医と語り合う場となっており、放射線治療領域の盛り上がり・熱意を肌で感じることができる貴重な機会ですのでぜひご興味ある方はご参加検討ください。
今回は、医学生・研修医に向けて放射線治療の魅力をお伝えします。
 
 
① 放射線治療は“がん診療 × 放射線科”の交差点にあり、“根治から緩和まで”がんの全ステージに貢献できる
 
がん診療における三本柱「外科手術」「化学療法」「放射線治療」の一つであり、放射線科においても「画像診断」・「IVR」「放射線治療」の一角を担います。
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順天堂大学の2024年データでは、年間照射件数約1,000件のうち64%が根治照射であり、半数以上ががんを治すために放射線治療を行っております。
また痛みをとったり出血を止めたり症状をとる緩和的な効果もあり、がんの種類や病期に関わらず、あらゆる患者さんに寄り添える診療科です。


② がん治療のジェネラリストであり、スペシャリストにもなれる

放射線治療は頭の先から足の先まで、全身のがんを対象とするがん治療のジェネラリストでありながらも、臓器別に専門性を磨けるスペシャリストな分野になっています。
私自身は現在、特に脳腫瘍、頭頸部癌、皮膚癌、悪性リンパ腫などを担当しており、強度変調放射線治療(IMRT)や子宮頸癌に対する小線源治療なども積極的に行っております。
m_muramoto_02(画像出典:JASTRO「放射線治療医になろう」)
診療業務としては、患者さんの診察から放射線治療計画、他科とのカンファレンス、実際の照射まで日々のやりがいに溢れた診療科です。
実際に患者さんを直に診察して病変の広がりを観察して放射線治療計画に活かすので、PC画面の前だけでなくしっかり患者さんを診ることのできる診療科でもあります。
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子宮頸癌の小線源治療では腫瘍に直接器具を挿入して、ゼロ距離で放射線を照射し、子宮頸癌の根治を目指す治療を行っております。外科的な手技もあり、自身で手を動かしたい医学生・研修医にもおすすめの診療科です。

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③ 患者さんのニーズが高く、技術進化が早いため、今後さらに若手が必要とされる分野

実は放射線治療専門医は日本全国にわずか1700人弱しかいません。一方で高齢化に従ってがん患者さんは増えています。

現在年間約100万人のがん患者さんのうち30万人が放射線治療を受けていますが、米国では日本の約2倍の患者さんが放射線治療を受けています。

今後も患者さんからのニーズは高まるため、今後とても必要とされる領域です。

また放射線治療は技術発展も早く、1990年代の2D照射から、2000年代CTの出現で3DCRTが可能となり2010年から2020年にかけて強度変調放射線治療(IMRT)、定位照射、粒子線が格段に飛躍しました。そしてこれからはAIVRの時代です。

すでに放射線治療の現場では、AIによる自動コンツーリングや線量分布計算支援、過去のエビデンス検索や論文作成支援などがすでに実装されており、若手でも教授と肩を並べて新しいプロジェクトに参画することができます。

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医師の中でも数が限られているからこそ、若手のうちから学会発表・ガイドライン作成・国際学術への登壇などの機会が豊富です。
順天堂医院は出身大学・学年に関係なく活躍できる風土もあり、人数が少ないからこそ全国の仲間が増えるのもこの分野の面白さです。
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④ 勤務は平日日中メインで裁量性も高く、「診療」と「研究」の間に境界がない

抄読会、外来、新患診察、治療計画、RALS、小線源治療、カンファレンスなど、日中はやることは多彩でも、時間管理は自分自身で決めることができ比較的柔軟です。
実際、多くの医師が研究・育児・趣味(スキー、音楽など)を楽しみながら診療に携わっています。がん診療科でありながら、このワークライフバランスの良さは特筆すべき点です。

また臨床と研究、どちらかに偏る必要はありません。放射線治療は、日々の診療の中に治療データやエビデンス構築の機会が自然と存在し、日々の診療こそが研究の素材になります。
だからこそ、「論文なんて遠い話」と思っていた自分も、今では学会発表や大学院生として論文執筆に取り組んでいます。

⑤ 医学生・研修医のうちから学習できる機会が豊富

もし、少しでも「面白そう」と感じていただけたら、ぜひ毎年夏に学会主催で開催される医学生・研修医のための放射線治療セミナーにご参加を検討ください。
全国から熱意ある放射線治療医・医学生・研修医が集まるこの場で、放射線治療の“リアル”を感じてみませんか?
また、順天堂大学では随時見学も受け入れています。
治療計画、高精度放射線治療、RALSの現場などなど…「イメージが湧かない」なら、まずはぜひ一度“見て”ください。たくさんの仲間と一緒にお待ちしております。
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参加のご興味がございましたらお問い合わせはこちらまでお願い申し上げます。
村本 耀一:y.muramoto.kq@juntendo.ac.jp
放射線治療はまだまだ発展の余地があり、皆さん一人一人の手を必要としています。
一緒に放射線治療の扉をくぐり、ぜひがん治療の未来を切り開いていきましょう!
平成31年入局 新井貴士 「当教室の特色とキャリア形成」
平成31年入局の新井貴士と申します。私は当教室における研修プログラムのもとで研鑽を積み、「放射線科専門医」、「放射線診断専門医」の資格を取得しました。ここでは、医学生の皆様、初期臨床研修医の皆様、他科から放射線科への移籍を考えているかたなどへ向けて、少しでも当教室の魅力がお伝えできれば幸いです。
ご覧いただいている皆様は「放射線科」にどんな印象をお持ちでしょうか?医療機関には様々な診療科が存在しますが、例えば急な体調不良の際に、放射線科外来を直接受診することは滅多にありません。また、CTやMRIなどの画像検査の結果を聞く際には、放射線科の医師ではなく主治医から説明を受けることがほとんどかと思います。医療現場との関りが少ない人にとって、「放射線科」はブラックボックスといえる存在ではないでしょうか。私自身の学生時分を思い起こしてみても、医学生でありながら「放射線科」のイメージはとても曖昧でした。
実際の放射線科は、あらゆる病態に対する「画像診断」、画像診断装置の誘導下で行う局所治療(「インターベンショナルラジオロジー」)、放射線照射によって低侵襲治療を行う「放射線治療」といった診療を担当しています。あらゆる健康問題を対象に、高度な技術を用いた診療を行う科であるため、放射線科専門医の資格を得るには広大な医学知識の理解と十分な経験が必要です。当教室には、専門医取得に向けて充実した専門医育成環境が整っております。
私は初期臨床研修医2年目に当教室への入局希望を伝え、快く受け入れていただきました。その年度には当時の医局長から検診マンモグラフィ読影認定医試験の受験を勧めていただき、初期臨床研修を行いながら認定医の資格を得ることができました。入局3年目には、本学大学院医学研究科博士課程に在籍し、神経放射線診断学コースにおいて脳MRI研究に取り組み医学博士の学位を取得しました。このように、入局前から始まり入局後も常に、様々な分野の各スペシャリストに支援いただきながら研鑽を積むことができています。
当教室の画像診断部門は「一般放射線診断学」と「神経放射線診断学」に分かれていることが特色です。各グループが専門的知識と経験を活かし、診療業務・臨床研究を行っています。当教室のすべての専攻医は放射線専門医資格取得までの3年間において、ローテーションで各グループを研修し、グループ間で垣根のない指導体制が確立しています。
ご覧の皆様が当教室に入局いただけましたら、私も可能な限りでキャリア形成の支援を行います。あらゆる医学的領域に探究心を持ち、科学的な観点から的確に問題を捉え、職種やグループを問わず周囲の全ての人たちと協力して解決を目指したいかたは、特に大歓迎です。少しでもご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一度見学にいらっしゃってください。
令和4年入局 樋口嶺央 「放射線科専攻医の研修内容とその魅力」
放射線科に入局後、これまで順天堂医院、浦安病院、静岡病院、高齢者病院、練馬病院と様々の施設で研鑽を積ませて頂きました。専攻医として研修する中でこれまでに感じた順天大学放射線科の研修の魅力を簡単に紹介させて頂きます。

・幅広いモダリティの学習環境
診断においてはレントゲン、CT、MRI、超音波、核医学、マンモグラフィなど放射線科医として必要な主要モダリティを網羅的に学ぶことができます。特に超音波については施設によって経験を積む機会が比較的限られている検査だと思いますが、当施設では数多く経験することができます。IVRについてもCVポート作成やドレナージ、生検、リンパ管造影といった非血管系の手技から、AMLや子宮筋腫に対する塞栓術、緊急止血術といった血管系手技まで幅広く学ぶ機会があります。また、治療においては全身の領域の癌治療計画作成に携わらせて頂き、IMRTや定位照射などの高精度放射線治療も学ぶことができました。様々なモダリティを学習する機会があるため、放射線科医としての幅広い基礎知識を身につけることができる環境であると感じています。

・分院ローテーションによる多角的な経験
本院だけでなく浦安、練馬、静岡、高齢者といった複数の分院をローテートしながら研修を行うため、各施設の特色や患者層の違いに触れられ、多様な手技や画像診断技術を実践的に習得することができます。

・専門性の高い指導体制
診断、治療の各分野で、それぞれ専門医やスペシャリストが指導にあたって下さっています。専門性の高い研修プログラムのもとで、基礎から応用までじっくり学ぶことができ、専門医取得に向けて着実に経験を積みスキルアップが図れます。

・充実したカンファレンスと連携体制
大学病院という恵まれた環境で、各診療科とのカンファレンスに参加する機会も豊富にあります。多科の専門家と議論することで、臨床の先生方の視点からも放射線診断・治療の臨床的意義を深くすることが理解でき、また大学病院ならではの稀な疾患を学ばせて頂く機会も多いと感じています。

・研究活動・学会発表への積極的なサポート
順天堂大学では、臨床と並行して研究活動にも力を入れており、専攻医も早期から学会発表や論文執筆に取り組む機会が広がっています。指導医のサポートのもと、各自の関心に応じたテーマでの取り組みができ、国内外の学会で発表を行う機会もあり、アカデミックな視点を身につけることができます。

・明確なオン・オフの切り替え
放射線科の業務は、比較的予定が立てやすく、オンとオフのメリハリがはっきりしている点も大きな魅力と感じています。プライベートや家族との時間も大切にしながら、充実した研修生活を送ることができます。

以上のように、順天堂大学放射線科では幅広いモダリティの習得、専門性の高い研修、他科との連携、研究・学会活動まで、専攻医として幅広く技術と知識を身につけることのできる環境であると感じています。当施設での放射線科研修に少しでも興味を持って頂くきっかけとなれば幸いです。

・専攻医の期間のローテーション
1年目
4-6月    本院診断-一般
7-9月    本院診断-IVR
10-12月   浦安治療

2年目
4-12月    静岡診断
1月-     高齢者診断

3年目
-6月     高齢者診断
7-12月    練馬診断
1-3月    本院診断-一般
令和5年入局 藤絢佳 「放射線診断部門の研修に関して」
放射線診断部門は主にCTやMRIなどの画像を通じて各診療科の臨床判断を支えています。
当院では希少疾患や複雑な症例に触れる機会も多く、日々の業務を通じて全身にわたる幅広い疾患を学ぶことができます。また各分野の専門家から直接指導を受けられる環境も整っています。IVRも多数行っており、診断だけでなく治療手技に関わることもできます。
放射線診断は積み重ねた知識と経験を活かせる領域です。落ち着いた環境で専門性を高めたい方には適していると思います。興味のある方はぜひ一度見学にお越しください。