薬剤部長の挨拶
【チーム医療】
薬剤部は全ての患者さんの薬物治療の適正化・安全確保を図ることを一番に考え、日々の業務に携わっています。小児・新生児においては発達機能の変化、高齢者においては生理機能の低下、心不全や肝不全、腎不全等の患者さんでは、疾患に特有な薬物の効果発現の変化を考え、薬剤師の視点で医師や看護師等多職種の医療スタッフと連携をとりながらチーム医療による最良の治療を提供できるように心がけています。
【教育・人材育成】
薬物治療が多様化してきたため、薬剤師としてのプロフェッショナリズムを発揮したチーム医療の推進には、幅広い薬剤の知識に加え、大学病院においては高度な専門知識も求められます。ジェネラリストから様々な専門分野の教育・人材育成を推進し、がん・感染・小児領域他、多くの認定・専門薬剤師が在籍しています。薬学生の受け入れにあたっても、臨床能力の高い薬剤師が親身に指導にあたり、レジデント(卒後初期研修)制度の取り組みによって、卒前から卒後のシームレスな教育プログラムを提供しています。
【研究・学位取得】
また臨床能力の向上には研究資質も欠かせません。日本では遅れている疾患や薬物治療を数理統計学的に捉えモデル化することで、様々な状態を仮想的にシミュレーションするPharmacometricsと言う手法をはじめとし、クリニカルクエッションを解決するためのトランスレーショナルリサーチを進めると共に学位取得も積極的に推奨しています。働きながら日々疑問に感じて研究した成果が、患者さんにフィードバックされ、博士取得につなげられる環境が整えられています。
【機械化・ICT化】
先端技術の導入では、国内最大規模の調剤機器が設置され、バーコード認証等も積極的に取り入れられています。機械化やICT化により、ヒューマンエラーを最小限にし、正確性の向上と業務の効率化に努めています。
これらの薬剤部業務を遂行するにあたっては、医療人としてのコミュニケーション能力や豊かな人間性、倫理観を大切にし、次世代を見据えたグローバルな視点で取り組んでいます。
基本理念(標語)
―医療安全とEBMを核としたチーム医療の貢献―
概要
薬剤部では、医療安全とEBMを核としたチーム医療への貢献を標語として、外来業務は患者中心の薬剤師配置で外来調剤・化学療法調製において患者待ち時間短縮、入院業務は病棟薬剤業務実施加算に対応して全病棟に専任薬剤師を配置し、患者サービスに努めています。全病棟にチームで担当することにより、持参薬管理や入院化学療法およびTPN調製対応、ハイリスク・ハイアラート薬管理のみならず病棟カンファレンスやラウンドに参加し、チーム医療の一員として安全で安心の薬物療法の質向上に貢献しています。
卒後教育として、1年目より調剤、がん化学療法およびTPN調製、医薬品情報室業務、病棟薬剤業務、薬品の物流管理、臨床研究、医療安全といった全ての病院薬剤師業務をローテーションするカリキュラムに則り、屋根瓦方式で個々のスキルアップを図ります。
日々、大学院大学、特定機能病院として診療・教育・研究の実践を目指しています。
業務内容
主な業務
処方箋に基づく調剤
- 医師の処方箋に基いて、外来患者さんや入院患者さんの薬を調製しています。
- 調剤にあたっては、処方された薬の内容・服用量・飲み方・飲み合わせなどの確認を行い、患者さんの安心・安全な薬物療法のための服薬に関して必要な情報を提供しています。
注射薬の無菌混合調製
- 全ての抗悪性腫瘍剤や経静脈栄養法(TPN)の輸液の無菌混合調製を行っています。
病棟薬剤業務・薬剤管理指導業務
- 病棟での医薬品の適正使用のための支援や病棟での適切な医薬品管理を行っています。
- 入院患者さんの安心・安全な薬物療法の推進、生活の質(QOL)向上のために必要な服薬指導を行っています。
医薬品に関する情報の収集・評価・提供
- 医薬品の適正使用に関する情報を収集し、収集した莫大な情報を評価し、必要な情報を医師、看護師など院内の臨床部門へ提供しています。
病院で使用する医薬品の供給や管理
- 病院で使用する医薬品の購入と供給、在庫及び品質管理などを行っています。
院内製剤などの調製
- 治療上必要だが、様々な理由で市販されていない医薬品、または市販されている医薬品とは異なる剤形の薬剤を薬剤部で調製しています。
チーム医療への参画
- がん化学療法、感染制御、栄養管理、緩和ケア、糖尿病治療などの領域や手術室、救急室などにおいて他の医療スタッフとの情報の共有を行いながら、医療チームの一員として「医薬品の適正使用及び安全・安心な薬物療法の確保」に取り組んでいます。
薬学部学生教育
薬剤師レジデント制度
レジデントワーキングチーム挨拶
順天堂大学医学部附属順天堂医院では、平成26年度より薬剤師レジデント制度が発足しました。レジデント1年目は専用の教育プログラムによりジェネラリストを目指した教育を実施しています。研修は多岐に渡り、調剤業務、一般・特殊製剤および化学療法調製業務、薬品供給業務、医薬品情報業務、病棟業務をローテーションし、短期間で基礎業務の習得を目指しています。また、毎月の研究課題報告会を通し、学会発表を見据えてプレゼンテーション能力の向上を図っています。2年目は長期間希望部署への配属により専門性の高い薬剤師としての能力を向上させる取り組みを実施しています。併せて配属先の指導者の下、主体的に研究活動に取り組み、学会発表を行うことを目標としています。
現在、専門知識を生かした薬剤師業務への貢献・学会発表などの実績により、レジデント修了生は病棟チーム・製剤課チーム・医薬品情報室などの主要メンバーの1人として貢献しています。平成30年度よりレジデント制度を支える役割を担うレジデントワーキンググループはレジデント修了生で構成されるようになりました。現役レジデントと共に、制度の質向上を目指した取り組みを続けています。
レジデントワーキンググループ
薬剤師レジデント制度の概要・目標
薬剤師レジデント制度の概要
薬剤師レジデント制度は、高度医療に対応した臨床薬剤業務ならびにチーム医療を実践できる薬剤師の養成を目的とし、臨床実務をとおして、知識、技能、態度を修得することを目的としたプログラムです。
薬剤師レジデント制度の目標
当院のレジデントプログラムは、2年間の研修期間で病院薬剤師業務の基礎修得を目標とし、1年目は、調剤、化学療法・TPN調製、医薬品情報、病棟関連、薬品物流管理、医療安全などを修得、2年目は、希望部署を中心に、薬学部学生の教育、治験・臨床研究など大学院大学、特定機能病院としての特徴を生かした研修及び学会発表を目指した研修も行います。2年間の研修終了後には、チーム医療の中で、多職種と連携し患者に最善な医療を提供できる薬剤師の育成を目指します。
薬剤師レジデント制度のカリキュラム
1年次
毎月、原則第1週水曜日に研究課題発表会があります。
テーマは自身で探し、エビデンスを用いて評価・検討します。
配属部署にて研究テーマを持ち、配属部署の成果報告とします。
研究は必ず客観データおよび学会・論文報告を参考に行います。
2年次
希望部署ローテーション1の期間に学会発表に向けたテーマをみつけ、担当者の指導の下、配属部署で学会発表の準備を進めます。
8月から1月の間で新たな希望部署へのローテーションやその他のローテーションを行いながら、学会発表に向けて要旨の作成や演題登録などを進めていきます。