遺伝性血管性浮腫とは?

遺伝性血管性浮腫(HAE: Hereditary angioedema)は、遺伝子の変異が原因で血液の中にあるC1-エラスターゼインヒビター(C1-インヒビターともいう)の機能が低下する病気です。身体のいたるところに2-3日持続する腫れや「むくみ」(血管性浮腫という)を繰り返します。個人差がありますが、10歳から20歳代に発症することが多く、皮膚(手足、顔面、生殖器など)が腫れた場合は、一見すると「じんま疹」のようですが、強いかゆみを伴わないのが特徴です。特にのどが腫れると呼吸困難に陥ることがあったり、お腹(腸)が腫れると強い腹痛発作を起こすことがあったりと、緊急性の高い状態になる場合もあります。
hae_zin-01
図1 血管性浮腫
皮膚・粘膜の深い部分にむくみができます。

症状が出現するきっかけや頻度

怪我、長時間の圧迫、抜歯、外科手術、ストレスなどがきっかけで浮腫の発作が起きることが多いとされますが、なんのきっかけもなく出現することも少なくなく、発作の原因を特定することが難しい場合もあります。発作の頻度は患者によってさまざまで、一週間に数回も集中的に症状が出ることもあれば、発作の間隔が数年から数十年空くこともあります。

遺伝性血管性浮腫の診断

①浮腫の出現を確認し、腫れや「むくみ」のある部位をカメラ付携帯電話などで撮影しておき、診察の際に担当医に見せると良いと思います。(診察の時には腫れや「むくみ」が消えてしまっていると、その症状が血管性浮腫であるかどうかの判断ができない場合があります。)

hae_zin-0203
②親戚の方などに、同じような腫れや「むくみ」が出たり消えたりするような人がいないかを確認してみましょう。(この疾患では85%程度の患者さんで血縁者に同じような症状をもつ人がみられます。)
 
③診察の際には血液検査を行って、主にC1-エラスターゼインヒビターの機能(活性)と補体C4の濃度を測定します。必要に応じて遺伝子検査をする場合があります。

遺伝性血管性浮腫の治療

腫れや「むくみ」が出た場合(急性発作という)には、医療機関を受診してC1-エラスターゼインヒビター(血漿分画製剤)を点滴静注することで症状を軽快させることができます。また、出現するきっかけとなる抜歯や外科手術の予定がある場合には、それらの処置の前に発作予防のために同薬を注射する場合があります。その他、自宅にて選択的ブラジキニンβ2受容体ブロッカーを自己注射することにより、症状を軽快させる方法もあります。

上記の検査や治療薬については保険診療が可能ですが、HAEは国が指定した「指定難病」の「原発性免疫不全症候群」に該当します。都道府県・指定都市(窓口が地域により異なります)に医療費受給者証交付の申請を行い認定されると、医療費の助成が受けられます。

当科での診療体制

当科では、「遺伝性血管性浮腫」専門外来を開設し、診断治療を行っています。また、HAEの急性発作時には、昼夜を問わず診療にあたっています。

その他

HAEに関する情報はつぎのリンク先でも得られます。