小児外科で治療する疾患概要6.1
小児泌尿器で治療する主な疾患6.0

体表の疾患・ヘルニア関連疾患

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鼠径ヘルニア
鼠経ヘルニア
お風呂に入っているときや泣いたときなどに足の付け根 (鼠径部) や陰嚢 (いんのう) が膨らんで見つかります。腸が出ていることが多く、脱腸と言われることもあります。原因は、男児であれば生まれる前に精巣が陰嚢の方へ降りてくる過程でできた通り道に、腸などを包んでいる腹膜が引っ張られて袋状になり生まれた後も残っていることで症状が生じます。女児では子宮を支える組織(円靭帯)により恥骨に向かって腹膜が引っ張られることでヘルニアが生じます。通常はこの袋は生まれるころに閉じてしまいますが、袋状に残っている場合に腸などの腹腔内の臓器が入りこんで膨らむことで見つかります。

通常は膨らんでも自然に戻りますが、戻らない場合は嵌頓 (かんとん) といって臓器が締め付けられて血流が悪くなるため、早急に戻す必要があります。戻らない場合は緊急で手術が必要になり、血流が悪くなり腸管などの壊死が生じた場合は切除が必要になることがあります。

鼠径ヘルニアは稀なケースを除いて自然に治癒することはないため、手術が必要になります。
当院では鼠径ヘルニアに対して以下の方法を用いています。いずれも全身麻酔が必要で入院が必要になります。日帰り手術も行っておりますのでご相談ください。

治療法

鼠径部切開法

ヘルニア嚢の出口にあたる鼠径部を切開し、ヘルニア嚢の根元で二重に糸でしばって腸などが脱出しないようにします。

LPEC

お臍に腹腔鏡のカメラを挿入し、お腹の壁から糸を通した針を刺し、お腹の中から観察しながらヘルニア嚢の根元をしばる方法です。
陰嚢水腫
陰嚢水腫はヘルニアと同様に腹膜が袋状になり、そこに水がたまった状態です。
袋のくびれにより腸などの臓器が飛び出ないため嵌頓が生じず、1歳ごろまでに自然に消失することがあります。
1歳過ぎても腫脹が目立つ場合は手術の対象となり鼠径ヘルニアと同様の手術を行います。
臍ヘルニア
泣いたときやおなかに力がかかった時にお臍がぽこっと膨らむ、いわゆる“でべそ”のことです。
生まれたときや乳児期の早い時期に目立ってくることが多く、1歳ごろまでに90%くらいのお子さんで自然に軽快します。お臍にあるすき間があることで腸が脱出して生じますが、成長とともにすき間が閉じることで脱出しなくなります。稀ですが鼠径ヘルニアと同様に嵌頓が生じることがあります。1歳をすぎても脱出がある場合は治癒する可能性が低いため手術が必要になります。臍の輪郭に沿って切開し、ヘルニア嚢を切除し、お腹の筋肉を寄せて縫合し、腸が飛び出ないようにし、臍の皮膚は凹んだ形に形成を行います。手術は全身麻酔で行います。

乳児で膨隆がとくに目立つ場合は、綿球などをあてて圧迫療法を行うことで脱出しにくくなることがありますのでご相談ください。

臍ヘルニア1
臍ヘルニア2
停留精巣
生まれる前のお子さんでは精巣 (睾丸) はお腹の中の腎臓の近くにあり次第に下降してきます。生まれてすぐの時は触れづらいお子さんもいますが、1歳ごろまでには陰嚢内に降りてきます。1歳になっても陰嚢内に精巣 (睾丸) が確認できないときは停留精巣が考えられます。お腹の近くにあると精巣が温まることで機能が低下することや、将来的に癌化することがあると言われており、陰嚢内に降ろしてあげることが必要です。

降りてくる途中で消失するものがあり、精巣が確認できない (非触知精巣) 場合は画像検査や手術 (腹腔鏡) で精巣の有無や位置を確認することが必要になります。
お風呂上りなどに精巣が陰嚢の下の方まで下がってこないような時には、ご相談下さい。
乳児痔瘻および肛門周囲膿瘍
肛門の周囲の皮膚 (特に肛門の横) が、赤くはれたり、そこから膿 (うみ) が出てきたりした場合には、乳児痔瘻です。この病気は男の子に多く、便秘の子にできやすいですが、下痢が続いた後などにもできます。赤くはれる程度であれば、抗生物質の投与により改善することがありますが、中に膿 (うみ) がたまっている場合には、切開して、膿をだすことが必要となります。一度治っても、何回か繰り返すこともあります。排膿を繰り返しながら、9割以上のお子さんが1歳までに自然に治りますが1歳までに治らない場合は、自然治癒することはないので手術が必要になります。手術は全身麻酔が必要になります。

頭頚部にみられる体表の疾患

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副耳
副耳
耳の近くにできるいぼ状の隆起で生まれつきの病気です。片方の耳の前にあることが多いですが、時には両側や複数個みられる場合もあります。

生まれる前に耳ができていく過程で生じ、皮膚だけがイボ状になっていることもありますが、イポの芯に軟骨が硬いしこりとして触れることがあります。

症状はないですが、顔まわりで目立つ場合や、気になってさわってしまう場合は手術で切除します。くびれを伴う小さなものは糸で結ぶ方法 (けっさつ術) がとられることがありますが、根元が広かったり軟骨を伴う副耳は手術により切除します。
正中頚嚢胞 (甲状舌骨嚢胞)
正中頚嚢胞(甲状舌骨嚢胞)
生まれるときに甲状腺が作られるときに舌の奥から甲状腺の位置まで甲状舌管という管が出現し、これが消えてなくならないことで生じる疾患です。首の真ん中に丸い隆起が出現し,多くはこどものときに発見されます。痛みなどは伴わないことが多いですが徐々に大きくなったり感染したりすることで気づかれます。感染によりやぶれると皮膚の一部より分泌物がでることがあります。

腹部の疾患

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腸重積症
腸重積症は腸管の壁が肛門の方に引き込まれて重なることで生じます。腸の内容物が通過しづらくなったり、腸管が重なった部分の血流が悪くなったりすることで嘔吐や腹痛が生じます。小腸と大腸のつなぎ目(回盲部)をきっかけに生じることが多く、蠕動の波に合わせて腹痛が消失したと思ったら数時間のうちに腹痛や嘔吐を繰り返したりします。腸の壁がしめつけられることで粘液が混ざったような血便が出ることがあり、超音波検査や、レントゲンを用いた造影検査(高圧浣腸)により腸の重なりを戻す処置(非観血的整復)を行います。腸がはまり込んでいた時間が長い場合など、整復が困難な場合は手術が必要になることがあります。
急性虫垂炎
大腸の始まる部分にある虫垂という盲端となった腸管に炎症が生じると急性虫垂炎として右下腹部痛が生じます。発症時には臍周囲の違和感や腹痛が生じることがあり、次第に腹痛が増強し、炎症が強くなるとお腹全体に痛みが波及したり(腹膜炎)、お腹に膿の貯まりが生じたりすることがあります(膿瘍形成)。胃腸炎と区別が難しかったり、発熱や下痢などの症状が先行し何らかの感染症に続いて発症したりすることがあります。治療は主に抗菌薬と手術(虫垂切除術)になりますが、軽症であれば絶飲食と抗菌薬治療で軽快する場合があります(保存的治療)。手術をせずに軽快した場合でも再燃することがあるため、炎症が落ち着いた時期に手術を行う方法が選択されることがあります。
先天性胆道拡張症
胆道拡張症は、腹痛、黄疸、腹部腫瘤が三大症状といわれますが、症状はさまざまで発熱、嘔吐、灰白色便にて発見されることも珍しくありません。乳幼児期に発症し診断されることが多いですが、近年では胎児超音波検査で出生前に発見されるお子さんもいます。胆道拡張症では膵胆管合流異常が存在することより膵炎を起こし、また将来的に胆管がんの出現が指摘されており早い時期での治療が必要です。
通常は腸管に流れる膵液が、胆道内に流れ込むことによって炎症を起こし、この合流異常があることで胆道から悪性腫瘍が発症すると考えられています。手術治療が必要になり、拡張した胆管と胆嚢の切除を行い、肝臓からの胆管の出口に腸を吻合する方法を行います。長期経過の中で、残った胆管から悪性腫瘍の発生や結石がみられることがあるため、成人になっても超音波検査などによる経過観察が推奨されます。

治療法

新生児期・乳児期に手術が必要になる疾患

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先天性横隔膜ヘルニア(CDH)
胸とお腹の間にある筋肉の膜(横隔膜)に欠損孔があることより、腸管などのお腹の中の臓器の一部が胸の中に脱出してしまう病気です。わが国での年間発生数は200例に満たないまれな呼吸器疾患です。出生前に診断されることも増え,呼吸循環管理の進歩により救命率は向上していますが,依然として救命困難なケースがあります。治療は手術になりますが、生まれたての赤ちゃんでは肺に十分な血流が保てない状態が続くこと(新生児遷延性肺高血圧症)で呼吸や循環を助ける治療が必要になります。NO吸入療法という治療で改善することが知られており、できるだけ安定した状態で手術を行うことが術後の回復に大きく影響します。手術は欠損孔の大きさやお子さまの病状に合わせて、開腹手術や鏡視下手術(胸腔鏡、腹腔鏡)を選択します。
先天性肺気道奇形(CPAM)
先天性肺気道奇形は肺の一部が嚢胞状になる良性腫瘍で、嚢胞が大きいものから非常に小さいものまであります。胸腔内で心臓や正常肺を圧迫するために、胎児期や出生後に呼吸が苦しくなったり感染を起こしたりするため治療が必要になります。胎児診断で見つかることも増えてきており、無症状で経過することもありますが、感染により正常肺まで炎症が波及する可能性も考慮し乳児期の手術を推奨されている。治療は病変部を含む肺の一部を切除する手術が必要になりますが、病変の部位や残存肺の発育を考慮して時期や術式が異なります。
鎖肛
鎖肛 (直腸肛門奇形) は5000出生に1人の割合で発症する生まれつき肛門の形成異常がある病気です。出生直後に診断されることが多く、病型 (高位、中間位、低位) によって治療方針が大きく異なります。新生児期に肛門形成を行う事もあれば、新生児期に人工肛門を造設し、乳児期に肛門形成の手術を行う事もあります。造影検査や超音波、MRI画像を用いて病型や関連する併存症の有無などを診断し治療方針を決定します。肛門をつくる根治術後は低位型では良好であることも多いのですが、中間位、高位型では高度の便秘や便失禁などの排便障害がみられることがあります。
胆道閉鎖症
胆道閉鎖症は、新生児から乳児期早期に発症する胆汁がうっ滞する病気です。肝臓でつくる胆汁という消化液を十二指腸へ流すための通り道である胆管が破壊され消失するために閉塞が生じ、肝臓から腸へ胆汁を出せなくなる病気で原因は不明です。生まれてくる子どものうち約1万人に1人がかかる稀な病気で、女の子の方が男の子の2倍多く発生します。生後14日を過ぎても続いている黄疸 (皮膚や目の白目の部分の黄染) 、便色異常 (薄い黄色からクリーム色) 、濃色の尿が特徴です。2012年からは母子健康手帳に便カラーカードが添付されており、便の色が淡い色であれば医療機関への受診が必要です。

濃色尿は、胆道閉鎖症では胆汁が腸に流れ出ないことから、便の色の素となる胆汁中の色素であるビリルビンが腎臓を経由して尿中に出ることでみられるようになります。
検査は血液検査、腹部超音波検査などを行い胆道閉鎖症が否定できない場合は全身麻酔での手術で肝臓や胆嚢の有無を確認し、胆汁の通り道を造影することで診断します。胆汁の通り道が途絶して胆道閉鎖症と診断された場合は、胆汁の流れを改善させる手術が必要になります。多くは肝臓から胆汁を排泄する出口のところに腸を吻合することで胆汁が腸に流れるようにします。

胆汁の流れは十分ではないことも多く、また胆汁がうっ滞しやすいことより胆管炎を起こし、肝硬変といって肝臓が硬くなり肝機能障害が生じやすくなるため、薬物治療だけでなく併発する症状に対し治療が必要になります。肝臓の機能が回復しないことで肝移植が必要になることも稀ではないため、長期的な経過観察が重要です。

治療法

順天堂大学小児外科では、胆道閉鎖症の手術に腹腔鏡を用いた低侵襲手術を行っています。当科での治療をご希望の方は当科にご連絡いただけますと幸いです。
腹腔鏡を用いた胆道閉鎖症手術に関するお問い合わせ
当科教授室 TEL:03-5802-1082 または 内線 3339までご連絡ください。
ヒルシュスプルング病
排便障害を生じるヒルシュスプルング病においては、当科主任教授の山髙篤行が世界で初めてAnorectal line = Herrmann's lineからの粘膜剥離を提唱し、極めて良好な術後成績を得ております。
本術式は2009年Journal of Pediatric surgeryやDiagnosis and Treatmentで発表し、現在、本邦はもとより、海外でもAnorectal lineから剥離を始める施設が増えております。
本術式は著明な英語の教科書 (Atlas of Pediatric Laparoscopy and Thoracoscopy) のヒルシュスプルング病のchapterにおいて山髙篤行が著者となり、手術ビデオ付きで紹介されており、ヒルシュスプルング病の良好な治療成績が世界から注目されております。

治療法


【ご注意】実際の手術映像が掲載されていますので、気分の悪くなる可能性がある方はお気をつけください。

泌尿器系の疾患

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先天性水腎症 (腎盂尿管移行部狭窄症)
腎臓で作られた尿は、尿管・膀胱・尿道を通過して体外に排泄されますが、これらの経路に何らかの通過障害が生じ、尿の流れが停滞して腎臓が腫れる状態を水腎症といいます。
腎臓に尿がたまる水腎症が最も多いですが、尿管から膀胱への流れが停滞する水尿管症を伴うことがあります。
超音波検査で発見されることが多く、胎児診断で見つかるお子さんも多くいます。軽症な水腎症は自然に消失することもありますが、生後に増大することもあり、尿の流れが悪いことで腎臓の機能が低下することがあるため腎臓の機能をみるための検査 (DTPA、DMSA、MAG3などのシンチグラフィ) や尿路全体の形態をみるためのMRIなどを行います。原因や水腎症の程度により治療が異なります。

治療法

膀胱尿管逆流症 (VUR)
腎臓でつくられた尿は膀胱にたまり排泄されますが、生まれつき尿管膀胱移行部で逆流が生じやすいお子さんがいます。尿路感染症をきっかけに発見されることが多く、自然に消失することもありますが、改善せず感染を生じやすいお子さんは腎障害の原因となるため治療が必要になります。現在は全身麻酔下で膀胱鏡を用いた逆流防止術が主流ですが、手術で膀胱を開けて尿管の出口を逆流しにくいようにする手術を行うことがあります。また乳児期などですぐに治療ができない場合は少量の抗菌薬の内服することで感染を抑制し手術をせず軽快することがあります。

治療法

包茎
包茎
小児期の包茎は、生理的に正常なのですが、排尿時におちんちんの先端が、風船のようにふくれたり、先端が赤く腫れたりする時には、治療が必要です。最近では、ステロイドの入った軟膏を包皮に塗り皮膚をやわらかくして包皮を剥きやすくする方法も行い外来で指導しています。 (8〜9割で包皮が剥けやすくなり、排尿がスムーズになります) 。

それでも改善しない場合は、包茎に対する外科的な治療を行うこともあります。術後は一時的に包皮が腫れることがありますが術後1~2日で退院可能です。
埋没陰茎
埋没陰茎
陰茎皮膚の不足やBuck筋膜、Dartos筋膜の付着異常によって、陰茎が皮下に埋没しているように見える状態です。陰茎のサイズは正常ですが、皮下に埋没しているため陰茎の短いことにご家族が気づいて受診することが多くあります。包茎を伴うことが多くみられ、また皮下脂肪の厚みで埋没が強いこともありますが、乳児期に手術を要することはなく、オムツがとれてからの排尿状況なども考慮して手術を行います。
尿道下裂
尿道下裂
尿道下裂では外尿道口の位置や陰茎の屈曲を伴います。出生時に発見されることが多いですが、軽症のものは乳児健診で指摘され、外尿道口の位置がほぼ正常である場合は発達の過程で陰茎屈曲として見つかることがあります。

治療は全身麻酔下の手術が必要になり、陰茎の屈曲がある場合は屈曲を直してから新たに尿道を作る手術を行います。術後に感染が生じ尿が排泄されることより創部に負担がかかることで、作った尿道の途中から尿が漏れる (尿道皮膚ろう) 、作った尿道が狭くなり、おしっこが出にくくなる (尿道狭窄) などの合併症があります。

陰茎弯曲では、弯曲の成因により手術を行います。
外尿道口嚢腫
外尿道口嚢腫
外尿道口嚢腫は、外尿道口の辺縁や周辺にできる袋状の腫瘤です。出生後から幼少期にもっとも多くみられますが、10歳代でも発症が多くみられます。多くは無症状で経過しますが、徐々に大きくなったり、尿線 (排尿時の尿の出方) の異常が生じたりした場合は治療をお勧めします。通常、嚢胞全体を摘出する手術を行います。

小児における手術支援ロボット (ダヴィンチ) 手術

ダヴィンチ手術
ダヴィンチ手術
順天堂小児外科では、以前から胆道拡張症に対して腹腔鏡下手術を施行しておりましたが、この度、ロボットを使用した手術を導入致しました。ロボットを使用し、極めて精度の高い吻合を遂行しております。
現在、胆道拡張症に加えて腎盂尿管移行部狭窄症や縦隔腫瘍に対してロボットを使用しております。今後は肺のう胞性疾患、胆道閉鎖症などにも導入していく予定でございます。

ロボット支援下手術に関するお問い合わせは、当科教授室 03-5802-1082、または、内線:3339までご連絡ください。

先天性胆道拡張症手術動画

腎盂尿管移行部狭窄症手術動画

縦隔腫瘍摘出術手術動画