治療
一般的にII型以下に対しては保存治療、III型以上に対しては手術治療が行われますが、III型に対する治療は議論が分かれています。近年は肩鎖関節の後方安定性が着目され、2014年にInternational Society of Arthroscopy, Knee Surgery and Orthopaedic Sports Medicine(ISAKOS)はIII型を肩甲骨の運動異常と特殊なレントゲン撮影での鎖骨の後方不安定性の有無によりIIIA (安定型)とIIIB (不安定型)に分ける声明を出しています(図5)。当院では受傷早期に後方不安定性を評価し、IIIB以上の場合には手術加療を行う方針としています。
当院では受傷後3〜4週間以内の損傷した靱帯の回復が期待できる新鮮な肩鎖関節脱臼に対しては関節鏡を用いて専用のボタンと人工靱帯を用いることで烏口鎖骨間の安定化と肩鎖靭帯の解剖学的走行を考慮した補強術を行っています(図6)。手術後4週間は三角巾固定を行い、三角巾が不要になったタイミングで可動域は制限なしとなり、3か月後からの軽作業への復帰と6ヶ月からのスポーツ・重労働復帰が目安となります。
4週以降の陳旧例の場合には損傷した靱帯は瘢痕化し修復が期待できないため、上記の固定方法に加えて自身の膝から腱を採取し解剖学的な烏口鎖骨靭帯の再建を追加することで安定性を強める手術を行っています(図7)。手術後6週間は三角巾固定を行い、その後は制限なしでの生活が可能となります。スポーツ復帰は手術6ヶ月後以降が目安です。