概要

肩関節にみられる変形性関節症であり、関節軟骨の変性や摩耗による関節破壊を生じる疾患です。原因なく起こる一次性と、外傷後や腱板断裂など肩の構造が破綻した結果として起こる二次性に分類され、変形性肩関節症の多くは二次性です。特に腱板断裂に伴う関節変形は、腱板断裂性関節症と呼ばれます。

変形性肩関節症01(出典元:解剖+はたらきとリンクする整形外科の疾患と治療.照林社, p43)

他の関節にみられる変形性関節症と同様に、初期であれば挙上や内外旋などでの動作時痛、進行すると安静時痛や夜間痛もみられるようになります。

検査

単純X線では、関節裂隙(関節の間)の狭小化、骨棘(骨のとげ)形成などがみられ、それに伴って肩の可動域が減少してきます。CTでは、肩甲骨関節窩・上腕骨頭の変形の位置・程度を二次元または三次元的に評価します。MRIでは、主に腱板について変性の度合い、断裂の有無について評価します。

変形性肩関節症02(出典元:解剖+はたらきとリンクする整形外科の疾患と治療.照林社, p44)

治療

まず保存療法として、安静時痛・夜間痛に対しては、炎症の鎮静化を目的に、鎮痛薬の内服、ヒアルロン酸またはステロイドの関節内注射を行います。動作時痛・可動域制限に対しては、肩関節を正常な位置で動かすための腱板の機能訓練や、肩甲骨や胸椎の可動による代償運動の促進などの運動療法、ヒアルロン酸などの関節内注射を行います。
保存療法を行っても日常生活動作に支障を来たす場合は手術も検討されます。関節に変形を認め、腱板は正常もしくは修復できる場合は、主に(解剖学的)人工肩関節置換術(total shoulder arthroplasty:TSA)を行います。 修復困難な腱板断裂を合併している、関節の変形が著明であるなど、解剖学的人工肩関節置換術では術後の肩関節の安定性が確保できない場合は、肩甲骨側と上腕骨側の構造を真逆にしたリバース型人工肩関節置換術(RSA)を行う場合があります。

変形性肩関節症03(解剖学的)人工肩関節置換術
(出典元:解剖+はたらきとリンクする整形外科の疾患と治療.照林社, p46)
変形性肩関節症04リバース型人工肩関節置換術

当院での手術スケジュール(解剖学的人工肩関節置換術)

変形性肩関節症05

当院での手術スケジュール(リバース型人工肩関節置換術)

変形性肩関節症06