概要

腱板とは、肩甲骨と腕の骨(上腕骨)を安定させている4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の腱部分の総称で、主に腕を挙げたり捻ったりする運動に関わっています。

腱板断裂01(出典元:解剖+はたらきとリンクする整形外科の疾患と治療.照林社, p38)
腱板が切れてしまった状態を腱板断裂と呼び、1回の外傷で断裂する場合だけでなく、加齢による変性や日常生活動作で少しずつ擦れて気付かないまま断裂することも多いです。
腱板断裂02(出典元:解剖+はたらきとリンクする整形外科の疾患と治療.照林社, p38)

検査

レントゲン・超音波検査や身体診察にて腱板断裂の予測は可能ですが、正確に診断するにはMRI検査を行います。五十肩と思い放置あるいはリハビリテーションをしていたが痛みが引かないので当院を受診しMRI検査をしてみたところ、腱板断裂があったと分かる患者さんも少なくありません。

腱板断裂03(出典元:解剖+はたらきとリンクする整形外科の疾患と治療.照林社, p39)

治療

腱板断裂はすぐに手術が必要であることは多くありません。断裂の大きさや状態・症状経過に応じて当院での治療の進め方は患者さん一人一人で変わりますが、原則的にまず保存療法を試みることが多いです。疼痛コントロールのための鎮痛薬・注射、さらに筋力・可動域訓練のためのリハビリテーションを行うことによって一定数の患者さんは症状が軽快します。
これらの保存療法で症状改善が不十分な場合は手術が考慮されます。手術は断裂した腱を骨に縫い付ける腱板修復術が一般的で、当院では関節鏡と呼ばれるカメラを使用しこの手術を行っています。肩の周囲に約1cmの創を4、5カ所作るだけで済み、手術侵襲を最小限に抑えることでリハビリをスムーズに行える利点があります。ちなみに重症化してから手術を受ける場合では、他の部位から筋膜を移植する方法や人工関節などの大きな手術(変形性肩関節症の項を参照)が必要になってしまう場合もあります。

腱板断裂04(出典元:解剖+はたらきとリンクする整形外科の疾患と治療.照林社, p41)

当院での手術スケジュール

腱板断裂05
手術が終わった後は肩に下図のような装具を付け、修復した腱板を保護しながらリハビリを徐々に行っていきます。
腱板断裂06