脳卒中後の上肢機能障害においては、日常生活の中で麻痺手をなるべく多く使用することが望ましいとされています。しかし、実際の生活動作で使用しようとすると時間がかかったり、うまくできないため反対の手を使わざるをえなかったりすることがあります。また、運動の量を増やそうとすると繰り返しの運動メニューになってしまうこともあります。
近年、入院中のリハビリテーションでは、動力源を持つロボットアシストを用いたリハビリテーションが行われるようになりましたが、在宅でこれらを準備し実施する事は難しいのが現状です。
バーチャルリアリティーを用いたリハビリテーションは、動力源を持たないため、小型な装置で比較的安全に使用する事が可能です。センサーで運動を感知し、モニターやスピーカーでフィードバックする事により、生活場面や様々な場面で手を使用している様子を表現できるため、運動の範囲や方向、タイミングなどについて利用者にお知らせしながら手の運動が行えます。バーチャルリアリティーを用いたプログラムは、生活場面を模擬的に設定しながら、使用者の状態に合わせてプログラムが組めるため、在宅でも活用できる可能性が高く、麻痺手の機能と生活場面での使用量の改善が見込まれます。この研究では、脳卒中後上肢機能障害を有する方に対して、バーチャルリアリティーを用いた在宅でのリハビリテーションの効果を検討します。
対象となる方
(1)選択基準
脳卒中により、上肢機能障害を有する患者で、
既にリハビリテーション専門病院などでの入院加療を終えて、
ご自宅で生活している方のうち、下記の選択基準を全て満たす方を対象とします。
- 同意取得時において年齢が20歳以上である
- 本研究参加の3か月以上前に脳卒中と診断されている
- 脳卒中後、片側の上肢機能障害を有する
- 手関節の屈曲伸展、前腕の回内外あるいは手指屈曲伸展の一部が自力で動かせる
- インフォームドコンセントの提供が可能
- 本研究への参加にあたり十分な説明を受けた後、十分な理解の上、研究対象者本人の自由意思による文書同意が得られた方
(2)除外基準
下記のいずれかに1つでも該当する場合は本研究の対象としません。
- 本研究の妨げとなる精神機能障害を有する
- コミュニケーションが困難となる重度の失語症を有する
- 上肢のリハビリテーションを妨げる重度の痛みがある
- 運動障害の原因となる神経学的な疾病を以前から有している
- 使用機器における禁忌・禁止事項に該当がある
- その他、研究責任者が研究対象者として不適当と判断した方