当科では講座設立時より新生児・乳児を含めたあらゆる小児脳神経外科疾患の診断と治療にも迅速かつ積極的に対応できるよう医師教育がなされており、あらゆる小児脳脊髄疾患に対応が可能です。特に小児脳腫瘍、小児てんかん外科(スタージウェーバー症候群を含む)、小児血管障害に加え、水頭症、頭蓋骨早期癒合症、二分脊椎症といった疾患は全国有数の症例数を有しています。小児脳神経外科はチーム医療を特に強く必要とする分野であり、診療科間の垣根の低い当院では迅速に関連する診療科と連携しながら治療にあたっています。

小児脳腫瘍

小児脳腫瘍の治療は、一部の良性腫瘍を除き、脳神経外科のみでの治療は困難です。一人の卓越した医師のみで治療成績が決定してしまう疾患ではなく、医療施設としての総合的な経験や能力が必要となります。したがって、小児科・放射線科・理学療法科などの医師達だけでなく、小児看護やケアにあたるスタッフに十分な小児脳腫瘍に対する治療経験と理解があることが重要となります。

当院では脳神経外科以外に小児腫瘍、小児内分泌の専門家に加え、放射線科、臨床心理士、小児診療心理士、小児専門看護師と協同での治療を行っており、入院時のみならず退院後の患児も週に一度は総合的な検討を行い治療方針、経過観察の方法を決定しています。
この総合的な取り組みが、多くの医療機関からもご評価をいただき、比較的遠方からも多数の患児をお任せいただいております。
 
特に第四脳室に発生する腫瘍の髄芽腫・上衣腫・星細胞腫については、全国最多規模の経験および症例蓄積があり、日本国内での年間発症総数が100人程度と言われる稀少疾患であるにも関わらず、手術は年間最低5例以上の同じ手技経験のある医師(年間顕微鏡下手術は200件以上)が担当しています。その他、放射線治療に関しても小児中枢神経系への照射例は年間5例を超え、手術にならんで治療の中核を担う化学療法については、院内で常時数人の中枢神経腫瘍のお子さんが治療を行っている状態です。治療は小児血液腫瘍部門で十分な経験を積んだチームが担当しています。実際に、手術後でも難治例で当院へのご紹介、ご相談を受けることが少なくありません。

特に髄芽腫については、予後が比較的良好と言われる標準リスク群では、文献的に効果が高い上に、治療時間が短い化学療法を施行できる日本国内では数少ない施設のうちの一つです。また予後不良と考えられている初診時に多発性の転移巣があるような高リスク群でも十分なご相談の上、場合によっては病理学的診断に基づき迅速に放射線治療を施行し、病状を安定させることができるようになってきています。摘出された腫瘍組織は腫瘍の病理学的解析に加えて、分子生物学的にも解析可能な研究施設を大学組織として有しておりし、一部はご相談のうえ薬剤感受性などの臨床応用していくことが可能となっております。

その他、胚細胞腫や星細胞腫、頭蓋内肉腫などについても、外科介入、内科介入とも十分な経験と実績のあるスタッフで治療にあたっております。 組織学的に良性とされる腫瘍群も現在では、小児内分泌系などの十分な観察が必要であることがわかってきています。
小児脳腫瘍はお一人としてまったく同じ経過をたどられる方はいらっしゃらず、医師のみならず施設としての治療経験が必須です。お子様お一人お一人の状況に応じた医療を現在までの経験および治療成績を踏まえてご提示させていただきます。

小児水頭症

髄液の循環吸収障害によって発症しまがその原因は様々で、いわゆる先天性水頭症から脳腫瘍や新生児期の脳室内出血にともなう水頭症などがあります。
水頭症の治療は従来脳室と腹腔などをつなぐシャント手術が主体でしたが、近年神経内視鏡による第三脳室底開窓術が広く行われるようになりました。当施設においても、中脳水道狭窄症等の閉塞性水頭症に対して、内視鏡手術を積極的に行い良好な成績を得ています。

頭蓋骨縫合早期癒合症

頭蓋骨の変形などで気づかれることが多いとされますが、一部は、頭蓋骨の縫合が早期に癒合することで正常な脳機能発達に影響を及ぼし、発達障害を呈するとも考えられている疾患です。現在では当科では小児科・思春期科と協力をして診療を進めています。

小児てんかん、小児奇形、水頭症等に伴い、発達障害が起こることもあります。症例によっては外科的な治療を行うことで、発達障害の進行を抑える、更には改善させることが可能とされています。早期癒合に関しては、形成外科とも協同で美容面も考慮された手術が施行可能です。

小児奇形

小児奇形
頭蓋骨縫合早期癒合症、キアリ奇形、皮質形成異常、スタージウェーバー症候群、二分脊椎、脊髄脂肪腫等、これまでに数多くの疾患に対して外科治療を行ってきました。小児科・思春期科、小児外科・小児泌尿生殖器外科、形成外科と協力体制が整備されており、最善の治療を提供しています。

二分脊椎

脊髄髄膜瘤、脊髄脂肪腫、先天性皮膚洞、潜在性二分脊椎症等が含まれますが、最近では、出生前診断され当施設に母体搬送されることも少なくありません。この場合には、産科、新生児集中治療室(NICU)と協力して治療にあたります。

また、二分脊椎症に合併をしてくるキアリ奇形、水頭症、排尿障害、歩行障害についても、当科のみでなく小児科・思春期科、小児外科・小児泌尿生殖器外科、整形外科・スポーツ診療科、リハビリテーション科と協力をして治療を進めています。