低侵襲医療の取り組み

医療機器の発展にともない、小さな傷で行う"低侵襲手術"が可能となりました。私たちは、患者さんにとってメリットの多い低侵襲手術を積極的に行っています。
ロボットを用いた低侵襲手術が、2020年4月から膵臓で、2022年4月から肝臓、先天性胆道拡張症で保険適応となりました 。当科は厳格な施設条件を満たし、保険診療でロボット肝・胆・膵手術が行える、日本でも数少ない施設のひとつです。

低侵襲手術とは?

従来、お腹の手術は腹部を広く開けて行っていたため(開腹手術)大きな傷が残っていました。低侵襲手術では、お腹に数カ所、直径1cmほどの穴を空け、その穴からカメラや手術器具を入れて手術を行います。傷が小さいため、患者さんにとっては下図のような様々な利点が得られます。

一方で、精密な操作が難しい、直接臓器を触ることができないなど、デメリットもあります。血管に浸潤する進行癌などでは、安全かつ根治性の高い操作ができないため、低侵襲手術の適応とはしていません。
低侵襲手術とは?

低侵襲手術の利点

低侵襲手術の利点

2つの低侵襲手術

低侵襲手術は、現在、腹腔鏡手術、ロボット手術の2種類に分類されます。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術では、お腹にガスを入れて膨らまし、カメラの画像を見ながら、先にハサミなどの器具がついた長い棒(鉗子)で手術を行います。
中を見ることのできない箱にカメラを入れ、カメラの映像を見ながら棒を使って箱の中で糸を結ぶ操作を想像してみて下さい。動画は、膵臓の腹腔鏡手術で、脾動脈という血管を探りあて、糸で縛る操作です。精密な操作を行うのは難しく、熟練の技を要することが理解いただけると思います。
腹腔鏡手術

ロボット手術

ロボット手術1(肝・胆・膵外科)
ロボット手術でも、腹腔鏡手術と同様、お腹の中をカメラで見ながら、鉗子を使って手術を行います。
腹腔鏡との違いは、外科医が鉗子をリモートで操作すること、そしてこのロボット鉗子で非常に精密な操作が行える点です。
我々が使用するロボット、「ダビンチ」のメーカー名は"INTUITIVE(直感的な)"です。
ロボット手術では、まさに直感的な操作で、自分の手を動かすのと同じように、鉗子を自由に操ることができます。
ロボット手術02
ロボット手術03
外科医は、まるで自分の手を患者さんのお腹に入れているかのような感覚で手術がおこなえます。
ロボット手術は、今まで我々が開腹手術で培ってきた経験を大きく活かせる手術なのです。
実際のロボット膵切除の動画です。ロボット手術では、鉗子の先に関節がついているため、腹腔鏡手術の直線的な動きにくらべて可動域が広く、かつ柔らかい操作が行えることがおわかりいただけると思います。
2020年の導入から、私たちは100例を超えるロボット肝・胆・膵手術を行ってきました。患者さんへの負担を減らし、きちんと病気を治せる手術だと実感しています。
 
これからの課題は、低侵襲手術をより多くの患者さんに適応することです。”病気を治す”という手術の本質を忘れることなく、安全にロボット手術の適応を広げて行きたいと考えています。

腹腔鏡下肝切除術を受ける患者さん

手術前の検査について

原則、外来で行います。詳しい検査や治療が必要な場合は、当院の専門科による診察や治療を受けていただきます。

入院生活について

通常、手術の2日前に入院していただきます。
手術後7-10日で退院が可能となります。

腹腔鏡下肝切除の傷

4-5箇所の傷により手術を行います。傷の位置は、病変の位置によって異なります。(例)肝臓の右側に病変がある場合
腹腔鏡下胆嚢摘出術の傷原則すべて抜糸不要の傷です

開腹手術への移行

周囲臓器との癒着が強い場合や不慮の出血などにより腹腔鏡下で手術が困難と判断した場合などには、開腹手術へ移行しより安全な手術方法をとることがあります。

術後の注意点

退院後から日常生活や入浴(湯船含む)は可能です。38度以上の発熱や傷の異常があった際は、連絡をください。
 
  • 病気の性質や大きさ、並存疾患によって、当初から従来の開腹手術をお勧めすることもあります。
  • 入院期間や傷の位置・数は、平均的なものです。並存疾患や病変の大きさや位置により、異なります。

腹腔鏡下膵切除術を受ける患者さん

手術前の検査について

原則、外来で行います。詳しい検査や治療が必要な場合は、当院の専門科による診察や治療を受けていただきます。

入院生活について

通常、手術の2日前に入院していただきます。
手術後7-10日で退院が可能となります。

腹腔鏡下膵切除の傷

通常、5箇所の傷により手術を行います。傷の位置は、病変の位置によって異なります。(例)腹腔鏡下膵体尾部切除の傷
腹腔鏡下膵切除の傷原則すべて抜糸不要の傷です

開腹手術への移行

周囲臓器との癒着が強く場合や不慮の出血により腹腔鏡下で手術が困難と判断した場合には、開腹手術へ移行しより安全な手術方法をとることがあります。

術後の注意点

退院後から日常生活や入浴(湯船含む)は可能です。38度以上の発熱や傷の異常があった際は、連絡をください。

腹腔鏡下胆嚢摘出術を受ける患者さん

手術前の検査について

原則、外来で行います。詳しい検査や治療が必要な場合は、当院の専門科による診察や治療を受けていただきます。

入院生活について

通常、手術の前日に入院していただきます。
手術後1-3日で退院が可能となります。

腹腔鏡下胆嚢摘出術の傷

腹腔鏡下胆嚢摘出術の傷
原則すべて抜糸不要の傷です

開腹手術への移行

周囲臓器との癒着が強い場合や不慮の出血などにより腹腔鏡下で手術が困難と判断した場合などには、開腹手術へ移行しより安全な手術方法をとることがあります。

術後の注意点

退院後から日常生活や入浴(湯船含む)は可能です。38度以上の発熱や傷の異常があった際は、連絡をください。
 
  • 病気の性質や大きさ、並存疾患によって、従来の開腹手術をお勧めすることもあります。
  • 入院期間や傷の数は、平均的なものです。並存疾患や病変の大きさや位置により、異なります。