「間質性肺疾患(間質性肺炎)」「肺線維症」「びまん性肺疾患」といった病名は、あまり耳慣れない方も多いかもしれません。これらはさまざまな原因によって肺に炎症が生じ、肺が硬くなる(線維化する)病気の総称です。
原因が明らかなものとしては、関節リウマチなどの膠原病に伴う間質性肺疾患、アスベストなどによるじん肺、鳥やカビなどが原因となる過敏性肺炎などがあります。一方で、原因が特定できない特発性間質性肺炎もあります。原因によって治療法や経過観察の方法が異なるため、当科では原因検索から診断、治療まで一貫した診療を行っています。
特発性間質性肺炎の中で最も頻度が高いのが特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis:IPF)です。IPFは原因が特定できないまま肺の線維化が徐々に進行する病気で、胸部CTでは蜂の巣のような「蜂巣肺」と呼ばれる特徴的な所見がみられます(図1)。
肺の線維化が進行すると十分に酸素を取り込めなくなり、初期には坂道や階段で息切れを感じる程度ですが、進行すると安静時にも息苦しさが現れます。一方で、多くはゆっくり進行するため、自覚症状が出た時には病気がかなり進行していることも少なくありません。患者さんご本人よりも、ご家族が「歩く速度が遅くなった」「息切れが目立つ」といった変化に気付かれることもあります。また、健康診断の胸部X線やCT検査で偶然発見されることもあります。
近年では、肺の線維化の進行を抑える抗線維化薬が開発され、IPF治療は大きく進歩しました。現在は、ピルフェニドン(ピレスパ®)、ニンテダニブ(オフェブ®)に加え、2026年7月には約10年ぶりとなる新規抗線維化薬ネランドミラスト(ジャスケイド®)が使用可能となりました。
従来の抗線維化薬では、吐き気や食欲低下、下痢などの消化器症状が副作用としてみられることがありましたが、ネランドミラストではこれらの副作用は比較的少ないことが報告されています。当科でも患者さんの状態に応じて積極的に抗線維化薬を導入しています。これらの薬剤は病気を治す薬ではなく、肺の線維化の進行を抑える薬であるため、早期から治療を開始することが重要と考えられています。
一方、IPF以外の間質性肺疾患では、病気の原因に応じてステロイドや免疫抑制薬による治療を行います。膠原病に伴う間質性肺疾患や、膠原病の診断基準は満たさないものの自己免疫疾患の特徴を有する患者さんも多く、必要に応じて膠原病内科と連携しながら診療を行っています。また、慢性の間質性肺疾患では肺高血圧症など心臓への影響を伴うこともあるため、循環器内科とも密接に連携して治療方針を決定しています。
2020年には過敏性肺炎の国際診療ガイドライン、2022年には日本の診療指針が公表され、過敏性肺炎の診断も大きく進歩しました。当科では、多くの症例で過敏性肺炎の可能性も念頭に置きながら慎重に診断を進めています。
抗線維化薬は以前はIPFのみが適応でしたが、現在ではニンテダニブやネランドミラストは、膠原病関連間質性肺疾患やIPF以外の特発性間質性肺炎であっても、進行性肺線維症(PPF)と判断された患者さんでは使用できるようになりました。当科では膠原病内科とも連携しながら、患者さん一人ひとりの病状に応じた最適な治療を提供しています。
間質性肺疾患では、正確な診断が治療方針を決定するうえで最も重要です。まず胸部CTなどの画像検査で評価しますが、画像のみでは診断が難しい場合には、2020年2月から当院で導入したクライオバイオプシー(凍結生検)を行っています。この検査では従来の気管支鏡検査より大きな肺組織を採取できるため、より精度の高い病理診断が可能となりました。これまでに200例以上の実績があり、診断精度の向上に大きく貢献しています。
さらに必要に応じて呼吸器外科と連携し、外科的肺生検を行うこともあります。また、診断が難しい症例については隔月でMDD(Multidisciplinary Discussion:多職種による集学的検討)を開催し、呼吸器内科医、放射線診断医、病理医が共同で画像・病理・臨床経過を詳細に検討したうえで診断と治療方針を決定しています。その結果を踏まえ、患者さんやご家族と十分に相談しながら最適な治療方針を決定しています。(図2)
図2:当科における間質性肺疾患診断と治療のフロー
当院は厚生労働省びまん性肺疾患研究班の参加施設であり、多くの間質性肺疾患患者さんの診療を行うとともに、全国の施設と連携しながら診療・研究を進めています。また、新規薬剤の治験も行っております。
当科の間質性肺疾患専門外来は、月曜日午後・水曜日午前・木曜日午前に開設しています。間質性肺疾患や肺線維症でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
いままでに特発性肺線維症の急性増悪で入院された患者様、ご家族様へのお願い
当科では、東レ株式会社より依頼を受け、「トレミキシン使用成績比較調査(特発性肺線維症(以下、IPF)の急性増悪)」という製造販売後調査を行っております。この調査は、製造販売後調査のうち使用成績比較調査に該当し、IPF の急性増悪の患者さんにおけるトレミキシンを用いた血液浄化療法の有効性と安全性を調べることを主な目的としています。そのため、過去にIPF の急性増悪を発症し、かつIPF 急性増悪に対してトレミキシン治療を受けていない患者さんのカルテ等の診療情報を使用させていただき、今後上記治療法を行った患者様との比較を行わせていただきます。
詳細は下記をご参照ください。