たばこの煙の通り道になる気管・気管支や肺といった呼吸器は、直接たばこの煙に含まれる有害物質に晒されて、さまざまな障害をうけます。喫煙者の肺を取り出してみると真っ黒になってしまっています(写真)。喫煙によって発症の危険が高まる呼吸器の病気としては肺癌が真っ先に頭に浮かぶと思いますが、ここでは、見過ごされがちな恐ろしい病気としてCOPDについて説明したいと思います。
COPDは、日本語で慢性閉塞性肺疾患といいます。従来、肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていたものもこれに含まれます。気管・気管支や肺胞がなんらかの原因で慢性の炎症を起こすことによって、気管・気管支はむくみ、肺胞は壊れてスカスカになり、肺での十分な酸素の取り込みが難しくなる病気です。40歳以上で、喫煙歴の長い人によくみられ、からだを少し動かしただけでも息切れを起こしたり、頻繁な咳や痰の症状があらわれたりします。
人口の高齢化に伴って、COPDの患者数、また、COPDによる呼吸不全で亡くなる方は年々増加していて、世界的にも注目されるようになっています。COPDの原因の80~90%は喫煙と言われています。何十年もたばこを吸っている人、一日に何十本も吸う人に、発症の危険が格段に高いことが分っています。
また、コロナ禍が続く世の中ですが、COPDは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症リスクとなる基礎疾患のひとつであるということが分かっています。コロナ禍で病院にかかりにくいと思っておられる方も多いと思いますが、COPDはこのような時世だからこそ、「きちんと診断、きちんと治療」が必要な病気のひとつであると思います。