骨髄異形成症候群とは

血液細胞には赤血球、白血球、血小板があります。赤血球は全身に酸素を運ぶ働き、白血球は細菌やウイルスから体を守る働き、血小板は出血を止める働きをしています。これらの血液細胞は骨髄の中で、造血幹細胞から分化して作られています。
骨髄異形成症候群は造血幹細胞に生じた遺伝子の異常のために、形がいびつな血液細胞が作られ(異形成)、血液細胞の機能にも障害が起こり、正常な血液細胞数が減少する病気です。また骨髄異形成症候群患者さんの一部は、未熟な血液細胞(芽球)が増加して急性骨髄性白血病に移行することから、前白血病状態とも言えます。
年齢とともに発症率が増加し、高齢者にも多くみられる病気で、高齢化社会で患者数が増加しています。さらに放射線治療や抗がん剤治療を受けられた方では、発症率が高いことが知られています。

骨髄異形成症候群の症状

赤血球の減少による動悸、息切れ、めまい、倦怠感などの貧血症状を認めます。白血球の減少によって肺炎や胃腸炎などの感染症にかかりやすくなります。血小板が減少すると、血が止まりにくく出血しやすくなり、あざや歯肉出血、鼻出血を繰り返すようになります。
このような血液細胞の減少による重篤な合併症に加えて、急性白血病への移行が問題になります。

骨髄異形成症候群の診断と検査

血液検査と骨髄検査を行い、血液細胞の数と形の異常、未熟な細胞(芽球)の有無を調べます。さらに染色体検査や遺伝子検査、細胞表面マーカー検査を行い、診断とともに病型、治療方針の決定をします。骨髄異形成症候群の病型は芽球の割合や特徴に応じて分類(WHO分類)されます。
また、治療方針や予後(病気の見通し)を予測するための分類として、予後因子と呼ばれる検査所見を点数化した分類(IPSS分類、WPSS分類、IPSS-R分類)がありますが、一般的にそれを「低リスク」と「高リスク」に大別して治療方針を決定します。

骨髄異形成症候群の治療

治療の目標は、血液細胞の減少によって起こる症状を改善して生活の質を高め、白血病への進行を抑え、生存期間を延長することです。根治的な治療法は造血幹細胞移植だけですが、年齢や全身状態などから実施できる患者さんは多くありません。血液細胞の減少に対して、支持療法と呼ばれる治療が必要です。貧血・血小板減少に対しては輸血療法を行います。輸血に伴う鉄過剰症には、鉄キレート剤を用います。
近年、骨髄異形成症候群に有効な薬物療法が行えるようになりました。低リスク骨髄異形成症候群のうち染色体検査で5番染色体の長腕の欠失がある場合には、レナリドミドを用います。高リスク骨髄異形成症候群の場合は、アザシチジンを使用します。その他にも多くの新規薬剤が開発中で、今後の治療適応の拡大が期待されます。

骨髄異形成症候群

助教 白根脩一