CAR-T療法とは

キメラ抗原受容体T細胞療法はCAR-T療法と呼ばれ、患者さん自身の免疫細胞であるT細胞に遺伝子改変を行い、白血病細胞やリンパ腫細胞への攻撃力を高める治療法であり、「がん遺伝子治療」です。患者さんの血液からT細胞を取り出し、人工的に遺伝子を導入し、CARと呼ばれる特殊なたんぱく質を発現できるT細胞(CAR-T細胞)を作ります。CARは、腫瘍細胞表面に発現している抗原を特異的に認識することができ、CARを発現したCAR-T細胞は、体の中で腫瘍抗原を認識して活性化し、増殖します。活性化したCAR-T細胞は腫瘍細胞を強力に攻撃することができます。

当院で実施中のCAR-T療法

①キムリア

キムリアは、B細胞性白血病や悪性リンパ腫の細胞表面に発現している「CD19」と呼ばれる抗原を特異的に認識することができるCAR-T療法です。このCARが遺伝子導入されたキムリアはB細胞(白血病やリンパ腫細胞)を強力に攻撃することができます。このCAR-T細胞を体外で増やして患者さんの体内に戻せるように製造された製品がキムリアです。キムリアは治療の手立てのない再発難治性の白血病に9割もの寛解を得ることができる有望な治療です。
キムリアの投与対象となる患者さん
  • 再発または難治性CD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(25歳以下)
  • 再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(濾胞性リンパ腫からの形質転換を含む)
  • 再発または難治性の濾胞性リンパ腫

②カービクティ

カービクティは、多発性骨髄腫の細胞表面に発現している「BCMA」を標的とする単ドメイン抗体2つを含む特徴的な構造をもつCAR-T療法です。多くの前治療歴(免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤など)のある患者さんを対象とした臨床試験(CARTITUDE-1試験)の結果、再発または難治性の多発性骨髄腫患者さんにおいて、96.9%の全奏効率が確認できました。
カービクティの投与対象となる患者さん
  • 再発または難治性の多発性骨髄腫(2022年に製造販売承認。薬価収載後に治療開始予定。)

③イエスカルタ

イエスカルタは、キムリアと同様に悪性リンパ腫の細胞表面に発現している「CD19」と呼ばれる抗原を特異的に認識することができるCAR-T療法です。
イエスカルタの投与対象となる患者さん
  • 再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • 再発または難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫
  • 再発または難治性の形質転換濾胞性リンパ腫
  • 再発または難治性の高悪性度B細胞リンパ腫

CAR-T療法治療の流れ

順天堂大学医学部附属順天堂医院は、キムリアの提供可能施設として2020年2月に施設認定され、2022年にはカービクティ、2023年にはイエスカルタも施設認定されました。

CAR-T療法は、リンパ球採取(アフェレーシス)、ブリッジング治療、リンパ球除去療法、CAR-T輸注などの下記プロセスを患者さんごとに行います。

CAR-T療法

私たちから患者さんへのメッセージ

順天堂大学血液内科では、がん免疫療法であるCAR-T療法にとても力を入れております。2020年2月に「キムリア」の提供可能施設に認定され、多くの患者さんの治療を行ってまいりました。診療だけでなく、研究でも、遺伝子細胞療法で有名なベイラー医科大学Center for Cell and Gene Therapyに留学していた経験を生かし、より良いCAR-T療法の実現を目指した活発な研究を行なっております。CAR-T療法を希望されている方は、まずはお気軽にご相談ください。また、以下の関連リンクも是非参考にしてください。

関連リンク
【JUNTENDO GOOD HEALTH JOURNAL】がん治療の第4の柱・細胞療法。全国でも限られた医療施設のみが提供できる CAR-T療法とは?
【がん治療センター】第80回ミニレクチャー「CART細胞(キムリア)療法について

順天堂大学医学部附属順天堂医院 血液内科
主任教授  安藤美樹
講座内教授 安藤純(細胞療法・輸血学)