頭蓋骨縫合早期癒合症(狭頭症)治療・手術

赤ちゃんの頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎ目を頭蓋骨縫合と呼びます。乳児期には脳が急速に拡大しますので、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれ縫合部分が癒合し強固な頭蓋骨が作られるわけです。頭蓋骨縫合早期癒合症とは狭頭症とも呼ばれ、何らかの原因で頭蓋骨縫合が通常よりも早い時に癒合してしまう病気です。その結果、頭蓋骨が変形する、十分拡大できないために脳が圧迫されるなどの障害が発生します。頭蓋の変形は早期癒合が起こった縫合線と関係があり、長頭、三角頭、短頭、斜頭などと呼ばれる変形が生じます(図1)。またクルーゾン症候群やアペール症候群といった顔や手足の先天異常を合併する病気もあります。
こうした症候群では、頭蓋骨の変形だけでなく水頭症を合併し、頭蓋内圧の上昇を認めることも少なくありません。この方法はすべての症例に適応できるわけではありません。

治療は手術になります。手術法としては、従来変形している頭蓋骨を切りだして、骨の変形を矯正し戻すことで正常に近い形に組みなおす頭蓋形成術が行われています。
当科では、脳神経外科と共同で1999年よりこの頭蓋形成術に延長器を用いた骨延長術を導入しています。具体的には、頭蓋骨に刻みだけ入れて延長器を装着し、術後に徐々に刻みを入れた部分を延長させ変形を治癒させるという方法です。2006年9月までに29例において、骨延長術を用いた頭蓋形成術を施行し良好な結果を得ております(表1)。

骨延長法の利点として、出血が少なく手術時間の短縮が図れる、骨をはずさないため血行が保たれるので萎縮変形が少ない、骨欠損が比較的早期に充填される、皮膚も同時に延長可能、術後に望みとするところまで拡大可能などが上げられます。一方、欠点として治療期間の延長(1ヶ月程度の入院が必要です。)、延長器を抜去する手術が必要などがあります。
この方法はすべての症例に適応できるわけではありません。お子様の状態、年齢を考慮しベストと思われる方法を検討し、治療にあたらせて頂きます。
 
(担当:形成外科小室裕造、脳神経外科宮嶋雅一)

頭蓋骨縫合早期癒合症

 
骨延長法を用いた頭蓋形成術の症例一覧(1999~2006)
頭蓋骨縫合早期癒合症(非症候群性) 22例
舟状頭 13例
短頭・尖頭 5例
三角頭 1例
後頭部斜頭 1例
小頭症 2例
 
頭蓋骨縫合早期癒合症(症候群性) 7例
Crouzon病 3例
Pfeiffer症候群 1例
クローバー葉頭蓋 3例
29例
(同期間中施行した頭蓋形成術40例のうち29例(77%)で骨延長法を用いた。)

骨延長器の装着

骨延長器の装着01
骨延長器の装着02中顔面延長(骨条件)
骨延長器の装着03中顔面延長(骨条件)

全頭蓋縫合早期癒合症(頭蓋骨縫合が消失)

全頭蓋縫合早期癒合症01側面
全頭蓋縫合早期癒合症02後面

頭蓋骨縫合線のある画像

頭蓋骨縫合線のある画像01側面
頭蓋骨縫合線のある画像02後面

舟状頭蓋

舟状頭蓋01側面
舟状頭蓋02頭頂面(頭の真上)