アブミ骨手術とは
3つある耳小骨のうち、最も内側にあるアブミ骨の動きが悪くなり難聴を来す場合には、アブミ骨手術の適応があります。アブミ骨底板に小孔をあけて人工耳小骨を挿入する場合や、アブミ骨周囲の処置を行いアブミ骨の可動性を回復させる場合などがあります。
耳硬化症ではアブミ骨底板の周囲に海綿様骨変化と言われる病的骨が生じることにより、アブミ骨自体の動きが悪くなります。原因ははっきりとはわかっていませんが、通常20~40代に発症することが多く、女性に多いとされております。難聴の進行は緩徐ですが、ときに両側性に発症することもあり、妊娠や出産後に難聴が進んでしまう場合もあります。
入院期間
入院期間は基本的に4~5日間程度ですが、状況に応じて入院期間の短縮は可能です。一方、めまいなどの合併症により入院期間を延長する可能性もあることをご了承ください。
術式
動きの悪くなったアブミ骨を人工耳小骨に置き換える必要があります。アブミ骨の底板に0.7~0.8mmの小孔を作成し、0.6mm径の人工耳小骨を装着します。通常は、人工耳小骨の反対側をキヌタ骨に装着します。しかし、炎症や奇形などの理由によりキヌタ骨に問題がある場合はツチ骨に装着することがあります。そのため、当科ではすべてテフロン製のものから、一部金属を含むワイヤーピストンまで長短各種を常に取り揃えて万全の態勢で手術に臨んでいます。
また、最新の炭酸ガスレーザーを用いて手術を行っており、内耳に対する愛護的な手術操作を心がけることにより、より術後の合併症が起きにくい手術を追求しています。
合併症の可能性
- 痛み:薬でコントロールできる範囲です
- 出血:少量です
- 難聴:非常にまれですが高度難聴のリスクがあります
- めまい:術後しばらくは過度な運動は控えて頂く必要があります
- 味覚障害:鼓索神経の障害により生じることがありますが、まれです
退院後
術後1週間程度は過度な運動や重いものを運ぶことを控えて頂く必要があります。 外耳道に水が入らないように1-2ヶ月程度注意が必要です。 鼓膜が再生し安定するのには約3ヶ月程度かかります。