中咽頭癌とは

中咽頭は口のつきあたりの部位を指します。発生部位(亜部位)により上壁、側壁、後壁、前壁に分けられます。側壁は口蓋扁桃(こうがいへんとう)にあたり一般的に扁桃腺と呼ばれている場所です。中咽頭癌の中では側壁に発生するものが最多です。

中咽頭癌の特徴

中咽頭癌の主な発症原因は喫煙や飲酒がほとんどでしたが、ウィルスが原因で発症するケースが2000年代に入り増えてきているため、中咽頭癌全体も近年増加傾向です。腫瘍のタイプはほとんどが扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)で、他の組織型は極めてまれです。中咽頭癌全体で50~70歳代に好発し、男女比は2~4:1です。

初発症状は咽頭痛やのどのつかえ感などの咽喉頭異常感や頸部リンパ節腫大(首のリンパ腺)に伴う頸部のしこりです。進行すると嚥下困難感や開口障害、耳への放散痛などが出現します。また、中咽頭はリンパ網に富んでいるため早期に頸部のリンパ節への転移が出現します。中咽頭癌はウィルスが原因で発症するものとそれ以外が原因のものでは大きく腫瘍の特性が異なりますので詳細は後述します。

診断

咽頭痛やつかえ感、嚥下時痛などを訴えて受診した場合には、口腔内所見やファイバースコープ下に咽頭を観察します。中咽頭に腫瘍が疑われた場合には病理検査(腫瘍の一部を採取し癌かどうか確認する)が行う必要があります。画像検査では、CTやMRIを行い目視できない部分の腫瘍の範囲の確認やリンパ節転移などの状況をチェックします。

治療

中咽頭は口の奥にあたる部分なので食事を食べる・飲み込む(嚥下)のに非常に重要な部位です。治療法は手術で切除する方法と放射線療法とがあり、腫瘍の状況や年齢などを考慮して選択します。切除をしても、放射線治療を行っても、いずれの治療を選択しても嚥下に非常に関与する部位ですので、治療後の嚥下障害は少なからずは必ずでます。そのため、根治性と治療後の機能障害のバランスをはかる必要があります。腫瘍のサイズが小さければ、治療後の機能障害は小さく済みますが、進行した状態で受診された場合にはその分だけ治療後の機能障害は大きくなります。

一般的には手術の方が放射線治療に比べ体力的に比較的楽に短期間で終了しますが、治療後の機能障害には個人差が大きくなります。治療に関しては良く医師と相談する必要があるので十分相談して決めてください。経口的(口のなかから)に切除可能であれば、一番短期間で楽に治せる治療法であり、小~中程度の腫瘍であれば当院ではロボットによる経口切除(口のなかから切除)を行っています。すべての患者さんに適応になるわけではありませんので状態に応じて相談しています。

ウィルス性中咽頭癌の特徴

ウィルスはヒトパピローマウイルスといって子宮頸癌の原因ともなるウィルスです。従来の中咽頭癌に比較してやや年齢層の低い世代にも発症し、また女性にも多く認められます。
咽頭の癌があまり大きくなる前から頸部リンパ節に転移することが多く、首のしこりを初期症状として医療機関を受診することが少なくありません。

他の原因の中咽頭癌と比べ、予後が良い(治る見込み)ことが特徴で進行度の分類も異なります。治療に関しては上記でお話ししたように、進行度に合わせ、治療効果と機能障害のバランスを考えて決めます。
ウィルス性中咽頭癌の特徴01
ウィルス性中咽頭癌の特徴02
ウィルス性中咽頭癌の特徴03
型的な中咽頭癌の写真
ウィルス性中咽頭癌の特徴04上中咽頭癌のイラスト図
正面
ウィルス性中咽頭癌の特徴05中咽頭癌のイラスト図
側面
ウィルス性中咽頭癌の特徴06
中咽頭癌のMRI画像