掲載日:2026.01.08
鹿間直人 (放射線治療学講座 主任教授)
今回は、がん治療の中でも近年注目されている
「オリゴ転移」についてご紹介します。
「オリゴ(oligo)」はギリシャ語で「少ない」という意味で、
数の限られた転移を指します。
従来、がん治療は病気の広がりの程度によって治療方針が異なり、
・早期例:手術療法や放射線療法などの局所治療を行う
・進行期例:複数の治療法を組み合わせる
・遠隔転移例:薬物療法や対症療法が中心となる
という考え方が一般的でした。
しかし約30年前、Hellman先生が「局所にとどまる病気」と「広く転移した病気」の
中間に位置する状態として「オリゴ転移」を提唱しました。数は少ないものの離れた場所に転移(遠隔転移と呼ばれます)がある患者さんに対し、薬物療法に加えて局所治療を行うことで、
病気の進行をより長く抑えられるのではないかという考え方です。
現場にいる私たち医師にとっても、「もう一歩、治療で支えられないだろうか」という思いに応える概念として注目されています。
オリゴ転移に局所治療を行う際には、次の点が重要です。
・確認されている転移をすべて治療すること
・薬物療法の中断期間を最小限にすること
・手術療法や放射線療法が安全に行えること
・効果が期待できる患者さんを慎重に選ぶこと
・原発のがんがよく制御されていること
これらのバランスを丁寧に見極めることが、治療の効果につながります。
順天堂大学放射線科・放射線治療部門では、高精度放射線治療の技術を生かし、患者さんが安心して治療を受けられる環境づくりを進めています。
さらに、オリゴ転移に対する局所治療が本当に患者さんの利益になるのかを明らかにするため、全国規模の臨床試験を行っています。
「乳がんオリゴ転移に対する局所治療を検証するランダム化比較試験(JCOG2110)」
共同研究代表者:鹿間直人
科学的根拠に基づく治療法の確立に向けて、力を尽くしています。
オリゴ転移は、がん治療に新たな選択肢をもたらす可能性があります。治療に関するご相談がありましたら、どうぞ放射線科・放射線治療部門の担当医にお声がけください。
患者さんお一人おひとりに寄り添いながら、最適な治療をご一緒に考えてまいります。