3.1 チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、がん細胞の成長や拡散を抑えるために使用される薬です。がん細胞が増殖するためには、特定のシグナルが必要です。このシグナルは、体内にあるチロシンキナーゼという酵素によって伝えられます。TKIはこのチロシンキナーゼの働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑えます。
3.1.1 ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)
通常1日4錠内服の経口剤です。毎日内服します。手足症候群と言って、手や足の表皮剥離や皮疹ができることが比較的あるため、予防的に角質除去や保湿剤を使用してもらいます。他の副作用は、高血圧、下痢や食欲不振などがあり、稀ですが消化管出血などが起こることがあります。
3.1.2 スニチニブ(商品名:スーテント)
通常1日4カプセルの内服薬ですが、状態に応じて2-3錠から開始することもあります。投与方法は、4週間投与で2週間休薬か、もしくは2週間投与で1週間休薬(2投1休と言います)のサイクルで内服していきます。やや管理が面倒にはなりますが、2投1休の後者の投与方法で主に内服して頂いています。副作用は、血球減少、とくに血小板減少や、手足症候群、倦怠感、甲状腺機能障害などです。消化管出血や心筋障害などの重篤な副作用も稀ですが起こりえます。
3.1.3 アキシチニブ(商品名:インライタ)
通常10mgを2回に分けて内服します。この薬剤は1mgずつ増量減量できるので、副作用と全身状態に応じて個人個人で微調整していきます。毎日内服します。副作用は、蛋白尿が生じることがありますので、1日の尿量を測定してもらい、尿蛋白量を定量することもあります。高血圧も比較的よく起こる副作用です。他には、下痢や食欲不振、疲労感などです。
3.1.4 パゾパニブ(商品名:ヴォトリエント)
2014年から進行腎がんに対して使用可能となりました。通常4錠の1日1回の毎日内服ですが、食事の直後ではなく、食事の1時間以上前や食後なら2時間は開けて頂いて内服します。副作用に応じて、1日2-3錠に適宜減量することもあります。副作用としては、肝障害があり、生じた場合にはしばらく休薬することもあります。他には、下痢や食欲不振、高血圧や毛色変色などがあります。
3.1.5 カボザンチニブ(商品名:カボメティクス)
国内では2020年から進行腎がんに対して使用可能となりました。カボザンチニブは、1日1回の経口投与で、進行腎細胞がんの治療に用いられます。副作用としては、手足症候群、高血圧、下痢、倦怠感、食欲不振などがあります。特に手足症候群は頻繁に見られるため、予防的な対応が重要です。まれに消化管穿孔や出血などの重篤な副作用が発生することもあります。
3.1.6 レンバチニブ(商品名:レンビマ)
レンバチニブは進行性腎細胞がんの他にも甲状腺がんや肝細胞がんなどの治療に使用されるチロシンキナーゼ阻害薬です。チロシンキナーゼ阻害薬の中では最も新しく、2021年にキイトルーダとの併用療法として国内で承認されましたので、単剤では使用できず、必ずキイトルーダとの併用療法で開始します。この薬は複数の受容体チロシンキナーゼ(RTKs)を阻害することで、腫瘍の成長と血管新生を抑制します。 レンバチニブは経口薬で、通常1日1回、空腹時に服用します。治療は外来で行われることが多く、定期的な血液検査や画像診断を通じて治療効果と副作用のモニタリングが行われます。
副作用としては高血圧が頻繁に見られる副作用であり、降圧剤の使用が必要となることがあります。その他蛋白尿、疲労感、下痢、手足症候群、肝機能障害、食欲不振などがあり、服用量は患者さんの状態や副作用の出現状況に応じて調整されることがあります。