漢方薬とは

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漢方治療は奈良時代に中国から伝来したもので、現在の方剤の多くは江戸時代に確立された、日本独自の伝統医療の一つです。ヨーロッパ等でも伝統医療は通常の日常診療に取り入れられ、その有効性が確認されています。
現在、医療用として使われている多くの薬剤は「エキス剤」です。エキス剤は、生薬を煎じた液からエキス成分を抽出し製剤化した、いわばインスタントコーヒーのようなもの。煎じる手間がかからない上、携帯に便利で、 服用しやすく、香りもマイルド。長期保存も可能です。効果が発現するまでに時間を要する場合があります。少なくとも2週間以上の服用をお勧めします。
順天堂医院でも処方可能ですので外来担当医にご相談ください。

漢方は1剤で様々な症状を改善、病気の予防や体質の改善も期待できる

西洋薬は有効成分が単一で、切れ味が鋭く感染症の菌を殺したり、熱や痛みをとる、血圧を下げるなど一つの症状や病気に対して強い効果があります。一方、漢方薬は、複数の生薬を組み合わせた薬。それぞれの生薬が、多くの有効成分を含んでいるので、1処方でもさまざまな作用を持っています。
ですから、複数の病気や症状に対する治療に有効で、慢性的な病気や全身的な病気の治療など複雑多彩な症状に効果を発揮します。
また、漢方の中には「補剤」と呼ばれるものがあり、体力や気力を補う作用があります。かぜや感染症を予防したり体力がつくことで生活の質が改善できます。
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有効性が徐々に明らかになっています

いくつかの漢方製剤ではその有効性が科学的に証明されつつあるもののあります。
  • 六君子湯:グレリンによる食欲増加作用
  • 大建中湯:術後の腸閉塞予防、腸管機能改善
  • 抑肝散:認知症の予防作用   など

漢方はオーダーメイド医療です

漢方は個の医療と言われています。一人ひとりの体調や症状、健康状態などを考慮し、それにあった製剤が処方されます。
とくに個人差の大きいご高齢の方には向いていると考えられます。
漢方は体調を判断する際に証といわれるものを考慮して製剤が決められます。
このためおなかや脈、舌等の診察を行うことがあります。
case14._03舌の診察


泌尿器科で扱う主な漢方製剤

症状
製剤名
残尿感がある下腹部が重い
猪苓湯、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散竜胆瀉肝湯 など
尿の回数が多い
牛車腎気丸、清心連子飲 など
尿の出が悪い
八味地黄丸、六味丸 など
元気が出ない
補中益気湯、柴胡加竜骨牡蠣湯 など
食欲がない
十全大補湯、人参湯 など

漢方薬の副作用について

「漢方薬は安全で副作用がない」と思われている人が多いようですが、漢方薬も薬ですから、副作用はあります。ただし、西洋薬と比べれば程度も軽く頻度も少ない場合がほとんどです。
「証」に合わない薬を飲めば、胃腸障害などが起きることがありますし、また、天然物のソバや牛乳にアレルギーがある人がいるのと同じように、体質によっては、服用中に異変が起こる人もいます。
主な副作用として、食欲がなくなる、熱やじんましんが出る、むくみ、動悸、不眠、血圧が上がる…などがありますが、ごくまれに間質性肺炎などの重篤な副作用もありますので、おかしいなと思ったら、すぐに医師や薬剤師に相談してください。

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漢方薬の健康保険について

現在日本では148種類の漢方エキス製剤(うち軟膏が1種類)が健康保険の適応となっていますので、多くの病気や症状に対応できます。
特に高齢者の病気や、生活習慣病などの慢性疾患や婦人科疾患などに広く使われています。 
ただし、漢方を専門にしている医療機関の一部では、保険がきかない自由診療(自費診療)をしているところもありますので、はじめに聞いておくとよいでしょう。順天堂では健康保険で処方可能です。
外来担当医にご相談ください。
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漢方薬の処方について

順天堂でも漢方薬の処方は可能です。
一部の方剤は院内での処方ができないため、院外処方になる場合がありますが、それも健康保険で処方可能です。
漢方薬の相談は適宜外来担当医に相談ください。