従来の前立腺針生検法では、肛門から超音波装置を挿入し、超音波画像をもとに前立腺に針を刺して細胞を採取しておりました。しかし、超音波画像は画質が荒く、癌を疑う部位を見つけたり、狙って採取したりすることは困難でした。そのため、前立腺全体にまんべんなく針を刺して検査しており、体積の小さい早期前立腺癌の検出が課題とされていました。
標的前立腺針生検法では事前に撮影したMRI画像をパソコンに取り込み、前立腺の輪郭と癌を疑う部位の輪郭を3D画像処理します。その取り込んだMRI画像と超音波検査をBioJet®システムを使用して融合させますと、検査時の超音波装置の動きが融合画像にリアルタイムで反映されます。この融合画像を用いて癌を疑う部位を正確に狙って組織を採取できます。
- 当院では全身麻酔を使用して検査行います。検査時の痛みは全くありません。
- 標的1か所につき2-3本穿刺します。その後、通常の生検16か所穿刺します。
- 通常の生検とほぼ同じスケジュールで、検査翌日の午前中にはご退院いただけます。
- 検査結果は3-4週間後の次回外来で担当医からお伝えします。
2020年にはThe New England Journal of Medicineという権威ある医学雑誌に標的前立腺針生検法の有用性が掲載されました。
(1) 従来の前立腺針生検法とMRIを使用した標的前立腺生検法を併用することで臨床的に意義のある癌(悪性度の高い癌)を有効に検出できる結果が示されました。
(1)M. Ahdoot, A. R. Wilbur, S. E. Reese, A. H. Lebastchi, S. Mehralivand, P. T. Gomella, et al. MRI-Targeted, Systematic, and Combined Biopsy for Prostate Cancer Diagnosis. N Engl J Med 2020;382:917-28.
2020年から2021年にかけて先進医療実施国内15施設で多施設共同臨床研究が行われ、当院も参加、協力して参りました。これによって本技術の有効性、安全性を厚生労働省に報告し、先進医療技術評価を行う先進医療会議(2021年12月)にて総合評価Ⅰ(科学的根拠を有する技術)として高く評価され、2022年から保険収載されました。