ロボット(ラパロ)腎尿管全摘徐術

ロボット支援腹腔鏡下腎尿管全摘除術について

腎盂尿管がんとは

腎臓で作られた尿は腎臓の中にある腎盂に一時的に溜められた後に間もなくして尿管を通って最終的に膀胱に貯められます。この腎盂、尿管にできた「がん」を腎盂尿管がんと呼びます。腎盂尿管がんは人口10万人あたり、0.1人程度にできる比較的稀な癌です。
腎盂尿管がんの治療は他の癌と違って抗がん剤や放射線治療が効きづらく、手術による腎尿管全摘除術が基本です。腎盂と尿管は尿路上皮という膀胱まで続く、一繋がりの組織で構成されています。そのため、一部の切除だと再発が高率に起こるため、特別なケースを除き片方の腎尿管を切除する必要があります。

手術の方法

ロボット支援腹腔鏡下腎尿管摘除術(RARN) または 腹腔鏡下腎尿管摘除術
腎尿管摘除術は古くは開腹手術で行われ来ましたが、現在では低侵襲かつ安全性の高い手術を目的にロボット(DaVinci)や腹腔鏡を用いて手術を行っております。
ロボットを用いる術式をロボット支援腹腔鏡下腎尿管摘除術(RARN)といい、2022年4月から保険適用となりました。順天堂医院では従来の腹腔鏡下腎尿管摘除術に加えて、いち早くRARNも導入しております。そのため、都内でも有数の症例数を経験しております。

手術方法はロボット(DaVinci)を用いたRARNも従来の腹腔鏡下手術でも大きく違いはありません。
手術は全身麻酔をかけた後、横向きに体位を取ってから開始されます。(横向きの体位を側臥位と呼びます)。腹部に内視鏡用トロッカーポートを5本留置して、各ポートから内視鏡や手術器具をいれて手術を進めていきます。腎臓周囲を剥離し、腎動脈、腎静脈という太い血管にクリップをかけて腎臓の遊離がひとまず終了します。
続いて尿管の剥離、膀胱の部分切除に移行します。尿管は腎臓の位置から下腹部まで約12cm縦に伸びていますので、まず腎臓を遊離した後に下腹部側(足側)に術野を移して、下部尿管から膀胱の周りを遊離する必要があります。そのため、先ほどのトロッカーポートとは別に下腹部の外側に斜めに皮膚を10cm程度切開をおく必要があります。(下腹部斜切開と呼びます)
尿管は膀胱とつながっていますので、つながっている部分を切断し、膀胱に糸をかけて修復します。膀胱を縫った部分がきちんと縫合されているかを確認し、ドレーンを留置して、傷をきれいに縫って手術終了となります。
※腎盂尿管がんの位置、患者様の年齢、合併症によっては下腹部斜切開をおかずに内視鏡操作のみで手術可能な場合もあります。詳しくは手術説明の際に説明いたします。

手術時のポート位置のイメージ

(青い点は約1cm、斜線は約8~10cmのイメージです)
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実際の手術の様子

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手術前の準備

入院前
  • CTやMRI検査で腫瘍や血管の情報を確認し、どのような手術方法が良いか検討します。順天堂ではスタッフ全員でカンファレンスを実施し、治療法を決定しています。
  • 心臓超音波など耐術能の評価を行い手術可能か検討します。
手術前
  • 全身状態の最終確認を行います。このため採血などをお願いします。
  • 肺炎予防のための呼吸訓練や、糖尿病などの持病をお持ちの方はその調整を行います。
  • 栄養状態が良い方が手術成績が良いので、手術前は栄養剤などの摂取をお願いすることがあります。
  • 麻酔科の術前外来を受診いただき、麻酔科からも安全に手術が行えるかの確認を行っています。

術後について

手術当日
  • 手術前に術衣に着替え、弾性ストッキング(血栓予防)を着用していただきます。
  • 手術が午後になる場合は点滴を行います。
  • 手術が終了した段階で御家族を手術室に御呼びし経過をご報告させていただきます。その際摘出した腎臓を確認いただけます。ただし病理検査の結果は後日になります。
  • ほとんどの場合は手術後意識のある状態で病室にお戻りいただけますが、場合によって集中治療室(ICU)に入室いただきます。
1日目
  • 早ければ水分、夕方からはお粥を取ることができます。疼痛が落ち着いていれば、歩行を開始していただきます。
2日目
  • 早ければ食事が開始できます。
3日目
  • ドレーンという手術の際に留置した排液のチューブが抜けます。
7日目
  • 膀胱造影:手術の際に尿管を切除し、膀胱を縫合した部分がきちんと修復されているかを確認し、修復が良好であれば尿道留置カテーテルを抜去します。
傷のホッチキスを外します。
8日目
  • ドレーンという手術の際に腹腔内に留置した管を抜去します。
9日目
  • 退院となります。
※あくまで目安です。
※病状により経過は変わります。

退院後の生活について

日常生活では特に制限はありませんが、過度に負荷がかかる運動(筋力トレーニングなど)や飲酒は控えるようにしてください。
通常退院後1ヶ月以上経過すれば、飲酒なども可能です。
外来受診時に病理検査の結果をご報告します。
取った腫瘍がどんなものだったか、どれだけ浸潤していたか説明をします。
その結果や他の転移の有無に応じて、追加の治療が必要か判断します。
日常生活での注意点
■ 禁煙する
■ 肥満を解消する
■ 血圧の管理を行う
■ 十分な水分摂取を心がける
■ 塩分は控え目に
■ 動物性タンパク質の過剰摂取を避ける

術後について

  • 転移がない方の場合は定期的に採血やCTを行い、再発の心配がないかを確認して行きます。通常最初の3年間は3ヶ月から半年おきにCTを行います。
  • 腎盂尿管がんは膀胱への再発が高率に起こることが知られています。そのため、3~6か月おきに膀胱鏡、尿細胞診検査で膀胱癌が発生してこないかフォローをおこないます。
  • 手術以外の治療法もあります。最近腎盂尿管がんに対しては化学療法、免疫チェックポイント阻害剤が使用可能となり、治療効果を上げています。