膀胱がんに対するロボット支援下根治的膀胱摘除術(ダ・ヴィンチ)

ロボット支援下根治的膀胱摘除術(Robot-Assisted Radical Cystectomy: RARC)とは


腹部をメスで切開し、お腹を開けて膀胱を摘出する開放性根治的膀胱摘除術は、長い間浸潤性膀胱癌に対する標準的な治療でした。膀胱を摘出しその後小腸を用いて新たな尿の通り道(新膀胱造設、回腸導管)を作る必要があるため傷が大きくなっていました。また、出血のため輸血が必要になることもありました。そのため決して患者さんの負担は少なくありませんでした。
泌尿器科ではロボット支援手術が前立腺全摘除術、腎部分切除術に対して以前より行われてきました。そのロボット支援手術の特徴を生かし、開放性手術より患者さんの負担を少なく行うために、ロボット支援根治的膀胱摘除術(Robot-Assisted Radical Cystectomy: RARC)は2003年に世界で初めて報告されました。その後世界各国で広がりを示しています。我々は、2012年11月からRARCを開始しました。出血量は格段に少なくなり、通常の食事がとれるまでの期間、入院期間も有意に短くなり、良好な治療成績がえられております。
当院の特色としては、体腔内尿路変更法(Intra-corporeal urinary diversion: ICUD)を行っていることです。ICUDは、膀胱全摘・リンパ節郭清を行ったあとに開腹をせずに回腸導管、新膀胱造設などの尿路の通り道を作成する方法です。メリットは、腸管が外気にふれることなく手術を完遂できるため、不感蒸泄が少なくなり腸管が浮腫みにくくなります。腸管が浮腫むと術後に腸閉塞をおこしてしまい著しくQOLが低下します。ICUDを行うことで術後の腸閉塞も減少しています。当科では、回腸導管造設法、新膀胱造設術(図1)、ともにロボット支援下のICUDを行っております。特に、新膀胱造設術に対するICUDを実施している施設は全国的にも大変少ないのが現状です。
case3_01図1